言葉の刀と技の鏡をもつ2つの影
街は、昔ながらのレンガで作られている。古代の建造物もちらほらと残っている。巨大スタジアムも古代建築物の一つらしい。
「面白そうだけど…いちいち登るの面倒だな…」
一番上まで上がると、スタジアムの入り口が向こうに見える。その横ののれんには、「受付」と書いてある。
「どうする?誰がいく?」
とカイが言う。
「…」
「…」
「…」
誰も何も言わない。
「何だ?誰も行きたくないのか?」
とカイが驚いて言う。
すると、カイが、ルミナスの手を掴んで、
「俺とルミナスで行ってくる」
と言う。
「え!?私、別にOKしてないんだけど…まあいいか」
と言う。
ダレンは、いってらっしゃいと言うように、手を振っている。
受付の名簿には、名前がぎっしりと書かれている。
その下の方に、2人の名前を書く。
「あなた、左利きなのね」
「ん…まあな。うちの遺伝らしい」
ペンをルミナスに渡して、カイが後ろに下がる。
ルミナスが書いている間、特にやることもないので、周りを見渡していると、
「よし、これでOKだな」
「どんな奴と戦えるのか、楽しみだね!」
と二人組の声が聞こえる。
カイが見ると、1人は、黒髪に赤い目をした青年。もう1人は、赤い髪に、青い目をした、15も満たないような少年が、受付に立っていた。
すると、あちら側もこっちに気づき、
「ねぇ!お兄さんもこの大会に出るの?」
と少年が話しかける。
「え、まぁそうだけど…」
と、ルミナスの方をチラッと見て言う。
「おい、アレン。自己紹介もせずにいきなりひとに話ふっかけるなよ」
と奥の青年が歩いてくる。
「悪かったな。アレンが」
「いや。こっちもそこまで配慮できなかった。俺にも非がある。…ところで、君らも出場するのか?」
とカイが聞く。
「あぁ。俺らもこの大会に出る為に、ここまで来た。俺はライ。エルド・ライ」
「僕は、ラッド・アレン」
と言う。
「っ!エルドってあの、世界で有名な魔術一家じゃないのか?」
とカイが驚いて聞く。
「まぁな…でも、俺は能力は持ってるが、先祖代々に受け継いでいる能力じゃねぇから、追い出されちまったんだよ」
と、ライが肩をすくめて言う。
「僕は皆んなから、天才だって言われてたんだけど…友達がいなくて、村から出て行った時、僕を旅に付き合わせてくれたのが、ライ兄なんだよ」
とアレンが言う。
「俺は十六夜カイだ。彼女にここにくればいいって言われて来たんだが…思ってたよりも過酷そうだな」
ライは、
「当たり前だろ。ここには世界各国の化け物が集まってる。まあ俺もここは初めてなんだ。どんな奴が来ても怖くねぇよ、なぁアレン。」
アレンは、もちろん!とにこにこで言う。
ライは、
「正直お前らとは戦いたくねぇけど...やるなら決勝でやろうぜ。」
と言う。
「あぁ。臨むところだ。返り討ちにしてやるよ。」
カイも笑顔で言う。
2人に手を振って、カイはルミナスの元へと戻る。
「面白そうな奴がいたぞ。」
「ん?それはどう言う意味?性格がってこと?」
2人の背中を見る、カイの色違いの目が日光で反射して光る。
「まぁそれもあるが、それよりも…面白そうな"能力"を持ってるぞ、彼ら」
ーー次の日
「ふぁー。よく寝た」
とリーフが、朝の散歩をしに、外に出ると、遠くに、人だかりができている。
「ん?何かあったのかな」
と人だかりに向かっていくと、そこには、巨大な掲示板に、トーナメントの組み合わせの紙が貼られている。
「あ、カイとルミナスさんが出るやつか…カイに知らせないと」
しばらくして、カイとルミナスが、リーフに連れられて走ってくる。
「俺らは…Aブロックのど真ん中。ライ達は、真反対側か…」
「戦うなら決勝ね。」
2人で話していると、隣の男の子が、
「ねえねえ。お兄さん達、これに出るの?誰と戦うの?」
と聞いてくる。
「えーっと…ラ・ヴィルとラ・ヴェル…何だ?兄弟か?」
とカイが目を細めて言う。
「それは災難だな、お二人さん」
と、男の子の親だろうか、隣の男性が言う。
「この2人は兄妹なんだが、去年、準優勝している。もしコイツらに勝ったとしても、次には優勝経験のある、タイタン、サヴァクコンビだ。決勝までの道は遠いぞ。」
と言う。しかし、カイは、
「問題ないですよ。そいつらがどこまで強いのか、俺たちは知らない。だから、そんな前評判、僕らには馬の耳に念仏になっちゃいますね」
と、笑いながら言う。男性は少し驚きながら、
「大したもんだな。俺は今年はつまらねぇ戦いになりそうだと思ってたが、今の言葉で、すっかりあんたらのファンになっちまった。あんたらの優勝、応援させてもらうよ」
男の子も、「僕も!」と元気よく言う。
ルミナスは「ありがとう」と、男の子の頭を撫でて言う。
すると、
「全世界技巧大会に出場する選手は、スタジアム入り口にお集まりください」
とアナウンスが流れる。
「じゃあ、行ってきます」
とカイが言って、2人は、親子に手を振っていく。
血煙を巻く、地獄の大会が始まろうとしている。




