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爆裂‼三国伝(ラフスケッチ版)  作者: 縦河 影曇
13/27

13. 騎士親子

 皇后(こうごう)(はい)()のあおりを受けて、()(ろう)

(やく)(しょく)から()(めん)されてしまった俺は、

すぐさま(みやこ)雒陽(らくよう)を飛び出し、(そう)()

本拠(ほんきょ)()である沛国(はいこく)へ馬を走らせる事に

した。


 かつて、俺の身代(みが)わりとなって(ろう)

入った(みょう)(さい)脱獄(だつごく)させる(ため)には仲間が

必要だ。


 俺は、眷属(けんぞく)の力を(たよ)る事にした。


幼陽(ようよう)、少し()り道をするぞ」


「おやっさんの所だな」


「その通りだ」


 義理(ぎり)の兄弟である(てい)幼陽は

俺の考えを、すぐに(さっ)した様で、

馬車の行き先を少し北へ向けると、

それに(したが)って()(しゅ)(めぐ)らせた。


 おやっさんは名を(そう)()と言い、

父親の(じゅう)(てい)(いとこ)で、(ちょう)(すい)(こう)()

して()(がん)(ぞく)(とも)に青空の(もと)()らし、

彼らと(とも)に都を(まも)っていた。


 元々(もともと)自然に接するのが好きな人

だったので、連座して長水校尉を罷免

された後も、黄河の(ほとり)に未だ滞在(たいざい)して

いると俺は()(そう)している。


 ちなみに長水とは、かつて(ちょう)(あん)

都だった頃、その(きん)(かわ)()(ちゅう)(とん)

都を防衛(ぼうえい)した(きょう)()族の事を(ちょう)(すい)()

呼んだそうだが、その()(しょう)今日(こんにち)

そのまま使われている。


 (こう)()を東へ沿()って馬を駆って行くと、

恰幅(かっぷく)の良い男が、誰かと話している

ようだった。


飛蝗(バッタ)はねぇ、食べれるんですよ」


 と言うと、男は草むらに()んでいた

飛蝗を手で捕まえて、はっはっはと

笑いながら自分の口に(ほう)()んだ。


 ばりっばりっと、(から)(はね)を噛み砕く

音が聞こえる。


「おやっさん。やはり(こち)()にいらっ

しゃったのですね」


 恰幅の良い男は俺の方へ振り返り、

優しい目で(こた)えた。


「やばっ(やあっ)、ぼうとぐ(孟徳(もうとく))君。

びざじぶり(久しぶり)」


 飛蝗を食べながら話しているので

何を言っているか聞き取り(にく)かったが、

大体の意味はわかった。


「ほらっ、(じん)挨拶(あいさつ)して」


「どうも」


少年が、小さな声でボソリと挨拶した。


「仁、今日も元気がないなぁ。

飛蝗(ご飯)が足りないのかなぁ」


「父上、腹はすいておりません」


 仁と呼ばれた少年が顔を引きつらせ

(うしろ)へと下がった。


「仁も十歳(トオッッッ)になる。乗馬の技術(うで)は確か

なんだが、()(かん)せんあのように覇気(はき)

少々(しょうしょう)()りんのだよ」


 父上の仕事に付いてきた仁君は飛蝗

を散々と食べさせられたのだろうか、

覇気と言うか、かなりげんなりした

様子だった。


 そんな事よりも、俺はおやっさんに

脱獄の()(せい)をお願いする為に来たのだ。


「曹家が政界(せいかい)より追放(ついほう)された今、我が

義弟(おとうと)である妙才の命が危険に(さら)されて

います。

 義弟の自由を取り戻す為、是非(ぜひ)とも、

おやっさんのお力をお貸し願いたい」


 そう言い終わると、ぎゅいぃぃぃん

と言う風の音が()り、おやっさんの顔に

大きな傷跡(きずあと)が表れた。


「それはならん」


 今まで(おん)()な表情をしていた

おやっさんの顔が、一瞬で怒りの表情

へと変身した。


「お願いします。一緒に妙才の自由の

為に戦って下さい」


 俺がそう言いながらおやっさんに

(ひざます)いて(すが)ると、右腕を風を起こす勢い

で回転させ、()(はら)われてしまった。


「ならん。我々は(そう)()の謀反の(うた)いに

より罷免された身。一族の潔白(けっぱく)(しょう)(めい)

されるまでは、お(かみ)(さか)らってはならん」


 おやっさんはそう言うと、身体を

ひらいて右(なな)め上にかざされた右手と

左手を入れ()え、思いを()(まん)するように

握りしめられた右(こぶし)(こし)の横に()えて

(きょ)()姿()(せい)をとった。


 後ろで聞いていた仁君は悲しみを(こら)え、

(うつむ)いて(ふる)えていた。


 仕方がないので、俺はこの場を去る

事にした。


 少し馬車を走らせた所で、一騎の

騎馬が俺たちに近づいてきた。


「孟徳、あれは仁君だ」


 幼陽(ようよう)が馬首を返して言った。


 仁君の()る馬が、つむじ風のような

速さで駆け、俺たちに追いついた。


族兄(おにいさん)、ごめんなさい。

実は最近、我が()に弟が産まれたのです」


 仁君が静かに語った。


「人一倍正義感の強い父上の事、加勢

したい気持ちは山々だと思うのですが、

今は産まれてきた子の為、感情を押さえ

(おおやけ)(したが)っています。

何卒(なにとぞ)、父上の気持ちも分かってあげて

下さい」


「そうだったのか。子は国の宝、

しっかりと愛育(あいいく)されるよう(つた)えられよ」


 俺がそう激励の言葉をかけると

仁君は(こうべ)をたれて


「すみません」


 と答えた。


「そこは謝罪(しゃざい)じゃない、感謝(かんしゃ)だ」


 俺はそう言い残すとその場を

立ち去った。


「ありがとう」


 彼の口が小さな声でつぶやいたか

のように見えた。


「おやっさんが駄目なのは痛かったなぁ」


 宿(やど)()りた(みん)()で幼陽がぼやく。


「まあまあそう言うな。

(おさな)()(ほう)()すると、王吉(おうきつ)処罰(しょぱつ)されるぞ」


 俺のことを孝廉(こうれん)()げ、(かん)(りょう)(こう)()

して推薦(すいせん)してくれたのは王吉だ。


 俺は"吉利"と言う別名を名乗って、

王"吉"を利する者を自称していた。


 しかし実は、今回の宋皇后廃位に

王吉の(よう)()である(おう)()が関わって

いたのだ。


 ()(りょう)王侯(おうこう)であった渤海王(ぼっかいおう)を王甫が

()(まつ)したのが事の発端(ほったん)で、渤海王の

妻が宋家出身だったが為に、回り回って

災難(さいなん)が俺達にも()りかかった。


 王甫どのの(さば)きは何も間違っていない。


ただ、小さな反抗(はんこう)として俺は吉利と

名乗るのをやめたのだが、幼陽との

会話で、つい王吉の名前が出てしまった。


「明日は曹洪(そうこう)の所へ向かうぞ」


「ああ、あの(りん)(しょく)()(ケチ野郎)か。

役に立つのかなぁ」


 幼陽は曹洪の選任(せんにん)に対して

(なん)(しょく)(しめ)した。


(ただ)(さい)だけがあれば良い」


 俺は、(おのれ)の言葉に()(しん)を持たせる為、

幼陽に笑って見せた。


次回に続く。

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