表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死亡フラグ回収係は今日も使い捨て ~他人の死を引き受ける異能者、最も危険な部署に配属されました~  作者: 桐生カイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/36

第33話 回収された人間

 白い部屋だった。


     ◆


 窓はない。

 時計もない。

 音もない。


 ただ、柔らかな光が天井から降りている。


 黒瀬は、その中央に座らされていた。


     ◆


「体調は」


 扉の向こうから、低い声。


 久世蓮司。


「問題ありません」


 黒瀬は、淡々と答える。


「そうか」


 それ以上の感情は、乗らない。


     ◆


「君は優秀だ」


 久世は、椅子に腰を下ろす。


「判断も速い。分析も正確だ」


 事実だけを並べる。


「だが」


 視線が、静かに向けられる。


「感情が、介入した」


     ◆


「……はい」


 否定はしない。


 嘘をつく意味もない。


     ◆


「朝倉恒一は、危険だ」


 久世は続ける。


「彼は、予測を壊す」


「それは、国家の安定を壊す」


 声は冷静だが、確信がある。


     ◆


「安定のために」


 黒瀬は、静かに問い返す。


「誰か一人が死ぬことは、正しいのですか」


     ◆


 久世は、数秒沈黙した。


 怒らない。

 否定もしない。


「正しいかどうかは、関係ない」


「必要かどうかだ」


     ◆


 その言葉は、いつも通りだった。


 だが今日は、少し違って聞こえた。


     ◆


「彼を管理しなければ」


 久世は、視線を落とす。


「もっと多くが死ぬ」


「市場が広がる」

「選択は歪む」


 レオニスと、同じ言葉。


     ◆


「あなたは」


 黒瀬は、静かに言う。


「彼を殺したいわけではない」


「当然だ」


 即答だった。


「彼は必要だ」


     ◆


「では、なぜ」


 黒瀬の声は、揺れない。


「選ぶ力を奪うのですか」


     ◆


 久世は、初めてわずかに目を細めた。


「個人の選択は、不安定だ」


「国家は、不安定を許容できない」


     ◆


 それは、完全な論理。


 揺らぎのない答え。


     ◆


「私は」


 黒瀬は、まっすぐ久世を見る。


「不安定でもいいと思っています」


 部屋の空気が、わずかに変わる。


     ◆


「それは、理想だ」


「はい」


 認める。


「でも」


 拳を、ゆっくり握る。


「予定された死よりは、人間的です」


     ◆


 沈黙。


 長い。


 久世は、目を閉じた。


     ◆


「君は」


 低い声。


「もう、現場には戻れない」


「承知しています」


「監視下での分析要員に回す」


「はい」


     ◆


 それは、左遷だ。


 だが、切られはしない。


     ◆


「最後に一つ」


 久世は、立ち上がる。


「彼は、戻ると思うか」


     ◆


 黒瀬は、わずかに考えた。


 そして。


「戻りません」


 即答した。


     ◆


「なぜだ」


「彼は」


 一拍。


「選ぶことを、やめないからです」


     ◆


 久世は、何も言わなかった。


 ただ、静かに部屋を出ていく。


     ◆


 一人になった黒瀬は、深く息を吐いた。


 後悔はない。


 恐怖は、ある。


 それでも。


 彼女は、まだここにいる。


 公安の中で。


 だが、もう同じ側ではない。


     ◆


 モニターに、最新予測が表示される。


『近未来:大規模異能災害

 回避条件:朝倉恒一の死亡』


 黒瀬の呼吸が、止まる。


     ◆


 世界は、まだ彼を死なせようとしている。


 だが。


 彼は、死なない。


 黒瀬は、静かに理解した。


 次は――

 世界が、選ばされる番だ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ