表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死亡フラグ回収係は今日も使い捨て ~他人の死を引き受ける異能者、最も危険な部署に配属されました~  作者: 桐生カイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/36

第17話 条件

 その通信は、予告もなく入った。


 非公式回線。

 暗号化レベルは高いが、見覚えがある。


 俺は、端末を手に取ったまま、しばらく動かなかった。


 ――出れば、もう戻れない気がした。


     ◆


 それでも、画面をタップする。


 音声はなく、文字だけが表示される。


『一つ、確認したい』


 短い文章。

 回りくどさがない。


『君は、最近“待つ”ようになった』


 図星だった。


『死を引き受ける前に、周囲を見る』


『逃げ切れるかを考える』


 俺は、何も返さない。


 返せる言葉が、ない。


     ◆


『それは、裏切りではない』


 次の一文が、少し遅れて表示される。


『選別だ』


 その言葉が、胸の奥に沈んだ。


 選別。


 公安がやっていることと、同じ言葉。


『だが、決定的に違う点がある』


 文字が、ゆっくりと続く。


『国家は、死ぬ人間を選ぶ』


『君は、死なない人間を選び始めている』


     ◆


 端末を握る手に、力が入った。


 俺は、確かにそうしていた。

 無意識に。


『提案がある』


 ノクスの文章は、淡々としている。


『君の“条件”を、共有しろ』


 条件。


『誰のためなら死ぬのか』


『どこまでは引き受けるのか』


『どこから先は、拒むのか』


 息が、詰まった。


 それは、俺がまだ言葉にしていないものだ。


     ◆


「……ふざけるな」


 誰もいない部屋で、声が漏れた。


 条件を決める。

 それはつまり、見捨てる人間を決めることだ。


『すでに、決めている』


 即答だった。


『君は、もう全てを引き受けていない』


『それを、自覚していないだけだ』


     ◆


 画面が、一瞬切り替わる。


 過去の映像。

 俺の任務ログ。


 公共施設。

 商店街。

 住宅地。


 そこに、赤いマーカーが引かれている。


『子どもがいる案件:即応』


『軍事関連施設:平均0.8秒の遅延』


 数字まで、正確だった。


 俺の“癖”が、可視化されている。


     ◆


『安心しろ』


 文字が続く。


『条件を共有したからといって、君を縛らない』


『命令はしない』


『選ぶのは、常に君だ』


 その言葉が、ひどく危険に聞こえた。


 自由を与える言い方は、責任も同時に押しつける。


     ◆


「……俺は」


 俺は、端末に向かって呟いた。


「誰かを切り捨てるために、生き残ったわけじゃない」


 返事は、少し遅れてきた。


『分かっている』


『だから、君はここにいる』


 納得されている。

 それが、逆に怖かった。


     ◆


『今は、答えなくていい』


 ノクスの最後の言葉。


『だが、いずれ必ず選ぶ日が来る』


『その時、国家と君は、違う答えを出す』


 通信が、静かに切れる。


     ◆


 俺は、ベッドに腰を下ろした。


 条件。


 誰のために死ぬのか。

 誰の死は、引き受けないのか。


 今まで、考えないことで成立していた問いだ。


 考え始めた瞬間、世界は残酷になる。


 それでも。


 もう、戻れない。


 選ばされているのは、最初からだ。


 ただ今までは、それを自分で決めていなかっただけ。


 俺は、目を閉じた。


 逃げ道は、まだ遠い。


 だが、選択肢は、もう目の前にあった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ