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爆裂‼三国伝(ラフスケッチ版)  作者: 縦河 影曇
19/27

19.出撃‼帝国の騎馬隊

「私たちはあの日、近頃(ちかごろ)暴走(ぼうそう)行為(こうい)

()鮮卑族(せんぴぞく)一斉検挙(いっせいけんきょ)する(ため)

(みな)蒼色(あおいろ)隊服(たいふく)に白の首巻(くびまき)()き、

白く()られた(かぶと)(かぶ)って、北の(げん)

(かん)ともいえる雁門塞(がんもんさい)より出撃(しゅつげき)した」


 (とこ)()した(かた)(びと)は、そう語り

出すと、(はげ)しくせき()んだ。


臧旻(ぞうびん)さま、ご自愛(じあい)くださいませ」


 筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)客人(きゃくじん)が、床に伏した

人物(じんぶつ)の名を()び、体を気遣(きづか)う。


「すまない”(けん)”よ」


 臧旻は、心配(しんぱい)げな表情(ひょうじょう)を見せる

堅という名の客人を、右手をかざ

して(せい)した。


「あの日の雁門は少し(さむ)程度(ていど)

った」


 臧旻がそう話し始めると、堅の

頭の中に寒空(さむぞら)広がる大草原(だいそうげん)景色(けしき)

()かんできた。


 大草原を()ける騎馬(きば)大部隊(だいぶたい)


部隊(ぶたい)(みっ)つに分けて(やつ)らの居場(いば)

(しょ)()()めるぞ」


 部隊の先頭(せんとう)で馬を()り、大声(おおごえ)

命令(めいれい)する男の名は”()(いく)”。


 その声は、大草原に(ひび)(わた)り、

(かく)部隊に伝達(でんたつ)された。


 先年(せんねん)国内(こくない)侵入(しんにゅう)した鮮卑族を

撃退(げきたい)し、その功績(こうせき)によって帝国(ていこく)

騎馬部隊を(まか)される事となった彼

の声は、とても自信(じしん)にあふれてい

た。


「そんな編成(へんせい)大丈夫(だいじょうぶ)か」


 命令を聞いた臧旻は、夏育に()

(けん)する為、部下(ぶか)を彼のもとへ走ら

せる。


 臧旻もまた、(べつ)の騎馬部隊を任

されていた。


問題(もんだい)ない」


 夏育は自信満々(じしんまんまん)で臧旻の部下に

言い(はな)った。


 「奴らを発見するのが先決(せんけつ)だ。

なあに、(おれ)の名を聞いて(おそ)れおの

のいた所を一網打尽(いちもうだじん)にしてやるさ」


 (もど)ってきた部下からの報告(ほうこく)を聞

いて臧旻は(おどろ)く。


(なん)だと。まるで敗北条件(はいぼくじょうけん)(かたまり)

ような発言(はつげん)だな」


 臧旻は一瞬(いっしゅん)(こま)った表情(ひょうじょう)をした

が、これも仕事(しごと)だと気持(きもち)ちを()

()え、(きび)しい表情で部隊に指示(しじ)

出した。


()が部隊は本体(ほんたい)(はな)れ、索敵(さくてき)

ながら進軍(しんぐん)する」


 臧旻の指示と同時に、夏育(ひき)

る鮮卑族討伐(とうばつ)の大部隊が、火で()

かれた(にく)()()食器(しょっき)のごとく、

三又(みつまた)(わか)かれて行く。


圧巻(あっかん)ではないか」


 夏育はこの大舞台(だいぶたい)主役(しゅやく)として

興奮(こうふん)絶頂(ぜっちょう)にあった。


李広(りこう)霍去病(かくきょへい)も、この壮観(そうかん)さを

見れば、俺を羨望(せんぼう)眼差(まなざ)しで見る

であろう」


 彼はいにしえの英雄(えいゆう)を思い浮か

べ、それら英雄たちに(かた)(なら)べる

自分を想像(そうぞう)していた。


 討伐作戦が始まって、十日ほど

()った(ころ)


 臧旻の騎馬部隊は、大草原のか

なり(きた)(ふか)くまで進軍(しんぐん)していたが、

肝心(かんじん)の鮮卑族は、まだ見つからな

かった。


「夏育どのの本体(ほんたい)(てき)を発見出来

たのであろうか」


 臧旻が、側近(そっきん)の者にそう噂話(うわさばなし)

していると、(ひがし)方角(ほうがく)から()がる

(けむり)を部下の一人が発見した。


敵発見(てきはっけん)、敵発見」


 (はな)れた騎馬部隊同士(きばぶたいどうし)連絡手段(れんらくしゅだん)

として、鮮卑族発見時には狼煙(のろし)

上げる事となっている。


(だれ)かが(やっこ)さんを見つけたみたい

だ」


 臧旻は大慌(おおあわ)てで馬の手綱(たづな)()き、

部隊に号令(ごうれい)をかけた。


「ほかの部隊に(おくれ)れを取るな。

我々(われわれ)帝国(ていこく)歴史(れきし)()(きざ)むぞ」


 臧旻の号令が合図となり、随行(ずいこう)

する軍楽隊(ぐんがくたい)から「鵜烏羽(ううう)」という

警報音(けいほうおん)合唱(がっしょう)が鳴り出した。


 帝国の大型馬(おおがたば)馬首(ばしゅ)をそろえて

狼煙の方角へ走り出す。


 大量の大型馬が全体重(ぜんたいじゅう)をかけて

地面を(けり)り上げる(ひづめ)の音と、鳴り

(ひび)く警報音が爆音(ばくおん)(かな)で、その音

は、夜中(よなか)街中(まちなか)であれば、(ねむ)りに

つく住民(じゅうみん)から帝国に苦情(くじょう)が出るで

あろうほどであった。


 しかも、帝国の騎馬隊は、追跡(ついせき)

中にどれだけ速度(そくど)を出しても、(どう)

()交通法違反(こうつうほういはん)になることは無いの

である。


 帝国の騎馬部隊は、(いさ)ましく(げん)

()へと急行(きゅうこう)した。


 連絡する狼煙をいくつか経過(けいか)

て行くと、頭髪(とうはつ)にそり()みを入れ、

一日千里級(いちにちせんりきゅう)の大型馬にまたがる集

団を発見した。


 それはまさに、


 鮮卑族の暴走(ぼうそう)集団であった。


「ンダ、マッポ、ヤンノカコラ、

アン」


 警報音を鳴らして行軍する臧旻

の部隊を発見した鮮卑族の若者(わかもの)

鮮卑族の言葉で何かを(さけ)んでいる。


 臧旻たちにその言葉の意味(いみ)はわ

からなかったが、彼らがこちらに

敵意(てきい)をむき出しにしているのは(つた)

わって来た。


 彼らは(みな)、寒空の大草原の中に

もかかわらず、へそが見えそうな

くらい(みじか)(たけ)黒色(くろいろ)上着(うわぎ)という

()()ちで、その半端(ハンパ)ない気合(きあい)

(しめ)していた。


「メンチ、キッテンジャ、ネエゾ、

クラ」


 鮮卑族の言葉が理解できなくと

も、彼らが発する怒号(どごう)とその威嚇(いかく)

(てき)服装(ふくそう)は、一般(いっぱん)の民を(おび)(ふる)

あがらせる事であろう。


大当(おおあた)たりだな」


 臧旻が手櫛(てぐし)髪型(かみがた)(ととの)える鮮卑族

を見てつぶやく。


「他の部隊が交戦中(こうせんちゅう)ではないのか」


 (あた)りを見渡(みわた)すと味方(みかた)の騎馬部隊が

見当(みあ)たらない。


「確かにこちらの方から狼煙が上が

っていたのだが、まさか」


 一瞬、最悪(さいあく)状況(じょうきょう)(あたま)をよぎっ

た。


 しかし、最強(さいきょう)であるはずである

帝国騎馬部隊が()けるわけがない。


 ただしそれは、この鮮卑族の集団

が”八百八屍将(はっぴゃくやししょう)檀石塊(だんじゃくえ)(ひき)いる本体

でなければの話だが。


「ええぃ、一斉検挙だ」


 臧旻は頭の中に()き出た不安(ふあん)

()(はら)うと、ただ自分たちの職務(しょくむ)

遂行(すいこう)する為、騎馬部隊に鮮卑族

への攻撃命令(こうげきめいれい)を発した。


 軍楽隊が警報音をさらにやかま

しくする中、帝国の騎馬たちは敵

(じん)()かって走り出す。


 その動きを見た鮮卑族が迎撃態(げいげきたい)

(せい)(ととの)えると、その指揮(しき)を取る

一人の女性の声がした。


「あんたら、相手がマッポだから

ってビビンじゃないよ」


 指揮官(しきかん)であろう(まき)(がみ)女性(じょせい)

声が、帝国騎馬隊の警報音に負け

ない大声で気合を入れると、狩猟(しゅりょう)

で使用する、(けもの)(ほね)で作られた楽

器の音が「原莉羅原莉羅(パラリラパラリラ)」と鮮卑

族から鳴り出した。


 もし、この場に民家(みんか)があったな

らば、帝国へ膨大(ぼうだい)苦情(くじょう)上申(じょうしん)

(とど)けられるであろうほどの大合奏(だいがっそう)

である。


 (あお)(くろ)激突(げきとつ)が今、始まろうと

していた。


次回に続く。

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