1/19
*思案中
「ああ……この男もダメ」
ここはヨーロッパの中の小さな国──ルシエッティ王国。
世界地図にさえ、申し訳なさげにしか記されていないほどの小国だ。それでも王国は王国、統治しているのは紛れもなく王族である。
王に一人娘が産まれようが世界は何の関心も示さない。それくらいの小国である。
まもなく17歳になる王女は艶やかな栗色の髪を腰まで伸ばし、輝く碧い瞳は長いまつげがその魅力を高めていた。美しい小鳥のような声は両親の自慢だ。
さして関心もされない国だが「外交」という名の一人旅が、17歳の儀式のように昔から受け継がれていた。
さして関心もされない王族であるにもかかわらず、王女を守る人間をお后は厳正に選んでいる最中なのである。
「! この男性は……?」
后は、メインで撮られている男の後ろにチラリと映っている人影に目を向けた。
「誰か! 誰かおらぬか」
「何かご用でございましょうか」
声を張り上げると、侍従の1人がしずしずと近寄って訪ねる。整えられた襟がまぶしい老齢の男性だ。
「ランカーを呼んでちょうだい」
「かしこまりました」