第1話 魔物研究家さん、Tポイントが足りない......
「ふお~っ眩しっっ」
もう朝か......。
俺は朝の陽射しに目を覚ます。
......未だに前の生活のクセで携帯を探してしまうな。
などと寝ぼけていると、俺が起きたことに気付いたチャミが「待ってました!」とばかりに飛びついてくる。
「うへっ、朝から熱烈だなぁ。おはよう、チャミ」
朝から顔中ヨダレでベトベトだ......
俺はチャミの頭をワシワシと撫でまわすと、むくりとベッドから起きだす。
一日の始まりだ。
顔を洗って、歯を磨く。
――ボーっと歯を磨いていると、いつのまにやら俺の横にプルプルと震えるゲル状の存在が。
スライムのペエタだ。
なにを考えてるのやら、俺の足元でプルプルしている。
「ペエタは相変わらずふるえとるなぁ」
歯を磨きながら、ボーっとペエタを見つめる。
――あぁ、癒される......。
前までは、カメやら熱帯魚やらを飼う人の気持ちが分からなかったが、今ならわかるなあ。
プルプルしているペエタの横で歯磨きを終わらせ、服を着替える。
そして朝食――の前に、チャミとペエタのご飯を作ってやる。
チャミには昨日買ったカムビの骨付きもも肉。
ペエタには鉄鉱石だ。
「チャミ! ペエタ! メシだぞ~」
手を叩くと、チャミはガンダッシュで、ペエタはペタペタと這ってこっちによってくる。
「よーし、まずはチャミの分だ。待て、待てだぞ~」
俺の前でおすわりの姿勢で待つチャミに、カムビの骨付きもも肉の入った皿を置く。
「待て! まだ待てだぞ。――――よし! 食べていいぞ」
俺の合図とともに、飛びつかん勢いで肉にむしゃぶりつくチャミ。
いつのまにやらおすわりも待ても出来るようになったし、そろそろおまわりとか教えようかな。
......思えば、チャミと出逢って――この世界に来てもう一年くらい経つのか。
俺は、転生当時のことを思い出す。
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「あなたはしにました」
目の前のおかっぱの女性がそう告げる。
「は、はあ......」
「貴方の名前は斉藤拓海です。貴方はごく平凡な家庭で生まれ、受験では第三志望に合格、そこそこの会社に入社し、特に何もない日々を微かな劣等感と共に過ごし、そして残念ながら二十代で死にました」
「そ、そうなんですか......」
なぜ他人事なんだ、俺。
そう。この女性が言うように、俺の人生は特に大きな失敗もなければ、挑戦も成功もない人生だった。
世間の平均年収を見て安心したり、職に就けなかった昔馴染みの話を聞くことでわずかばかりの幸福を得るような人生だった。
それにしても、随分若くして死んだんだなあ。最期の方はあまり覚えていない。
それよりも、この人は誰なんだ......
「私はエマです」
......まるで俺の心の中を読んだように、目の前の女性が名乗る。
エマと名乗る女性は、そのまま続ける。
「貴方のような平凡な人間は、本来であれば通常の輪廻転生ルールに則ってもらうのですが......」
「......ですが?」
「貴方の先祖が天界でけっこー高位の存在になりまして。私もお世話になっておりまして」
「せ、せんぞ??」
しらん。
今の時代、先祖なんてみんな知らないだろ。
でも、何やら悪い話では無さそうだぞ......
「要するに貴方は先祖ガチャ爆大当たりなんです。良かったですね」
いや先祖ガチャってなんだ。初めて聞いたぞ......
親ガチャ通り越し過ぎだろ......
「というわけで貴方は自動的に天界でもそこそこ高位の存在となります」
「と、ということは......?」
「貴方は天界の住人として」
「住人として......?」
「住むことは出来ないのですが」
出来ないんかい。なんでじゃ。
「そ、それはどうして......」
「貴方は前世であまりにもパッとしなかったため、魂ポイント、略してTポイントが足りないんです」
「Tポイント......」
「あとTポイントが2ポイント溜まれば天界で暮らしていけます」
「惜しい!!」
おにぎり一個買えば貯まりそうなくらい惜しい......
「Tポイントは天界で貯めることが出来ないので、貴方には異世界に転生してもらいます」
「ほ、ほお?」
「今から転生先の異世界候補を3つ言いますので、選んでください」
「唐突!!」
待て待て!
異世界転生って、あの?
おいおい、マジかよ.....ていうか転生先とかめちゃくちゃ重要では?
ここはちゃんと聞かなければ......




