Note1 始まりのお話
今日本の中には四大名高と呼ばれる学校がある。
日本国内の数ある高校の中でも最難関、入学方法が何よりも難しいと評判高いエリート中のエリートが集まる高校だと言われている。
入学方法も謎、誰がどうやってこの学校に入るのを決めるのかも謎、ブラックボックス中のブラックボックス。それがこの四大名高だ。
そもそもそんなトップオブトップの高校が四大と言うのも不思議な話だが、この起源的なものは、かの有名な中国にまつわる四聖獣から来ているとされている。
まさにその名の通りと言わんばかりに、各高校にはそれぞれ四獣の名を冠する高校名となっている。
東の龍前高校、西の虎白高校、南の朱雀門高校、そして北の武玄高校だ。
そのままのネーミングじゃないあたり、やはり諸説ありそうだが、うまい具合に四つの高校に四つの名前というあたり違うとは言い切れない。
そして、この四つの高校のどれかから卒業するだけでも将来が約束されたと言っても過言じゃないくらいには各高校の卒業生は各世界において世を席巻しているメンバーを排出している。
一人は日本国内でいちばんの通信業界の社長。一人は、服飾関係において今もなおリーズナブルで質の良い商品を提供している大手ブランド社長。一人は、日本国内の電気メーカーの社長。
挙げればきりがないが日本の長者番付のトップをひた走る彼らのおおよそがその四名高のどれかを卒業しているとのことだ。
じゃあ、その四つの高校の違いは何なのかといえば、単に場所なだけで取立てた違いはない。それは学校のホームページにも記載されている内容だった。
所謂、小中学校のでいうところの学区に近いものだ。
そして、俺はというと……。
いま、まさにその四大名高が一つ、北の武玄高校へのチケットを手に入れた。
——————なんてこった。
知力も学力も運動能力もどれもがおおよそ平均値であろう俺は、なぜか、この名高の門戸を潜ることとなってしまった。
本当に、俺の身になにが起こってしまったのだろうか……。
それを知るには、もう少し過去に遡って俺の過去を話す必要があるだろう。
俺を一言、いや二文字で語るとしても"平凡"という言葉がよく似合う人間であることは自身でもよく理解をしている。
並はずれた才能はなく、どれをやってもそれなりにできるがそれ以上には決してなれない。友人とのコミュニケーションも、普通の一言で特別会話に難があるわけでもない。
だからといってクラスの中心に立てるほどのカリスマ性もない。
周りから見た評価もあいつとはよく話はするけども、一番に悩みを打ち明ける存在というわけでもない。だけど何かあったら話を、なにもなくても話はしていると言ったような友人Aといったポジションだ。
じゃあ、モテますかと聞かれてもそこもまた平凡、別に彼女がいたことはないですと言うわけではないが、色々な女子と交際経験を持っていますというわけでもなく。今でも俺はモテ期というものが今後来ることを祈っている善良な一般市民である。
と、ここまで語っただけで自分の物足りなさみたいな部分を思い知らされるわけだが、自身の振り返りということでここは乗り切ろうじゃないか。
そんな俺がこの天下の四名高に入るきっかけは何だったのかは多くは語れない。というより、わからないというのが答えだ。
思い当たる節といえば過去に八回受けた共通テストくらいしかない。なので真実は闇の中だが、それでも噂話程度で聞いたところによると四大名高は各テストの結果をもとに入学者を選定しているのではないかという話。
ただ、これだけならばうちのクラスでも高得点のものはいたし、何ともいえない。
だから本当にわからない。
だけど今、真実として語れるのは俺という人間は、志願もしていないこの四大名高(そもそも志願できるものなのかもわからないが)から名指しで合格通知が届いたことは紛れもない事実。
面白い。素直にそう思った。
上昇志向なんてなかった俺だが、別に野心がないわけではない。
だからこそ俺は二つ返事で入学しますと、そう答えたのだ。
それこそが、全ての始まりだった。
初めましての方は初めまして、知っている方はお久しぶりです。
音の葉奏ともうします。
本作は自身の中でも初挑戦とも呼べる作品形式です。
普段は純粋なラブコメ作品というスタンスで描いておりましたが、思いつきから挑戦していきたいと考えております。
是非とも応援の声をいただけたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。