美食家
え〜、かなり久しぶりの投稿です。
何かかなりテキトーでありがちな話になってしまいました・・・。
読んで頂ければ、至福の極みです。
いつからだろうか。
こんなにもこれが美味しく感じられるようになったのは。
いつからだろうか。
一般的な味覚を忘れたのは。
・・・生まれつきさ。
俺の親父は精肉店を経営していた。
物心ついた時、既に母親は居なくて、ずっと親父と二人で暮らしてた。
俺は小さいころから親父の作る肉が大好きで、毎日毎日肉ばっか食ってた。
親父の店に、客なんて全くこなかった。
だからかなり貧乏で、肉は何故か沢山あったけど、野菜とかは自分で育てて食べてた。
それでも俺は、肉さえあればよかったな。
肉さえあれば満足してたよ。
それほどに、俺の親父が作る肉は美味かったんだ。
俺が8歳になった時だ。
家に変な男達が来て、親父の事をつれてっちまった。
俺は悲しくなって、泣きじゃくったな。
で、そのあと、なんか妙に綺麗なでかい
「保護施設」
とか言う建物に無理矢理連れてこられて、毎日
「学校」つう変な所に行かされた。
その学校や保護施設って所が、変な場所だったな。
ろくなもんも食わせてくれねえ。
野菜はまあまあだったけど、肉は糞みたいな味だった。
変な白くて気持悪い液体に、腐った色のスープに、焼いた肉。
どれも吐気がする程不味かった。
口に入れる度に、気が狂いそうになったよ。
だからそのうち、施設や学校の食い物は全く食べなくなった。
当たり前だよな。あんな糞みたいなもん、食えるかよ。で、数日間何も食べなかったら、施設にいた奴らがおろおろし出して、俺の事を今度は
「病院」
とか言う所に送りやがった。
最低な奴らだぜ。
で、病院って所での生活を余儀なくさせられたが、そこも地獄だったな。
そこもマトモなもんを食わせてくれなかったんだ。
しかもここは、毎日毎日俺の体に針をぶっ刺して、へんな液体をいれてきやがる。
最初は我慢してたが、確か・・・そうだ、二ヶ月かそこらで我慢できなくなったんだ。
俺は夜中に病院の連中の目を盗んで、逃げ出したんだ。
その後、かなりの距離を走った俺は、猛烈な空腹感に襲われたんだ。
もう、肉が食いたくて仕方なかった。
だが肉といっても、学校や施設や病院で食わされた糞またいな不味いやつじゃあない。
親父の肉。
そう、あの時俺は、親父の肉がどこで手に入るのか、探そうと思ったんだ。
でもあの時は取り合えず腹に何か詰め込みたかったから、近くにいた猫を食ったんだったな。
・・・あれは不味くはなかったな。
それから俺は、ありとあらゆる肉を食いあさったよ。
幸いにも、この国の
「学校」
には、生き物が沢山いる事を、俺は知っていたから、鶏や兎の肉を食べるのは簡単だった。
その事を教えてくれた事だけは、学校に感謝しなくちゃなあ。
それからまた二ヶ月位、色々な肉を食い尽したが、俺は親父の味にはたどり着けなかった。
日本にある食える肉は全て食い尽したのに。
俺は絶望したよ。
でも、絶望と引き替えにある事を思い出した。
・・・人。
そうだ、まだ人肉があるじゃないかっ・・・てね。
俺は自分の腕を見たんだ。
こう見ると、なかなか美味そうだ、と思ったのを覚えているよ。
俺は、食い付いた。
自分の腕に。
歯が皮を破り、血管を断ち、柔らかい筋肉に食い込んでいくのを感じたよ。
最高だった。
血がとても甘くて、肉の脂肪と筋肉の味が口の中に一気に広がっていった。
そして、俺は見つけた。
親父の味を。
それから俺は、ありとあらゆる人間を食ったよ。
その結果、人間の肉にも違いがあるのが分かった。
男よりは女が美味くて、大人よりは子供の方がうまくて、子供の中でも、14〜19歳の肉が最高。
死んでから食べるよりは、生きてる内に食べた方がいい。
調理はしない方がいい。
生が一番だ。
・・・そういやあ、あの猫も生で食ったっけ。
・・・ああ、しかもその時にはもう、人肉しか食わなくなってたな。
野菜や他の食べ物の味なんか忘れてた。
で、今も人肉を食い続けてる訳だ。
でも、これは普通じゃないらしいから、俺は変人って事になるらしいな。
でも、皆が皆人の美味さを知っても困るがな。
だってそしたら俺の食べる分が減るだろ?
ははは。
このような拙い作品を読んで頂き、本当にありがとうございます。
感想、誤字脱字など、報告をして頂けたら嬉しいです。