光闇を漂う幾多の星屑
俺は橘尚弥
俺は今人生最大の悩みを抱えている。
それは夢に関してのことだ。
俺には幼い頃からの『自分の声が嫌いでも声に関しての仕事を諦めている人だって夢を追えるようになれる』ことを証明する夢がある。
完全なる自己満足の夢である。
俺は中学生の頃に声優になりたいという夢を抱いた。
理由は自殺をしそうなほど精神が弱っている母に"初めて推し"が出来たことにより徐々にだが精神が回復したことがあった。
そして俺も誰かの生きる希望になれるような存在になりたいと思ったのが始まりだ。
その頃の俺自身はアニメやゲームを嗜んでいたため特に声優に希望を貰っていた。
だが俺は自分の声が嫌いで……よく『こんな声なんて出なくなればいいのに』と思っており、シャーペンや鉛筆を喉に刺したりした。
ネットで喉が潰れれば声が出ないというのを見たからだ。
だが死にたいとまではならなかった。
俺自身が変わったのは高校三年の時だ。
俺は『せめて卒業まで生きて卒業したら全て終わらせよう』と考えるまでになっており、ならば終わらせる前に親孝行しようと思いバイトを始めた。
その時出会った仲良くなったバイト先の先輩が「私はずっと自分の声が嫌いだったの……君のおかげで少しは自分の声を好きになれたんだ。
だけど先生から『長くもっても二ヶ月で死ぬ』と言われて……なら、夢を全力で追いたい(諦めたい)って思ったから……せっかく仲良くなったのにごめんね、ここを辞めるんだ」と言って辞めたのを見て……俺も夢を追わず(諦めず)死にたくないと思ってしまった。
そして結果的に卒業後終わらせることはなく人生経験が大切だと考え就職した。
だが入社して三年も経たないうちに夢を追いたい(諦めたい)という思いばかりが強くなり、仕事が思うように出来ず結局『十月十三日で退職します』と仕事を辞めて夢を追う(諦める)ことにした。
「…………はっ!! はあ、はあ……はあ……なんで、なんで夢を追わせて(諦めさせて)くれないだ!!」
俺はこの記憶を持って四十年前に生まれ変わった……しかも人形族にだ。
この世界には声優どころか……元の世界にあった俺が目指していたものはない。
でも俺は、ないなら作るだけだ!!
夢を追いたい(諦めたい)から!!
声帯がない種族なら、声帯を作ってみせる!!
そう意気込んで自らの身体を使い実験を繰り返し声帯を作ったのが転生してから十七年後のことだ。
そして俺は四年をかけ冒険者としてお金を稼ぎ事務所に出来そうなほど広い家を買った。
俺は高校一年の夏に作家志望の友達の高円寺秋人からよく『オラが尚弥に作品の書き方ってもんを教えてやる』と生意気にも教えられたことがあり、素人なりだが、ちょっと下手レベルに俺は書けるようになった。
その経験から俺はギルド広場で
『オイラには冒険者になるなんて……そんな勇気はねえんだ!! 怖いんだよ』
『何言ってんだ!! カイルは俺が襲われてた時助けてくれただろ!! 自分より何倍も強い相手に俺を守るために立ち向かった……俺にはそんなお前が眩しく思った。それでお前みたいに誰かを助けられる人間になりたいって……そう思えたから、俺は冒険者になりたいって思ったんだ!!』
『それはダンの意見だろ!! オイラはただの臆病者なんだ!! カイルが襲われた時だって怖くて一度は逃げたんだ!! そんなオイラが……眩しいなんてことないんだ……あるわけないんだよ』
『一度は逃げた……なあダン、お前は一度は逃げたのにも関わらず俺を助けに来てくれたんだろ? 俺はカイルのそういうところも含めて眩しいんだ。ダンが一人が怖いなら、俺と一緒にならないか、冒険者に』
『…………二人で冒険者』
『そうだ、俺とダンでなろうぜ冒険者にさ。俺はお前とならどこまでも行ける……たとえ冒険者の頂点だろうとな』
『……流石にそれは言い過ぎだ。だが二人でならなってもいい、目指すんだろ頂点……たまには寄っ掛からせてくれよなダン』
『任せろカイルと俺は二人で最強だ!!』
「聞いていただきありがとうございます!! 今のが"紅蒼伝"の序盤で主人公カイルとダンが冒険者になる決意をした場面です!!」
パチパチパチパチ
小さな拍手だが鳴り響くなか観客から
「あの今のってなんですか? 一人で何人もやっているみたいでしたが?」
と質問が出たので
「今のは"芝居"というものです。気になるのでしたら何か一緒にやってみますか?」
「気にはなるのですが、私に出来るでしょうか?」
「大丈夫です。私だって始めてそう時間は経ってませんから」
俺はそう言って昔読み聞かせてで読んでもらった絵本を教えて一緒にやることに。
そして十三分後
パチパチパチパチ
「やってみて楽しいですね、この芝居? というものは。他にもあるんですか?」
「他に……ですか? 私が様々なものを用意している場所があるのですが、来てみますか?」
「……わかりました。気になるので見に行ってみます」
「……あのぉ、あたしもいいですか?」
「いいですよ」
ともう一人来てくれることになった。
そして二人は所属することになった。
俺の事務所には絵本を一緒に読んでくれた女性のナキリ・アヤツジともう一人の女性ミリエル・ナタリー、そして俺だ。
これは俺が夢を追う(諦める)ための物語
そして芝居を夢を追う十人が大成する物語である
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
今日夢を追って仕事を辞める夢を見たので書きました