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お姫様のガーディアン  作者: 河野 る宇
◆第3章
9/19

*奇遇

「今の……ベリル?」

 黒いサングラスしてたけど確かにベリルだよな、何やってんだ。

 あっという間に終わったニュースに眉をひそめる。

「リアルタイムニュースだったよな。ってコトは日本に来てるのか」

 青年は小さく唸り、思案するような表情を浮かべた。

「おーいアキト」

「んー?」

 キッチンにいる友人に呼びかける。

「お前、ベリルに会いたいか?」

「何!?」

 世良せらアキトがすぐさま包丁を持って駆けてきた。

「あぶねーなぁ……」

「いやごめん。それより今なんてっ?」

 乗り出すように聞き返す彼に、ダグラスはしれっと応える。

「だから、ベリルに会いたいか? って」

「会いたいに決まってんだろ! そのために初めはお前に近づいたんだからな」

 正直な奴……目を輝かせて見つめる友人に半ば呆れた。

 現在27歳のダグラスは15歳から20歳までの5年間をベリルと共に過ごしていた、いわゆる弟子というものだ。

 彼とベリルとの出会いはある意味、衝撃的である。

 青年の父親はダグラスが自分の子どもではないと気づき、死ぬ事のないベリルに妬みを抱いていた事もあって彼の名の失墜と、ダグラスの命を奪う事を同時に計画した。

 ダグラスを殺す事となったのは、妻への愛情の深さ故でもある──ダグラスの父ハミル・リンデンローブも、かつては有名な傭兵だった。

 妻は強い男が好きで、家を訪れる傭兵たちを誘惑しては抱かれていた。妻への愛から、それを見て見ぬふりをしていたハミルだったが、ダグラスはそんな男たちの1人の子だと知り憎悪へと変貌する。

 ベリルを相手にしたのがそもそもの間違いで、彼の計画は全て失敗に終わった。しかし、妻を殺してその道連れとした。

 天涯孤独となったダグラスを引き取り育てたという訳だ。

 しかし、その後がまた奇縁きえんともいうべき事実がある……ダグラスの実の父は、クリア・セシエルという名のハンターである。

 ベリルとセシエルは、深い絆で結ばれた盟友だった。たった2度の出会いが2人を強い絆で結びつけたのだ。

 セシエルは55歳で死亡し、自分に子どもがいる事すら知らずに逝ってしまっただろう。

 そんなこんなでダグラスがベリルの弟子であった事は、傭兵たちの間では割と有名な話である。そのおかげかどうかダグラスは一目置かれる存在だ。

 ベリルはその戦闘センスから、『素晴らしき傭兵』と呼ばれ、若き傭兵たちなどから憧れの対象となっている。

 世良アキトもその1人だ。自衛隊に所属していたがベリルの噂を耳にし、傭兵の世界に足を踏み入れた。

 元々、傭兵という仕事には興味があった訳で、ベリルという人物をきっかけにしたに過ぎない。自衛隊にいた頃には、ベリルという人間が不死だという事は知らなかった。

『凄い傭兵が海外にいる』

 そんな噂が流れていただけなのだ。

 幼い頃に両親を亡くし心配してくれる親戚もいないアキトにとって、傭兵になる事に周りからの抵抗はなんら無かった。

 彼の外見は日本人特有の小柄ではなく、大柄だ。ダグラスはというとアキトに比べると、やや小柄で細身である。

 父であるクリア・セシエルの血を引いているせいか、魅力的な大きめの瞳と優しい顔立ちをしている。

「それで、会えるのか!?」

「ん~」

 急かすように聞いてくるアキトを横目に携帯を取り出した。

「日本にいるらしいんだよね」

「マジか!?」

「電話してみる」

「てめっ! 番号知ってんなら教えろよ!」

「バカか。簡単に教えられる訳ねーだろ」

「それもそうだけどよ……」

 悔しげな顔の友人に言い放ち、相手が出るのを待つ。

「あ、ベリル?」

<……>

「……」

 しばらくの沈黙──

 ベリルは、何故いま彼が電話をかけてきたのかを考えているのだろう。偶然とは思えない。

「友達が会いたいってさ」

<ほう>

「てな訳だから、これから行くね」

 相手の返事も待たずに電話を切った。

「んじゃ行こうか~」

「ちょっちょっと待ってくれ!」

 伸びをしながら立ち上がると、アキトは慌ててキッチンに向かった。

*セシエルとの出会いについては

<素晴らしき傭兵>シリーズ

「天使という名のハンター」で

 ダグラスとの出会いについては同シリーズの

「天使の残像」の中の「絆の継承」

 にて描いておりますので是非、覗いてみてくださいです。

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