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爆裂‼三国伝(ラフスケッチ版)  作者: 縦河 影曇
12/27

12.沛国曹家

「てめえ、引っ張んじゃねえ」


 (とん)(きゅう)県令(けんれい)になっても

俺の()(せい)(にく)む心は変わらなかった。


 今日も一人、(ろう)()連行(れんこう)されて行く。


 そういえば、雒陽(らくよう)(ほく)部尉(ぶい)だった(ころ)

俺の(つま)が子を産んだ。


 俺には二人の妻がいる。


 一人は、正妻(せいさい)(てい)()(じん)だ。


 彼女にはれっきとした名前があるが、

()ずかしいので、堅苦(かたくる)しいがあえて丁夫人と

言わせてもらう。


 ・・・。


 もともと沛国の農民(のうみん)の出である(そう)()は、

皇帝(こうてい)さまの(もと)で大出世した祖父(そふ)のおかげで

(きゅう)殿(でん)での(えい)(きょう)(りょく)は大きかったのだが、

地元である沛国では(まった)く顔が()かなかった。


 だから、曹家は地元の名門である(てい)()

婚姻関係(こんいんかんけい)(むす)び、沛国での影響力を高めた。


 ちなみに俺の父親も丁氏から妻を

(めと)り、その(つな)がりを強めている。


 そしてもう一人の妻が、側室(そくしつ)(りゅう)夫人だ。


 沛国の劉氏もなかなかの名門で、一族(いちぞく)

(りゅう)元穎(げんえい)博識(はくしき)で有名である。


 子を産んだのは、劉夫人の方だった。


 ちなみに、先ほどしょっ引かれて西側の

牢屋へ連れていかれた男は、劉夫人の

妹の夫で、名は(えん)(あざな)(みょう)(さい)という。


 彼もまた沛国の名門、()(こう)家の者で、

俺の義理(ぎり)の弟にあたる。


 (ほう)(きび)しく守る以上、自らも

厳しく身を正さなければならない。


 しかし、俺を(おとしい)れようとする輩によって

(さい)()()(てき)され、俺は罪を着せられた。


 木乃伊(みいら)取りが木乃伊になったのだ。


 その時、一番早く行動したのは

妙才だった。


 俺が(たい)()される(うわさ)を聞きつけた妙才は、

先日、俺の()(しつ)へ真っ先に()()んで来た。


孟徳(もうとく)()が国の()(ぼう)の星、

俺が身代わりとして(ばつ)を受けよう」


 この男、悪く言えば後先考えずに

行動してしまうところがあるが、

思い切りが良い豪傑(ごうけつ)とも言える。


「すまんな妙才よ、こういう(しょう)(ぶん)なので

俺を排除(はいじょ)しようとする(やから)が多いのだ」


「気にするな。義姉(ねえ)さん(劉氏)が

産んだ(わっぱ)の為、俺がいくらでも()(めい)を着て

やるよ」


 私室にあった高価な酒を(さかづき)に注ぎ、

両手で(かか)げて妙才に手渡しながら、

西の牢へ連れて行かれる事になった彼に、

俺は精一杯(せいいっぱい)(じょう)(だん)(おく)った。


「お前を征西(せいせい)(しょう)(ぐん)任命(にんめい)する」


(つつし)んで拝命(はいめい)いたす。」


 ガハハと豪快(ごうかい)に笑いながら

杯を受け取り、妙才が酒を(いっ)()

飲み()す。


 沛国豪族(ごうぞく)結束(けっそく)(かた)い。


 まあ、問題があるとしたら、俺が

妻に対して(じょう)()かない事くらいだ。


 家柄(いえがら)だけで結ばれている()(おと)の関係。


 情が湧かないのは、妻の(ほう)とて同じ事。


 丁夫人なんぞ、俺の事などそっちのけで

劉夫人が産んだ子供に()(しゅう)(しん)のようだ。


 ところで、


 祖父の影響力も(さる)(こと)ながら、沛国

曹家はさらに強い婚姻関係を(ゆう)していた。


 それは、皇帝さまとの縁戚(えんせき)である。


 今の皇后(こうごう)さまである宋后(そうこう)は、(きゅう)()(ちょう)(あん)

の周辺にある(さん)()と呼ばれる()(いき)の名門、

宋家の出身で、そこには俺の(じゅう)(まい)(いとこ)

(とつ)いでいた。


「曹操、よくぞ来た。()(こう)活躍(かつやく)

聞いておるぞ」


 ある日、俺は皇帝さまに

()し出された。


()が国は、先の敗戦(はいせん)

多くの人材(じんざい)を失ってしまった。

もう家柄(いえがら)()(こう)などと言っておられん。

(ちん)才能(さいのう)のみを(じゅう)()し、

賢者(けんじゃ)(こう)()(もん)()に集め、

国を(ささ)える(はしら)とする事にした」


 前年、我が漢帝国(かんていこく)騎馬(きば)民族(みんぞく)(ふく)

大軍団を()(しき)し、『(はっ)(ぴゃく)八屍(やし)(しょう)

(だん)(じゃく)()(ひき)いる(せん)()(ぞく)大攻勢(だいこうせい)

仕掛(しか)けたが、散々(さんざん)に返り討ちに()って

しまい、()(ちょう)な騎士や馬が大量に失われた。


 ほら、言わんこっちゃない。


 俺を連れて行かんからだ。


 今や、我が国の国防力は紙に等しく、

北方は鮮卑族の侵攻(しんこう)(さら)されいる(じょう)(たい)である。


 皇帝さまは我が国の危機(きき)打破(だは)する為、

俺たちを招集(しょうしゅう)したようだった。


「曹操よ、貴公は(しょ)兵法(へいほう)(つう)ずると聞く。

()(ろう)として朕にその知恵を貸してくれたもれ」


 俺は皇帝さまが何を言っているのか、

(いっ)(しゅん)、理解が出来なかった。


 もしかして、これって()民族対策(みんぞくたいさく)

()()(けん)して良いって事なのか。


「つっ、(つつし)んだ、で、お受けいたしませう」


 異民族と戦って名を上げるという、俺の夢を

(かな)える機会が突然やってきたのだ。


「わっはっは、よろしく頼む、でおじゃる」


 皇帝さまが期待のまなざしで俺を

見ながら、(こう)()高笑(たかわら)いした。


 俺は早速、先の敗戦の研究をした。


 そもそも騎馬民族は集団で移動して生活

している為、攻めるべき拠点(きょてん)を持たない。


 聞いた話によると、漢帝国の大軍団は、

敵地二千()里深くへ侵攻し、鮮卑族に迎え

撃たれたそうだ。


 二千余里と言っているが、正確な距離では

なく、もの(すご)く”遠く”と言う事だな。


 戦上手とは、己の有利な地形に(さそ)

込んで戦うものだ。


 軍団の指揮官は(こう)(あせ)っていたのだろうか、

敵に誘い込まれて討たれたのだ。


 俺はこれらを()まえて、鮮卑族に報復(ほうふく)

するための作戦を()った。


 月日が過ぎて、


 作戦立案(りつあん)(おお)()めを(むか)え、

皇帝さまへの(じょう)(そう)を準備していた()(さき)

俺の所へ(しょう)書台(しょだい)からの(しょ)(かん)が届いた。


 書簡には、こう書かれていた。


「曹操、議郎の職より()(めん)する」


 俺は自分の身に何が起きたのか、

(いっ)(しゅん)、理解が出来なかった。


 その時、丁夫人の兄の丁幼陽(ようよう)が来て

俺に告げた。


「大変だ。宋皇后が()(ほん)の罪で(はい)()されて、

一族が処刑(しょけい)されたそうだ」


 この時ばかりは、皇帝さまへの

縁戚が裏目に出てしまった。


 宋家に婚姻関係がある俺は、一族に

(れん)()して罷免されてしまったのだ。


 妙才の事が俺の(のう)()をよぎった。


 このままでは牢に(つな)がれたままの

妙才がどうなるかわからない。


 俺は幼陽を(とも)に、沛国へ妙才救出の

仲間を集めに行くことにした。


次回に続く。

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