表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

愛するあなたと


「美由には黙っていて貰ったんです。あなたを直接驚かせたくて」


「き、君って奴はっ!」


「許してくれますよね、お義父さん。ああ、あと美由が、あなたを一人には出来ないって言ってたので、もちろん俺はあなたと同居させて貰いますよ。養子に入っても構いませんから。

……ダメじゃないですか、一人では家事も料理も何も出来ないそうですね」


……ダメだ。


彼に触れている手から、熱が広がる。


彼女、美由に触れるのとは、比べものにならないほど。


「ねぇ、先生。何をそんなに怯えているんです? 俺達は、家族になるんですよ」


彼の手をそっと握りしめる。


その途端に、ピクリと彼の身体が大きく揺れた。


彼の顔を覗き込むと、顔色は真っ青に変化して、瞳は不安げに揺れていた。


そんな顔をした彼に、自分の顔を寄せてそっと唇を重ねる。


途端に彼の身体が硬直し、両手で必死に俺の胸を押し返してくる。


……でも、逃がさない。

逃がすものか!


彼の舌を追いかけて捕らえ、激しく口内を犯してゆく。


身体をこれ以上ない程強く抱きしめ、彼の身体の震えさえ止まるほどに押さえ付けた。


じっくりと時間を掛けてキスを繰り返してゆくと、彼の身体の力が徐々に抜けてくる。


激しいキスで酸欠になったのか、いつのまにか彼は俺の身体にぐったりと身体を預けてきた。


そんな彼を愛しく思いながら、彼の甘い唇を思う存分に味わった。


じっくりと時間を掛けて味わいつくした後、名残り惜しいが彼とのキスを自分から解き、彼の身体をソファにそっと持たれ掛けさせた。


……もう、決めている。


彼には、キス以上の行為をしないと言う事を。


本当は、これ以上の行為に及びたいところだが……


これから、彼との甘い生活が始まるのだ。


一時の感情に流されて、二度と彼を失いたくない。


「……はぁ」


ソファに背を預けて、目を瞑ったままの彼の長い睫毛が、わずかに揺れている。


揺れているのは、涙のせいか?


それとも……


「……この行為は、美由に対する裏切りではないのか?」


息が整った彼は、目を瞑ったまま苦しげに震える声で俺に話しかけてきた。


「裏切り?……キスなんて欧米じゃ、家族同士でも挨拶じゃないですか、お義父さん」


外国でも、挨拶でここまでの深いキスはしないだろうけどな。


六年間のあなたに対する飢えが、一気に噴き出してしまった。


だが、これからは、ずっとあなたと一緒だ。


この六年間、一度も会えなかった。


会ってはいなかった。


でもこの六年、今、目の前にいる彼の事しか愛せなかった。


他の人間を愛する事は出来なかった。


娘の美由に偶然出会ったのは、運命なのだ。


彼を愛し抜けという、運命の啓示だったのだ。


彼とは混じり合う事は、きっと決まっていた事なのだ。


もうすでに彼の娘を通して、俺達は混ざり合っている。


彼の身体と混じり合いたい気持ちはもちろん強くあるが、今はこれ以上の関係は必要ないのだ。


これ以上の行為は、彼を壊してしまうだろうから。


それは、俺が一番望まない事だ。


それほどに、あなたを愛している。


あなたこそが俺の生きていく源だ。


「君は……娘だけを愛していけるのか?」


「勿論ですよ」


「それなら、しょうがない……」


肉体的にはね。


だから、裏切る事にはならないだろう?


表面上は。


「……あなたの子供が、娘で良かった」


「……何か言ったか?」


「いえ、何も」


傍にいる彼にも聞こえないほどの声で、本当の気持ちを呟く。


この六年間、俺は無為に生きて来た。


でも、これからは違う。


ずっと、あなたの傍にいる事が出来るのだ。



愛するあなたの傍に――



end。


完結しました。歪んだ愛の果てに、彼らの物語は続いていきます。

この先はどうしても15禁以上の内容になるため、しばらくしたらこちらの小説はムーンライトに移転したいと思ってます。このような駄文を読んで下さった方々には本当に感謝を捧げます。ありがとうございました。


余談ですが、タイトルの「CROSSING-OVER」は、CROSSINGは「混ざる」と言う名詞で「交差」、-OVERが付くと、「染色体の交差」という意味になります。


遺伝子レベルで混じり合う歪んだ想いと愛。

ここまでの執着は狂気ですね。でも、こういう人の歪んだ黒い部分を書くのが好きです。人は、心に誰しも白と黒の部分がありますから。

それがあるからこその人間です!


それでは、いつかまた☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ