第3話 魔物研究家さん、街を追い出されていた......
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「懐かしいな、もう一年前か」
肉にむしゃぶりつくチャミを見て思い出す。
チャミは、俺がこの世界に転生して初めて出会った魔物だった。
後で知ったんだが、この世界では『ガルム』と呼ばれる犬型の魔物で、性格は非常に獰猛、群れで行動し、人が襲われることもあるとのこと。
決して人には懐かないらしく、『足を怪我したガルムを不憫に思い助けたら噛み殺された』ということも多いそうだ。
そんなガルムだが、では何故俺はチャミを従えることができたのか。
それは、エマが俺に与えてくれた特別な力のおかげなのだ。
久しぶりに俺のステータスでも確認してみるか。......あまり見たくないが。
俺は自分に≪能力確認≫を発動する。
すると――俺の視界に文字が浮かび上がる。
>人間 Lv. 1
>【 H P 】 1
>【 M P 】 1
>【 ATK 】 1
>【 DEF 】 1
>【 SPD 】 1
>【 魔 法 】
>【 技 術 】 能力確認 従魔懐獣
>【 特 殊 】 良友無害
......ステータスALL1って、この世界最弱なんじゃないか?
いや、ステータスの1の重みが分からないから何とも言えないが。
まあ、ステータスについては一旦置き。
この【技術】ってとこにある《能力確認》っていうのが、今使っている『自分、または魔物の能力が視界に浮かび上がる』スキルだ。
その横にある≪従魔懐獣≫ってのが、『どんな魔物とでも仲良くなれる能力』であり、
【特殊】ってとこにある〈良友無害〉がエマの言う『おまけの能力』だ。
......なんてことを考えていると、足元でペエタがプルプルと震えてご飯をおねだりしていた。
「ごめんごめん、ペエタはこれな」
ペエタの前に鉄鉱石を置いてやる。
ペエタは嬉しそうにプルプルして、鉄鉱石の上に乗り、体内に取り込んだ。
すると、みるみるうちに鉄鉱石が溶け出していく。
これがペエタ、というよりスライムの食事方法だ。
獲物の上に乗っかって、溶かして液体にして吸収するわけだ。
......鉄鉱石を生物に置き換えると、めっちゃ怖いな。
ステータスALL1の俺が襲われたら、なすすべなく溶かされてしまうだろうな......
......よ、余計なことを考えるのはやめよう。
ちなみに肉食のチャミと違って、ペエタは何でも食べる。
にもかかわらず、金のかかる鉄鉱石をエサに選んでいるのには理由がある。
ペエタのステータスも確認するか。
> スライム Lv. 1
>【 H P 】 3
>【 M P 】 0
>【 ATK 】 1
>【 DEF 】 15
>【 SPD 】 1
>【 魔 法 】
>【 技 術 】
>【 特 殊 】 食力 密彫質な胃袋
ご覧の通り、他の能力と比較してDEF――つまり防御力が非常に高い。
これは元々スライムという種族がそういう性質がある、というのもある。
実際、《従魔懐獣》で仲間にしたときのDEFは7と高めの値だった。
ただ、それが15にまで成長できたのは、ペエタの持つこの〈食力〉のおかげだ。
これは名前の通り、食べたもので能力値が変化する能力。
試しに硬くなりそうな鉄鉱石を与えてみた結果、DEFが上昇したので頻繁に鉄鉱石を与えている。
本当はもっと効果のありそうな鉱石も与えてみたいが、そんな金銭的余裕はないのである。
......ちなみに〈密彫質な胃袋〉は、体内に取り込んだものを溶かして整形できる能力。
これでガラスの彫刻とかを作ってもらって、街に行って売ることで日銭を稼いでいる。
......まああまり街には行きたくないが。
「よしよし。そんじゃ、俺も飯にするか」
余計なことを考えるのはやめて、さっさと朝食食べよっと。
俺の飯はというと、パン一つ。
貧しいので朝食は切り詰めないとな。
そもそも収入がペエタの調度品の売買くらいだし、やっぱりペットを飼うとお金がかかるからなぁ。
ため息をつきながら、俺はパンをかじった。
「ごちそうさまでした、っと」
席を立ち、食器を洗っていると、チャミが「ガルルルル......」と唸りだした。
何事かと思ったら、突然窓ガラスが割れる音が。
「――!......またあいつらか......」
走り去る子供たちの卑しい笑い声が聞こえる。
小石を投げて窓ガラスを割った犯人は、いつものワルガキ三人組だな......
「ガルルルル......」
「......チャミ、絶対に襲うなよ」
今にも追いかけていきそうなチャミの頭をなでて、落ち着かせる。
「はあ......割れたガラスを治すのも大変なんだからな!」
おもにペエタが。
俺はペエタを抱きかかえると、割れた窓ガラスの散らばった床に置く。
「すまんが、いつもの通り頼むぞ」
俺の言葉を理解しているのか、ペエタは床を這いながらガラスの破片を体内に集めていく。
「そろそろいいか」
ガラスの破片を集めきったペエタを抱きかかえ、割れた窓ガラスのところに押し当てる。
すると、ペエタは体内のガラスをつかって窓ガラスを修復してくれる。
〈密彫質な胃袋〉の活用だ。
「――よし、ありがとうなペエタ」
俺はペエタを床に下ろして撫でてやる。
......アイツらは、すぐ近くにある、俺が追い出された街に住む子どもたちだ。
「魔物を街に連れ込みやがって!」「魔物を従えているとか......」「みんな怖がってます、街から出て行ってくれませんか」
そう言われて、俺は街を追い出された。
まあごもっともな意見ではある。
「絶対に人を襲わないですよ!」って言って街でクマとかトラとか飼ってる人いたらヤバい奴だもんな。
仕方ないので街から出て、森に家を建てて暮らしているわけだが.......
「まあ子供って純粋悪みたいなところあるからな。仕方ないよ」
俺はパンを口に放り込むと、溢れそうな気持ちと一緒に水で流し込んだ。




