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お姫様のガーディアン  作者: 河野 る宇
◆第3章
11/19

*舌鼓(したつづみ)

「これは何ですの?」

 少女はテーブルの上にある大きな皿に興味を持った。

「あ、刺身です」

「サシミ?」

 首をかしげる少女に、ダグラスは丁寧に説明を始める。

「日本料理ですよ。生の魚を食べる習慣が日本にはあるんです」

「まあ」

 金持ち特有の、おっとりした驚きの声を上げた。そこへ、ベリルがワゴンを押して戻ってくる。

「! ノエル。疲れていないかね?」

「はい、大丈夫です」

「……」

 王女に向かってその口の利き方は……ベリルらしい、といえばベリルらしいけど、とダグラスとアキトはその光景を呆けた顔で見つめた。

 アキトはひょい、とベリルの運んできた料理に目を移す。

「お吸い物だ」

「こっちはあんかけかな」と、ダグラス。

「刺身に合うのはやはり日本料理だろう」

 ベリルは発して料理をテーブルに乗せていく。

「さて、食べようか」

 ダグラス、アキト、ランカーそれにノエル王女を席にうながした。

「いただきます」

「い、いただきます」

ランカーとノエルはフォークとナイフを、残りは箸を持ち料理に手を伸ばす。

「……」

 王女は、恐る恐る刺身を口に運んだ。

「! 美味しい!」

「よかった」

 アキトがほっとして、お吸い物に口を付ける。

「うっ!? 美味い」

 それにベリルがニコリと微笑んだ。

「このあんかけは?」

「魚をすり身にして周りに細かく砕いたはるさめをまぶして揚げたものだ」

 問いかけたダグラスに応える。

「凝ってるなぁ~」

 アキトはほおばりながら感心した。

「日本食って、薄味ですけど食べていくと、とても美味しいのですね」

 可愛く微笑む少女にベリルも笑みを返す。

「日本人は旨味を感じ取る感覚が優れているのでね。こういう調理法が発達した」

「アメリカ人には旨味を感じる部分が無いって本当か?」

「無い分けじゃないよ。使うコトが無いから眠ってるみたいなもんなの」

 アキトの言葉にダグラスが眉をひそめて続ける。

「日本にくると、それが呼び覚まされるらしい」


 楽しい食事も終わり、一同はリビングでくつろぐ──

「美味しかったですわ」

 アキトに笑顔を向けたあと、少女はベリルに視線を移した。

「あの、ベリル……頼みがあるのですが」

「なんだね?」

「日本を見て回りたいのです」

「観光したいってコト?」

 ダグラスが問いかけると、少女はコクンと頷いた。

「……」

 まあ別段、危険な事も無いか……ベリルたちは互いに顔を見合わせる。

「では、これから少し段取りを組みます。しばらくお待ち下さい」

「ありがとう。ランカー」

 ノエルは笑うと、奥の部屋に入っていった。それを確認したダグラスは、ランカーに目を向ける。

「観光っていうと、この近くならどこがいいかな」

「そりゃあ、有名所っていえば浅草とかじゃないか?」と、アキト。

「今日は1ヶ所回れればよしとするか」

 いつの間にか、ダグラスとアキトはベリルの仕事に加わっていた。

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