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第5話 魔物研究家さん、化物を仲間にしてしまう......



「お前ら、さっきまでビビってたじゃねえか! いまさ――」



 ガゴォ。


 轟音と共に、リーダーらしき男の上半身が消し飛ぶ。


 あ、あれは......



「......?」



 何が起こったのか、と呆然としている二人の前に、『ツノマキガイの天敵』が姿を現す。


 

「な、なん――」



 立ち尽くす一人を、前脚で軽々と押しつぶす。


 やっと状況を理解した最後の一人が、背を向け走り出したが――もう遅い。


 前脚で薙ぎ払うと、轟音と共に男がまるでボールのように軽々と吹き飛ばされた。



 ――瞬殺だ。



 魔物は俺を一瞥すると、ツノマキガイに近づいて行った。



「あ、あれは......」



 思い当たった魔物を探して俺は急いで手元の魔物図鑑をめくる。


 マ、マ......あった。



 『マーナガルム』だ。


 奴の名は、マーナガルム。


 深紅の宝石のような目が特徴的な、魔獣種の王だ。


 全長4メートルの巨躯を持ちながら、俊敏性も高い。



「う、うそだろ。マーナガルムかよ......」



 なんでこんなレベル違いの魔物がこんな森にいるんだ......


 最高位冒険者の総称である宝珠七武ーーいや、冒険者の頂点に立つ玉璽五傑でやっと張り合える相手だそうだ。


 ......全部、本の受け売りだが。



 マーナガルムはツノマキガイに鼻を近付けてクンクンと臭いを嗅ぐと、かぶりつき始める。


 おお、美味そうに食べるなあ......


 なんて見惚れている場合じゃない。


 これはひじょーにマズいぞ。


 こんなやつが街の近くの森に棲んでいたなんて......


 コイツが近くの街に解き放たれたらとんでもないことになる。


 この世界は弱肉強食とは言ったものの、それは流石になぁ。


 街が壊滅すると、俺としても生活拠点が無くなって困るわけだし。、



「俺の家が襲われる可能性もあるしな」



 チャミ、ペエタが襲われるなど考えたくもない。


 ......仕方ない、《従魔懐獣》で心を通わせて、本来の住処であろうこの森の奥地でひっそりと暮らしててもらおう。



「《従魔懐獣》......」



 マーナガルムの頭上に数字の0が現れる。


 この数字が100になると、《従魔懐獣》は完了だ。


 ほっといても数字は増えていくものの、『対象を知る』ことで上昇率はあがる。

 

 と、いうわけで。


 夢中でツノマキガイにかぶりつくマーナガルムの一挙手一投足を観察する。


 銀色の体毛に覆われた、まるで大木の幹のような前脚でツノマキガイを押さえつけ、


 剣のような牙で肉を引き裂いて喰らっている。


 特徴的な紅の目にはツノマキガイしか映っていない。


 ......さて、どうだ? 50%はいったか?



「――えっ、10%!?」



 驚きの遅さ。


 ペエタのときなんかものの十秒で100%になったんだが......


 マーナガルムと俺のレベル差がありすぎるのか、それともペエタがチョロ過ぎたのか。


 どちらにせよこのペースだと、ツノマキガイを食べ終わるまでに間に合わないぞ......


 食べ終わってどっか行かれたら、《従魔懐獣》が継続できなくなる。



「......はあ、しゃーない」



 触れ合うか。


 《従魔懐獣》は、対象の魔物と触れ合ったりすることでも数字の上昇効率があがる。


 チャミのときは頭を撫でたらイチコロだったな。


 もちろん、『魔物に接近する』という行為には危険が伴う。


 ただ、俺には《良友無害》がある。



 《良友無害》――魔物の攻撃対象にならない



 エマが「ついでに」とくれたこの能力のおかげで、俺は魔物から攻撃されることは無いが......


 無意識の一撃を喰らってしまうことはあり得るのだ。


 例えば、『横になろうとして下敷きになる』とか、『走りだそうとして轢かれる』とか。


 ステータスALL1なんだから、振った前脚に掠るだけで身体の一部が吹き飛びかねない。


 命がけの接近だ。




 グルルと唸りながら......もしかしたら舌鼓を打っているのかもしれないが......かぶりつくマーナガルム。


 攻撃されないとは言え、怖いものは怖い。


 超高層ビルのガラス張りの床に立つことは、「絶対割れないから大丈夫!」と言われようが誰でも怖いはずだ。


 それと同じ。俺が特別臆病というわけではないぞ?


 などと頭の中で言い訳を並べてる時間は無い。


 マーナガルムの食事が終わってしまう。


 震える足で一歩、また一歩とゆっくりと近づく。



「よ、よし......」


 

 なんとかマーナガルムの頭の横まで辿り着いた俺は、恐る恐る手を頭に近づけていく。



 ーー触れた。




 一瞬身体をこわばらせたマーナガルムだったが、そのまま食事を続ける。


 ツノマキガイが相当美味しいのだろうか?


 俺も食べてみたいかも.......


 そんなことより、マーナガルムの触感はというと。

 

 硬い。毛はゴワゴワだ。


 毛づくろいはあまりしないのだろうか?



 ――ゆっくりと、撫でてやる。



「うわっ!!」



 マーナガルムが食事をいったん中止すると、こちらを向いた。


 そして、ベロリと俺の顔を舐める。


 

「お、おーおー、よしよし」



 生きた心地がしないわ。一噛みでエマのところに逝ってしまうのだから。


 ――が、そんなことはなくマーナガルムは再び食事に戻る。



「ふうぅ......」



 顔がヨダレでビチャビチャなわけだが、甘んじて受け入れよう。



 こうしてマーナガルムと触れ合っていると、頭の上に浮かぶ数値がみるみるうちに上昇していく。


 ......30%............66%.........88%......


 97...98...99......


 ――100。


 俺は、マーナガルムの頭の上の数字が出なくなったことを確認して、ホッとため息をついた。



 《従魔懐獣》完了だ。


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