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爆裂‼三国伝(ラフスケッチ版)  作者: 縦河 影曇
15/27

15.妙才救出

 (しゅう)(かん)されている(みょう)(さい)を救い出すため、

俺たち三人は沛国(はいこく)を出て北の(えん)(しゅう)へと

馬車を(しっ)()させた。


 馭者(ぎょしゃ)として()(づな)(にぎ)る者が、俺たちに

語り出す。


族弟(ぞくてい)妙才の(いのち)風前(ふうぜん)(ともしび)

俺の左目がそう言っている」


 沛国にて仲間を集めた際に、唯一快諾(ゆいいつかいだく)

してくれたのがこの男”(げん)(じょう)”であった。


 ()(こう)家の者である彼は、名を”(じゅん)”と

言い、妙才の族兄(ぞくけい)にあたる。


 左目がどうのこうの言っているが、

その左目には、彼お()(せい)眼帯(がんたい)(そう)(ちゃく)

されている(ため)(かく)されている。


 彼の(せん)()は、伝説(でんせつ)の運転手と呼ばれて

おり、彼はその伝説的な(のう)(りょく)を受け

()いでいると思い込んでいるようだ。


 俺たちは、たっての(もう)し出により、

元譲に馬車の手綱を握らせ、その命を

(あず)ける事となった。


「お前なぁ、馬車運転してる時くらい

眼帯取れよぉ」


 幼陽(ようよう)が元譲に軽く()(じょう)()じりの

注意をした。


馬鹿野郎(バッキャロー)、これから牢破(ろうやぶ)りだってぇ

のに、顔を(かく)さんでどうする」


 元譲の言い分はもっともだが、

その髑髏(どくろ)があしらわれた眼帯は、

顔を隠すために着けられているという

(きょう)(がく)の事実を、


 俺は、今知った。


「左目以外まる出しの奴に言われても

なぁ」


 ぼやく幼陽に、元譲が答える。


「俺が読んだ書物(しょもつ)では、怪盗(かいとう)は片目を

隠して正体を見破られ無いのが(そう)()だと

決まっている」


 彼は元々(じゅ)(きょう)()だが、

どのような書物を読んだのであろう。


「元譲の身なりはともかく、俺たちも

顔を隠さねばならんな」


 俺はそう言うと、以前、(ほく)()()(警察

署長)だった(ころ)、部下に造ってもらった

()(めん)()作品(さくひん)を取り出した。


「なんだこりゃ、真っ赤だな」


漢帝国(かんていこく)(とく)(あらわ)す赤色だ」


 仮面と言うより(かぶと)に近いこの(かぶ)り物は、

法の番人である”尉”への(きょう)()(しん)(いん)(しょう)

付ける為に造らせたが、やはり俺自身の

顔が見えた方が良いとの事で、お(くら)入り

になった代物(しろもの)だ。


「お前の分もあるぞ」


 幼陽に俺のと色違いの仮面を渡す。


「なんだ、今度は()(みどり)だな。

(くさ)っ、何だこの(にお)い。臭っ」


「緑の(はっ)(しょく)がなかなか上手(うま)くいかなくて、

色々と()ぜていたらそうなってしまった

そうだ」


 俺がそう言うと、幼陽はとりあえず

一度仮面を(かぶ)ってみた。


無理(むり)っ、鼻がおかしくなる」


 幼陽が(すご)い顔をして緑の仮面を

()()てる。


 脱ぎ捨てられた緑の仮面から

(あく)(しゅう)がただよっていた。


 袋へ入っているときには何も思わな

かったが、一度()(しき)してしまうと

気になってしまうものだ。


孟徳(もうとく)、赤のやつと()えてくれよぉ」


「これは俺が一度被ってるやつだから

駄目(だめ)だ。

俺にそんな(しゅ)()は無い」


 俺が(きょ)()すると、幼陽が執拗(しつよう)懇願(こんがん)

してきた。


「いいじゃねぇかよぉ、俺たち義理(ぎり)

兄弟じゃんかよぉ」


 確かに俺の(よめ)は幼陽の(じつ)姉妹(きょうだい)

あるが、それとこれとは話が別だ。


 幼陽が俺から無理矢理(むりやり)赤色の仮面を

(うば)おうとする。


「だから駄目だって」


「いいじゃねぇかよぉ」


 俺たちが仮面の奪い合いを始めた

ので、馬車が(ゆれ)れた。


「お前ら、静かにしろ」


 元譲が注意する。


 それでも俺たちは奪い合いを止めな

かった。


「換えてくれよぉ」


「こぉとぉわぁるぅ」


 揺れ続ける馬車。


 元譲の(いら)()ちが蓄積(ちくせき)されて行く。


 しばらく奪い合いを続けていると、

手綱を握っている元譲がこちらへと

振り返り、俺たちに大喝一声(だいかついっせい)しよう

とした。


「お前らいい()(げん)にし」


 その時、何かが馬車にぶつかった

音がした。


 元譲は、眼帯によって片目が隠れて

いるので、振り返った時に前方が見えて

いなかったようだ。


「今、人を()いたんじゃないか」


「わき見運転は駄目だってぇ」


「いやいや、お前らのせいだろうが」


 元譲は馬車を止めて、地面に

横たわっている人物に声をかけながら

()った。


「おおい、大丈夫か」


 元譲が人物を抱き起こし、その顔を

見て大声で(さけ)んだ。


「妙才ぃ」


 今しがた馬車で轢いたのは、

俺たちが救出に向かっていた夏侯妙才

その人であった。


「はああっ、妙才。(うそ)だろ」


 俺たちも夏侯家の二人に駆け寄る。


「お前ら、一体どれだけ待たせる

つもりだ。おせえよ」


 妙才が虫の息で俺たちを()(とう)する。


「ええっ、どうやって逃げてきた」


 俺は虫の息の妙才に(たず)ねた。


「仮面の男が現れて、俺を逃がした」


「俺たち以外にも仮面の者がいたのか」


 虫の息の妙才を抱えて、馬車へ歩い

ていると、向こうの方から声がした。


「居たぞ、脱獄(だつごく)(しゅう)だ」


 妙才を探していた(おっ)()がこちらを見て

声を上げた。


 北部尉の(ころ)だったら、()めてやりたい

働きぶりだ。


「とりあえず逃げるぞ」


 虫の息の妙才を馬車へ(ほう)()んで、

「はいやっ」と元譲が馬車を走らせる。


 俺は顔を追手に見られないよう

隠さねばと仮面を探したが、そこには

緑色の仮面しか残っていなかった。


「悪いな、孟徳」


 赤の仮面をすでに装着した幼陽が

目の前にいた。


「なっ、幼陽」


 仕方なく緑色の仮面を被る。


「うぐっ、何だこの悪臭は。

気が遠くなる」


 元譲は自分に受け継がれた伝説の力を

信じ、(ばん)()(馬車を引く馬)の力を最大限

に引き出そうとした。


「俺の左目よ、今こそその力を

開放する時だぁ」


 元譲が左目の眼帯を外した。


 だが、人を四人乗せた馬車がそんなに

()(ごう)よく速くなることは無い。


「あちらは(けい)()、こちらが圧倒的(あっとうてき)

不利(ふり)だ」


 俺は仮面の悪臭によって遠のいていく

()(しき)の中、この状況(じょうきょう)打破(だは)する作戦を

急いで考えた。


「駄目だ、()(こう)が集中できん」


 絶体絶命(ぜったいぜつめい)危機(きき)


 その時。


「孟徳さぁん」


 遠くの方から、俺を呼ぶ声がした。


次回に続く。

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