表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆裂‼三国伝(ラフスケッチ版)  作者: 縦河 影曇
17/27

17.農耕帝国

 脱獄犯(だつごくはん)となった()(こう)家の(みょう)(さい)

逃がす為、彼の族兄(ぞくけい)である夏侯

(げん)(じょう)(つな)を引く馬車に全てを(たく)し、

俺は馬車から飛び降りた。


 だが、今度は俺が追われる身と

なり、平原(へいげん)()(たい)にて()(へい)(しょう)(たい)

よって発見されてしまう。


 すんでの所で(ぼう)()(ふく)を身に(まと)

曹洪(そうこう)()(せい)が加わり、今まさに

騎兵たちとのにらみ合いが始まっ

た。


(じゅう)(けい)防護服二号(マークトゥー)が完成した」


 曹洪が、防護服の完成を俺に伝

える。


 ちなみにここ数分(すうふん)、会話がこれ

から進んでいない。


「従兄、防護服二号が完成した」


 曹洪は、先ほどから同じ言葉を

()り返している。


 これは、防護服の事に()れない

と先へ進まない感じの様だ。


「おおっ、ついに完成したか。

早速(さっそく)その能力(ちから)を見せてくれ」


 とにかく、この状況(じょうきょう)を何とかす

る為、(わら)をもすがる思いで、この

(せん)(りょく)()(めい)な発明に()ける事とした。


「わかった」


 曹洪がそう答えると、左手の手

の平を騎兵たちに向け、横一文字

()(はら)う。


 それは(いっ)(しゅん)出来(でき)(ごと)だった。


 (なぞ)発光(はっこう)が起こった(のち)、騎兵小

前列(ぜんれつ)の馬たちが、前のめりにな

(あし)(くず)されて行った。


 崩壊(ほうかい)していく隊列を前に曹洪が

騎兵たちへ警告(けいこく)する。


「右手はもっと(すご)いぞぉ」


 右手を騎兵たちを向け(おど)す。


 このまま彼をほおっておいたら、

駄目(だめ)な気がする。


「ちょっと待て、やりすぎだぞ」


 俺は曹洪をたしなめた。


「右手はもっと凄いぞぉ」


 駄目だ、またこの流れだ。


 どうやら先ほどの発光は相手を

(おどろ)かせるのが目的だった様で、馬

たちが起き上がると、騎兵たちは

(もと)の様に隊列を組んだ。


「みぃぃぎぃぃてぇぇはぁぁ」


 曹洪は右手を腰の横に引いて、

()めの体勢(たいせい)をとった。


(まい)った参った、降参(こうさん)降参」


 騎兵の中から女性の声が上がる。


 声の主は、隊列から単身(たんしん)で前に

出て、馬から降り礼をした。


「お久しぶりです、(そう)(ほく)部尉(ぶい)


「なぜ俺だとわかる」


 俺は正体を隠す為、緑色の仮面

を着けており、顔が見えていない

はずである。


「わかりますよぉ、だって、その

仮面作ったの私ですから」


 騎兵は(かぶと)を脱ぎ、顔を見せた。


「お前は、(とう)ではないか」


 俺も緑の仮面を外し、元部下と

の再会を(よろこ)んだ。


「どうして、」


「なぜ、こんなところに」


 俺は、桃に今の状況(じょうきょう)を聞かれる

とまずいので、わざと質問をかぶ

せた。


 彼女が耳打ちして答える。


「村から(たい)(りょう)()なくなった農民

たちを探すよう、()(れい)をおおせつ

かったんですよ」


 当たり前の話だが、俺たち豪族(ごうぞく)

(きゅう)(てい)(づと)めの者たち、

ひいては皇帝(こうてい)さまに(いた)るまで、

米やら麦やら穀物(こくもつ)を食べて生きて

いる。


 それらの穀物は農民が作り、そ

れらを(ぜい)として国が集め、俺たち

のような農作業に関わっていない

者へ、(くらい)高低(こうてい)(おう)じて分配(ぶんぱい)され

ているのだが、農作業者が()ると

言う事は、集められる食料が減り、

各部署への分配が(とどこお)って、帝国が

弱体化する遠因(えんいん)となる。


(せん)()(ぞく)にでも連れ()られたので

あろうか」


 漢帝国の民が()(みん)(ぞく)に連れ去ら

れるのはよくある事だ。


「いや、ひどい時には、村から全

員が()(れい)に居なくなってるみたい

ですよ」


「なんと、全員が」


 異民族のしわざであれば、抵抗

(あと)や、数人の生き残りがいるは

ずである。


 一体何が起こっているのだろう。


 すぐに考えられる理由は、納税(のうぜい)

(ほう)()である。


 村の(ゆう)(りょく)(しゃ)は、(じゅ)(きょう)徳目(とくもく)であ

る”孝廉(こうれん)”の(ひょう)()を得る為、農民た

ちに(ほどこ)しの名目(めいもく)で代わりに税を()

(はら)い、徳を天下に(しめ)したうえで(きゅう)

(てい)(つか)えていたのだが、(だく)(りゅう)()

(けん)(りょく)(あらそ)いによって宮廷を追われ

た有力者たちは、()(かん)の道を()

され、それ()(こう)施しを(しぶ)るように

なったという。


 施しを止められた農民たちは、

税をすべて自分たちで支払わなけ

ればなくなったのだ。


 自分たちが作った農作物の(あま)

が税で取られるようになった分、

それによって生きていた人間が食

っていけなくなるのである。


 納税から逃れる為、どこかへ

集団で移動したとすれば、これは

もはや、帝国への静かな反乱(はんらん)だ。


「早く探し出さないと、うちら

(まんま)の食い上げですよ」


 桃が(にん)()の進み()(あい)(なげ)く。


「いや、このままだと、お前たち

どころか、国全体がお飯の食い上

げになるぞ」


 農民たちはどこへ。


「ところで、曹北部尉はこんな所

で何をなされていたのですか」


 桃が不意(ふい)に質問してきた。


「おっ、おう。

俺も()(ゆう)()の民を探しに来た」


 私有地の民は、(そう)()の管理の

もと、農業を行っている。


 農民への施しは、ここでの収穫

から出されていた。


 私有地の民は自由が制限(せいげん)される

が、収穫の余りによって人が増え

ることは無い。


「そうでしたか。

(たが)い大変ですね」


「まっ、まあな」


 私有地の民が逃げたというのは

もちろん(うそ)である。


 何とかこの場をやり過ごした俺

は、(となり)退屈(たいくつ)そうにしている曹洪

を連れて、桃たちと別れた。


 辺りに広がる田園(でんえん)()(たい)


 農耕(のうこう)始祖(しそ)神農(しんのう)が中原に農業

を伝えてから、中原の民は農耕に

よって栄えてきた。


 漢帝国の民のほとんどが農民で

あるが、これらの民が儒教の加護(かご)

から離れ、一気に反乱を起こせば

国が崩壊(ほうかい)してしまうのは、皮肉に

も、この国の建国(けんこく)物語(ものがた)りが(しょう)(めい)

ている。


 そもそもこの国は、農民出身の

"(りゅう)()"によって建国されたのだ。


 それはともかく。


 俺は、人里(ひとざと)がありそうな(しん)()

()けて沛国(はいこく)への帰路(きろ)を急いだ。


 三日くらい歩いた頃に俺は(じゅう)(よう)

な事に気が付いた。


(まい)ったな。道に(まよ)った」


 俺たちは二人とも視界の(せま)

仮面を(かぶ)った状態で移動していた

せいか、いつまでたってもだだっ

広い平原を抜け出せないでいた。


 これはもはや、たちの悪い(めい)()

のようである。


 目印にしていた岩々が、かえっ

て俺たちを(まど)わせているかのよう

だった。


「もう()(まん)できない。(こわ)す」


 曹洪が、右手を光らせて岩を何

個か破壊していった。


 岩の破壊される音が辺りに()

(ひび)いた。


「ちょっとぉ、何やってるんですか」


 その音を聞きつけてか、

頭に黄色の()(きん)()いた男が(げき)()

しながらこちらへ走ってきた。


 次回に続く。

「面白かったらブックマーク、

広告の下にある評価をよろしくお願いします!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ