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爆裂‼三国伝(ラフスケッチ版)  作者: 縦河 影曇
11/27

11.五彩必殺

 俺には()と呼べる存在(そんざい)がいる。


 一人は(きょう)(こう)()さまだ。


 話せば長くなるが、昔、俺の祖父(そふ)

曹騰(そうとう)への裏金(うらがね)摘発(てきはつ)した(ちゅう)景伯(けいはく)という

(いのち)()らずがいた。


 まあ、(けん)(りょく)(しゃ)に金が集まるのは

よくあることだな。


 その事件は、その時の皇帝の()()(こう)

よって(やみ)(ほうむ)られたそうだが、

俺の祖父は种景伯に()(かえ)しをするどころか、


 その(おとこ)(いき)感動(かんどう)して、

すっかり彼の(とりこ)になってしまった。


 権力者である祖父に「(のう)()」であるとして

()された种景伯は、みるみるうちに(しゅっ)()

していったそうだ。


 ちなみに、北方(ほっぽう)騎馬(きば)民族(みんぞく)との戦いで名を

上げた「涼州三明」の(ちょう)(かん)や、(えい)(せん)(ぐん)(はか)()

堂谿典(どうけいてん)なども祖父の推しで、彼らもまた、

それぞれの場所でその(たぐい)(まれ)なる(さい)

()るっている。


 祖父の推しを発掘(はっくつ)する目は

とても(すぐ)れていたようだ。


 そういえば、堂谿典ら博士たちが何かを

建造中らしい。


 おっと、話がそれてしまったな。


 で、その种景伯に目をかけられたのが

橋公租さまで、


 橋公租さまもまた、権力を(おそ)れず、

()反者(はんしゃ)(たち)を次々と処罰(しょばつ)していった。


 (おさな)いころから俺は、橋公租さまの家に

出入りをして、よく経書(けいしょ)の話をしてもらって

いたもんだ。


 (はばか)りながら、俺からも経書の話をするように

なったころ、橋公租さまの(すす)めで人物鑑定(じんぶつかんてい)

受けた。


 その時に付けてもらった(ひょう)()が、

()(せい)能臣(のうしん)(らん)()奸雄(かんゆう)」だ。


 そして、もう一人の師はその評価を聞きつけ、

俺を(おう)(きゅう)推薦(すいせん)した王吉おうきつである。


 王吉は、俺の(しゅっ)(しん)である沛国(はいこく)(しょう)(しゅ)(しょう))で、

俺と歳があまり変わらない二十代だそうだが、

彼もまた()(せい)(にく)み、(さば)いた不正の数は

すでに1万件を超える勢いだそうだ。


産んだ子を育てない親に対しては特に(きび)しく、

そいつらには(そく)(きょっ)(けい)を言い渡し処罰(しょばつ)する。


 悪人(あくにん)(のぞ)き、ふさわしい人物がその(やく)(しょく)()く。


 子を育て生産力を上げ、国を()ませる。


 彼らは(みな)行動が()にかなっていて、

春秋(しゅんじゅう)」の()(さん)の言葉である、

政治の(かん)(やさしい)(もう)(きびしい)の

猛の部分を実践(じっせん)しているかのようだ。


 そもそも春秋とは、時代の悪を()(ろく)することで

乱臣(らんしん)(ぞく)()(国を乱す臣と親にそむく子)に永久(えいきゅう)

(ばつ)を与える為、(こう)()さまが残された物だ。


 ところで俺は今、夜の(みやこ)(じゅん)(かい)している。


 北の天に(かがや)く五つ星は、

()(しょう)(たい)を見守るかの(ごと)くであった。


 部下の(とう)が俺に()げた。


(そう)(ほく)部尉(ぶい)、門を開けようとしている者がいます」


 今まさに、中の者の手引(てび)きで都の門が開けられ

ようとしている。


 この国では、夜に都から出歩くのは禁止されて

いる。


「どこかの()(ほう)悠々(ゆうゆう)と帰って来たな」


 俺たちは門が開き切るのを待った。


 門が半分ほど開いたくらいで、一台の馬車が

門内(もんない)()け込んだ。


 二人の師を(なら)うが(ごと)く、俺も

猛政(もうせい)実践者(じっせんしゃ)とならねばならない。


「いぐぞ、現行犯(げんこうはん)(たい)()だ」


 ドスを聞かせた俺の号令で、

数人が馬車を取り(かこ)む。


 その囲みから(とっ)()(こう)を開こうと、

()(した)であろう者たちが出て来て(おそ)()かった。


 桃が(うわ)()(ふところ)に手を突っ込んで、

小さな茶壷(ちゃつぼ)を取り出す。


「いいわね、いくわよ」


 彼女はそう叫ぶと、襲い掛かる手下たちに

無数の茶壷を投げつけた。


 茶壷は手下たちの頭に命中した、

おそらく彼らは()蓋骨(がいこつ)()れたであろう。


 手下たちは卒倒(そっとう)した。


 小隊の中で一番(ほそ)()(せい)にも容赦(ようしゃ)なく

手下どもが襲い掛かる。


「おいでなすったな」


 青はニヤッと笑いその白い歯を見せると、

つばの広い(ぼう)()をポイっと()()て、

手に持った弦楽(げんがっ)()の弦を「キリキリキリ」と

外した。


 次の(しゅん)(かん)、外した弦を「バィィィン」と投げ捨て、


 楽器を振り回し手下どもに殴り掛かった。


 彼らはその(あぶ)なさに(きも)()やした。


 青はさらに、弦楽器にまたがり、それに火を付け

()(しき)のような事を始めだした。


 手下の中で、誰も思いきって青に

近づこうとする者はいなかった。


 黄にも手下たちが襲い掛かる。


「丸のときはしましま、切ったら

まっかっかな食べ物な~んだ」


 (こう)は敵になぞかけを始めた。


 手下たちが、いきなり出された()

答えられずにいると、


全員(ぜんいん)()()(とう)」と黄は

敵に時間切れを()げた。


 すると、どこからともなくがに(また)で、

上半身には衣服を身に着けず、短い()(ズボン)

のみを身に着けた南蛮人(なんばんじん)が現れた。


 南蛮人は黄に襲い掛かった手下どもの(しり)に、

そのがに股から()り出される強力な回し()りを

一人ずつ浴びせていった。


 もんどり(かえ)す彼らの()てい(こつ)は、おそらく

(くだ)かれたであろう。


 俺たちは、俺(ふく)めて五人で見廻りをしていた。


 最後の一人は、長髪で一番若い。


 (ウォン)の出番だ。


 いつも、にこにこと笑顔の彼は、ひょうたんに

酒を入れて携帯(けいたい)しており、その酒の力で強くなる

という変わった拳法(けんぽう)の使い手だ。


 大きな(かめ)を持つ()(ぐさ)から、横笛(よこぶえ)をもつ仕草、

片足から()り出される連続(れんぞく)()りで、敵を次々と

倒していく。


 ただ、そんな彼にも弱点があった。


 この世で最強の生き物は、そう「女性(じょせい)」である。


 女性の仕草が()(しゅう)(とく)なのである。


 俺たちが乱闘(らんとう)(さわ)ぎをしていると、


「お主ら何者じゃ」と、


 馬車の中から、いかにも(こう)()そうな人物が

顔を出し碩た。


(わし)(だれ)だと(こころ)()る、

(しょう)黄門(こうもん)(えらい人)蹇碩(けんせき)の父上の兄弟の嫁の

親戚の母親の兄弟の子供なるぞ」


 さすがに(えら)い人の名前が出ると、桃たちの

動きが(にぶ)くなった。


「おぬしら、蹇碩の親族(しんぞく)(さか)らうと言う事は、

蹇碩に逆らうも同然、蹇碩の報復(ほうふく)が蹇碩より

下されるであろう」


「ぐはあっっっ」


 蹇碩の名前が出るたびに桃たちが

苦しんでいる。


「蹇碩蹇碩やかましい(やつ)だ、

お前は蹇碩仮面か」


 俺は桃に目くばせをして、号令した。


「桃っ、()(さい)ボー磔権(はりつけん)だ」


 桃が、一回転(いっかいてん)して俺の指示で用意していた

五彩のボーを出した。


「五彩ボー磔権、といやっ。黄」


 ボーを黄へと投げる。


「まかしときんしゃい。といやっ」


 黄が頭で、ボーを黄へ受け渡す。


「青、といやっ」


 黄から青へボーが渡ると、

青がボーを地面に突き刺した。


「赤っ、crowding(クラウディング) try(トライ)だっ」


 俺はボーを親玉へ思い切り蹴とばした。


「どいやっっっ」


 するとどこからともなく、

高貴そうな人物が(あらわれ)れた。


「我が名は、小黄門蹇碩であるぞ」


「うっ、あなた様は蹇碩さま」


 敵の親玉が(いっ)(しゅん)(ひる)んだようだ。


「ええい、本物がこんな所にいる(わけ)がない」


 親玉が蹇碩さまに襲いかかった。


「おぬしのようなものは、知らん」


 蹇碩さまは相手の攻撃をしなやかにかわし、

反撃(はんげき)(ひじ)()ちを()らわせる。


「あれは、女性の仕草だ」


 拳法使いの黄が反応して言った。


 蹇碩さまの女性の仕草は完璧(かんぺき)で、

その場に本物の女性がいるかのようだ。


 親玉は蹇碩さまによって(かん)()なきまでに

(たた)きのめされた。


 こうして夜間外出禁止の法を犯した者たちは

俺たちによって(さば)かれたのであった。


 後日、蹇碩さまから俺の話を聞いた

皇帝(こうてい)さまは「曹操が五人組でそのような

面白いことをしておるのか」と、手を叩いて

(よろこ)んだという。


 そのおかげか、俺は(れい)として(とん)(きゅう)(けん)という

ところへと栄転(えいてん)となった。


次回に続く。

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