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爆裂‼三国伝(ラフスケッチ版)  作者: 縦河 影曇
16/27

16.逃亡危機

「俺の左目に封印(ふういん)されし力よ、

今こそ解放(かいほう)(とき)だ」


 ()(こう)家の(げん)(じょう)が左目の眼帯(がんたい)を外し、

(おっ)()()り切る(ため)、馬車の(そう)(じゅう)

全力を(そそ)いでいる。


 眼帯を外したくらいで馬車の速度は

上がらないのだが、両目で見ることに

よって片目の時より()(かい)が広がり、

運転の安全性(あんぜんせい)は上がったであろう。


 (ろう)(しゅう)(よう)された(みょう)(さい)脱獄(だつごく)させに

()かう()(ちゅう)で、なぜか彼を保護(ほご)した

俺たちは、その()(てん)から逃亡者(とうぼうしゃ)

なった。


 追手に顔を見られないよう隠す為、

とっさに仮面を(かぶ)ったが、悪臭を(はな)

その緑の仮面に俺は意識を(うば)われよう

としている。


 意識が朦朧(もうろう)とする中、俺を呼ぶ声が

聞こえた。


孟徳(もうとく)さぁん」


 声の主が俺たちに近づくにつれ、

その声が()(だい)に大きくなってきた。


「あれは、(じん)くんか」


 仁くんは俺の従弟(いとこ)で、彼もまた深い

緑色の仮面を被り、つむじ風のような

速さの白馬を()って、こちらへと

向かっていた。


 助っ人がこちらへ向かっているのは

分かったのだが、一つ問題があった。


 それは、大きな声で俺の(あざな)()んで

いる事である。


 せっかく悪臭を(こら)え仮面を被って

いるのに、これではすべてが(だい)()しだ。


「なっ、名前を」


 俺は悪臭に()えながら、名前を

(さけ)ぶのをやめさせようとした。


「どうした、孟徳」


 ()(きょう)(だい)幼陽(ようよう)が大声で聞き返す。


 こいつは、わざとやっているのか。


 それはともかく、


 俺は手負(てお)いの妙才を一刻(いっこく)も早く

安全な所で手当(てあ)てを受けさせられる

よう、この場を(だっ)する方法を急いで

考えた。


「幼陽、馬車から飛び降りるぞ」


「なるほど、馬車を少しでも軽く

するんだな」


 幼陽は俺の考えをすぐに(さっ)して

くれた様だ。


「飛び降りた後は、仁くんがどちらか

(ひろ)ってくれるだろう」


 そうこう言っている内に、追手と

俺たちが乗る馬車の(きょ)()(ちぢ)まって

いた。


 仁くんに拾われなかった時の事を

考えている余地(よち)は無い。


蒼天(そうてん)さま、ご加護(かご)を」


 そう(さけ)びながら、俺たちは馬車から

飛び降りた。


「孟徳が飛び降りた。(たい)()しろ」


 追手の指揮(しき)(かん)が部下に指示を出す。


「えっ、俺ぇ」


 皆が俺の名を叫ぶので、追われる

(たい)(しょう)が妙才から俺へとすり()わって

しまった様だ。


 俺は自分が追われていると知り、

(じょう)(けん)反射(はんしゃ)的に走り出してしまった。


 だが、それがまずかったようだ。


 後ろから猛追(もうつい)していた仁くんが

拾って行ったのは、幼陽の方だった

のである。


「あっ」


 仁くんの白馬が走り去って行く。


 俺は一人ここへ取り残されて

しまった。


 追手が迫り、俺は捕らえられようと

している。


 そもそも、妙才は俺の代わりとして

牢に入っていてくれたのだ。


 今度は妙才の為に牢へと入ろう。


 俺は、(かく)()を決めた。


 だがその時、幼陽が大声で叫んだ。


曹孟徳(そうもうとく)は俺だ」


 それを聞いた追手たちは、


「曹孟徳があっちへ行ったぞ」


 と、妙才を乗せた馬車と仁くんを

追って行ってしまった。


 幼陽が()(てん)を利かせてくれた

おかげで助かったのである。


 ただあいつは、ご丁寧(ていねい)に曹孟徳と

姓名(せいめい)で言いやがった。


 これでは、どこの孟徳さんか

丸わかりではないか。


「ありがとう幼陽。後で(かなら)ずしばく」


 幼陽をどう成敗(せいばい)するかはさておき。


 俺は、今のうちにこの場から徒歩(とほ)

動く事にした。


 南へ向かって(しばら)く進んで行くと、

遠くの方から地鳴(じな)りが聞こえて来た。


 新たな追手の蹄音(あしおと)である。


 俺が今歩いている(えん)(しゅう)や、俺たち

曹家が(きょ)(かま)える()(しゅう)などの()(いき)

(ちゅう)(げん)(中国)と呼ぶ。


 原の文字が(しめ)す通り、(のう)(ぎょう)(てき)した

平原(へいげん)が広がっており、俺たち漢帝国の

(たみ)は、(じゅ)(きょう)()(そう)とする(しゅう)(おう)(ちょう)の時代、

いや、それ以前から、この地で食料(しょくりょう)

()て国の力として来た。


 まあ、何が言いたいかと言うと、


 (まわ)りに隠れる場所が無いと言う事だ。


 こちらが徒歩に対して、あちらは馬

を使っているので、追いつかれるのに

そう時間はかからなかった。


「あれは、曹孟徳だ」


 指揮(しき)(かん)の声であろうか、俺の名が

聞こえた。


 一難(いちなん)()ってまた一難。


()(かた)がない」


 俺は(つるぎ)(つか)に手をかけた。


 だが、騎士(きし)たちは(ゆみ)(そう)()している。


 護身用の剣(こんなもの)でどこまで抵抗(ていこう)できるか。


 騎士たちが俺との(きょ)()

()めようとした。


 騎士が弓を()()める。


 まさに張り詰めた空気である。


 そんな中、地鳴りが大きくなって

きた。


 ちょっと待て。


 騎士は、ほぼ歩みを(とど)めている。


 先ほどから感じていた地鳴りは

騎士の物では無かったようだ。


 俺は振り返って、地鳴りの(ぬし)

()(きわ)めようとした。


 全身鉄の(かたまり)(まと)った様な()()

のそれは、地鳴りをさせながら

いつの間にか、かなりの距離まで

接近(せっきん)していた。


「あれは、曹洪(そうこう)か」


「曹孟徳」


 騎士の一人が俺の名を叫んだ。


 その叫びを(ふせ)ぐ様に、曹洪が間へ

()って入った。


(じゅう)(けい)防護服第二号(マークツー)が完成した」


 曹洪も顔全体を(おお)う仮面を被って

いたが、その()で立ちは一度曹鼎(そうてい)さまの

()(しき)にて見ていたので、()ぐに彼だと

わかった。


「おおっ、助けに来てくれたのか」


「従兄、防護服第二号が完成した」


 曹洪が先ほどの言葉を(ふく)(しょう)する。


「ところで、仮面をしているのに、

なぜ俺だとわかった」


「従兄、防護服第二号が完成した」


 どうやら曹洪は防護服が完成した

事にしか(きょう)()(しめ)していない様だ。


 この場の全員、被り物によって顔が

隠れているという()(よう)空間(くうかん)で、


 俺たちのやり取りを見て、騎士の

一人がこっそりと笑っていた。


次回に続く。

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