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お姫様のガーディアン  作者: 河野 る宇
◆第4章
14/19

*敵はどこだ!

 アライアは、みんなにバレてしまった事で正直に話す事にした。

「けんかしてたぁ!?」

 アキトが素っ頓狂すっとんきょうな声を上げ、彼は恥ずかしそうに頭をポリポリとかいた。

「なるほど。それで王女はベリルに執拗にくっついてたワケだね」

「私はあてつけに使われたのか」

 ダグラスの言葉に、ベリルは呆れて目を据わらせる。

 王女とは3つしか離れていないアライアは、初めは友達として、そして成長すると世話役として側にいた。

 しかし、異性であるお互いを意識し始めるのに、そう時間はかからなかった。

「2年前に俺が告白して、ノエルも同じ気持ちだったことを話してくれて……」

「身分違いの恋だから隠してるってワケね」

 ダグラスはさらりと言い放つ。

「このご時世に身分違いっつってもなぁ」

 アキトは半ば呆れた。ランカーはそんな2人を見守っていた唯一の理解者である。

「一体、何でケンカしてたんだい?」

 ランカーが静かに問いかけた。さすがの彼も、ケンカしていた事は知らなかったらしい。

「……」

 言いにくそうに目を泳がせるアライアを4人はじっと見つめる。

「その……もうすぐ俺の誕生日なんだ」

「! 21歳になるな」

「へえ、今20歳なんだ」と、ダグラス。

「俺たち27だっけ」と、アキト。

「それで?」

「それで……ケーキは生クリームかチョコかで言い合いになって……」

「……」

 一同は一斉に眉間にしわを寄せた。

「そんなことで一週間以上もケンカをしていたのかお前たちは」

 ベリルは呆れて二の句が継げない。

「若いよねぇ」

「俺たちだってまだ若いだろ」

「でっでも、ケーキは大事だろ!」

 弁解するように語気を荒げるアライアだが、子どものケンカに付き合わされたベリルは頭を抱える。

「両方、用意すれば良いではないか」

 溜息混じりに発したベリルの言葉に、「そうか!」と、声を張り上げたアライアに一同はバカバカしくなって溜息を吐いた。

「しかしさ~あんなトコで襲ってくるなんて、そのレオン皇子も随分と危ないねぇ」

 ダグラスが気を取り直して話を戻す。

「うむ」

「俺も、まさかここまでするとは思ってもいなかったよ」

 ランカーは苦い表情を浮かべた。

「これじゃあ、どこにも行けないよね」

「王女が可哀想だな」

 アキトの言葉に、ベリルは少し考えてランカーに目を向けた。

「そのレオン皇子は来ていると思うかね?」

「さあ……多分、来てるんじゃないかな」

「ふむ」

 また何かアブナイコト考えてるな……思案している彼を見て、ダグラスは口の端をつり上げた。

 ベリルの動きは予測不可能だ、次に何をしでかすか解らない。5年の間、彼の側にいてそこだけはさすがのダグラスでも読めなかった。


「探してほしい人物がいる、フォシエント皇国のレオン皇子だ。日本にいる」

 ベリルはおもむろに携帯を取り出し、それだけ言って通話を切った。

「さてと」

 そしてベリルは小さく溜息を吐き出すと、ノエルのいる部屋のドアを一瞥する。

「アライア、王女を連れてきてくれないかね」

「わかった」

 その間に、買ってきたものをテーブルに並べた。

「ブッ!」

 ダグラスはそれに笑いをこらえきれず吹き出した。

「可愛いストラップ。これベリルが買ったの? 似合わないなぁ」

「悪かったな」

「あ、岩おこしだ。これって関西にもあるんだよね」

 アキトが岩おこしの箱を持ち上げる。

「大阪では『カミナリおこし』という」

「!」

 ドアの開く音がして振り返ると、まだ顔が強ばっている王女が恐る恐る姿を現す。

「あの……」

 体をすくめて近づくと、テーブルの上に並べられているグッズが視界に入った。

「これはなんですの?」

「ベリルがね、王女様にお土産だって」

 にっこりとダグラスが応える。

「まあ……。これ可愛い」

 愛らしい笑顔が戻り、アライアはほっと胸をなで下ろした。

「!」

 何かに気付いたベリルがジーンズの後ろのポケットを探ると、震える携帯が着信の知らせを伝えていた。

「……ふむ。すまんな」

「解ったの?」

「隣町のユナイテッドホテルに宿泊している」

「要人御用達のホテルだね」

 ダグラスは口の端を吊り上げた。

 実はそのテのホテルはベリルは顔パスだったりするが、彼の正体を考えると多少の違和感は否めない。

 しかし、彼の正体を知っているからこそ顔パスでもあるのだ。

 表の世界にも表の世界なりのルールというものがあるようで、彼の事が表沙汰になればどんなパニックが起こるのか想像にがたし。

 暗黙のルールのうえに、彼と表の人間との間は成り立っている。

「ダグ」

 少し考えていたベリルが青年を呼ぶように、ちょいちょいと軽く指を曲げた。

「残りはここで待機だ」

「えっ、俺も?」

 がっかりしているアキトに苦笑いを浮かべる。

「こちらをおろそかにする訳にはいかん」

「ちぇ~」

 残念そうにソファに腰を落とし頭の後ろで両手を組んだ。

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