#33-ホーグラウス姉妹戦線-
久々の投稿ですが、とんでもない事になりました
アリス・ホーグラウス。あのシャロンの異母妹で正妃アイリーン・ホーグラウスの娘。そんな彼女が夜に尻を超える程長いカーディガン姿で現れた。おそらく敢えて着崩して中の服を見せているのかもしれない。シャロンの妹ということもあってそこそこ大きい胸を持つがそれだけだ。むしろ少しエロさを醸し出したメスガキという感じだ。
「もしかして夜這い……なわけないよな」
「あら、よくわかったわね」
俺は思わず頭を抱える。
いや、王族というのもあってか確かに彼女は可愛い。それに関しては俺は絶対に嘘を吐かない。俺も虐めがいがあると思った事は否定しない。だが俺の今の相手はあくまでシャロンでこの子の姉だ。
部屋に招き入れるべきか? もしこのまま部屋に入れなければ彼女に魅力がないと騒がれるのではないだろうか。そう考えた俺はとりあえず部屋に入れる事にした。
「部屋、小さいわね」
入ってすぐの言葉がそれだった。普通はここで一発しばくところだろう。わからせというジャンル開拓も必要なのかもしれない。
「安心しろ。ベッドをもう一つ置けるくらいの広さはある」
そう言って俺はベッドを出した。
「……はい?」
「君の評価を加味した結果だ。ここで追い返して君に魅力がないと吹聴されて逆恨みされても困るからな。ただでさえ面倒なのがお前の兄だろう。手を出すのはどうかと思ってな」
「……ざけんな」
「え?」
「ふざけるな!!」
急にキレた。喜怒哀楽が激しいな。
「私はこれでも覚悟を決めてここに来ているの! それを何? 私の評価を理由にして適当に迎え入れるなんて良い神経しているじゃない!」
「悪いが俺はお前の親父さんの考えと違ってシャロン以外の嫁を迎え入れるつもりは無いさ」
「でもシャロン姉様はそのつもりよね?」
「みたいだな。シャロンだけでも手いっぱいなんだけど」
俺の場合は両親とフェルマン兄さんがそうだったこともあり、2人目3人目という考えは無かった。それはそれとしてこの子、結構口が悪いな。まぁでもその方が良いなぁ。可愛いし。
「何だろう。今この男殺しても良いんじゃないかって思った」
「怖いなオイ。もっとも俺は君に殺されるほど柔な鍛え方はしていないけどな」
何せ今では大抵の刃が折れてしまう頑丈さ。人間かすら怪しくなったこの頃である。
「そうだ。私、あなたに飲んでもらいたい飲み物を持ってきたのよ。よろしければ飲んでくださる?」
急に口調が変わった。もしかしたら毒でも入っているものを持ってきたのだろうか。これでも俺、毒耐性高いのよ。なんだったら今では毒系を調味料にして食べたりするのよ?
なんて思いながら、背中を向けて準備する彼女を観察する。その準備が終わったのか注いでもらったカップに入っている飲み物を飲む。あ、これはもしかしてチョコレートだろうか? そういえばこの世界ってチョコレートあるんだよな。しかも砂糖で甘くしているやつ。
すると急に身体が熱くなってきた。なんというか、ムラムラしてきた感じの。
「どうかしら?」
「ああ、おいしいよ」
「じゃあどんどん飲んでね」
そう言ってさらに飲ませようとしてくる。
「わかった。じゃあ、最後にこの一杯だけ。夜も遅いしね」
そういえば前世だと、チョコレートの食べ過ぎでよく鼻血出たなぁ。確かアレって発情促進の効果もあったんだっけ。
なんて思っていると急に視界が悪くなる。どういうことかと思っているとフラフラして倒れた。
「大丈夫?」
「……何か仕込んだ?」
「ええ、そうよ。このチョコレートにはある効果が入っているのよ」
「…………でもこれチョコレートだけじゃない。もしかして砂糖はむりくり他の味を消す為に入れたのか」
なるほど。だから俺の知っているチョコレートなのか。巡り巡って偶然の産物か。
「あなたのお母様があなたを落とす為に協力してくれたわ」
「……そうか」
あのクソババァ。今度会ったら飛び蹴り放ってやるわ。そして最悪な事に目の前には美少女がいる。
「さぁ、来なさい。私もあなたを受け入れてあげる」
「……」
確かにそれも良いかもしれない。何故か知らないけど王女が俺に対してとんでもないアピールをしているんだ。それにシャロンだって受け入れてくれるだろう。
でも俺はどうしてか、こうしている事に凄い罪悪感を抱く事になる。なんというか手を出したら一生後悔する感じの。
「そういえば君って今年何歳だっけ」
「突然どうしたのよ」
「良いから答えて」
「今年十四よ。何か問題でもあるかしら?」
大有りじゃねえか。今時十四歳で子どもを作るとか正気じゃない。いや、俺の感覚が前世に引っ張られているのかもしれないけど一般的じゃないのは確かだ。だがそれでも俺のもう一つの思考が興奮し始めている。そう、前世で言うと彼女はリアル女子中学生である。下手すりゃヤバい年齢でもある。そして俺は十五歳。新進気鋭の大公です。好き勝手に魔改造して生きる事を決意しました。
「じゃねえよ!」
「突然……どうしたの?」
ふと、アリスちゃんを見ると彼女も飲んでいるのか顔を赤くしている。おそらく彼女も俺に抱かれるために口に含んでしまったのあろうか。どうしよう。リアルじゃないけど中学生相当な上に経験しえなかった事に興奮を隠せないのも確かだ。というかあまりにもメスガキ過ぎて俺の中では彼女は首輪をして連れ回したいという腐った思考を持っているのだ。よくよく考えればカリンちゃんですら推している俺の事だからそんな飛んでも思考になるのはある意味自然の摂理だったのかもしれない。
というか俺の前世、中学時代は悲しいことに友だちとゲームしていてまともな恋愛した事が無いんだけど! もう少し頑張って前世の俺! いや、ダメだ。とっくに死んでる!
「……やっぱり、シャロン姉様の方が良い?」
「…………」
もしかしてこれはシャロンを取り戻して姉妹丼を堪能するべきなのでは? そして二人に首輪とリードをして孕ませるべきでは? 待て、そんな事をしたら俺の理性が持たない。たぶん毎日やり始めて執務放り出せる自信がある。
(クソッ、思考が段々とエロになって……元からだな)
幸いな事にちょっと冷静になれた。でも実際シャロンのおっぱいって素晴らしいんだよね。だが俺のケダモノの心が目の前の女を貪り尽くせと叫んでいる。どこがとは言わないが物凄く痛い。
「フフッ。あなたの本能は私に興奮しているみたいよ」
そりゃそうだろう。俺に胸の大きさなんて無いのだから。それでもシャロンのおっぱ……もう良いわ。
「さぁ、受け入れなさい。私の身体を貪って孕ませなさい。そうすればあなたは――」
まるで悪魔のささやきだった。
確かに俺は女が好きだ。女体も堪能したいと思っている変態紳士だとは思っている。だが、だからと言ってこれは、子どもを作る事だけは安易に決めてはいけないと思っている。でもそれを薬のせいでごちゃごちゃにしたくない。
これは、これだけは違う。例えヘタレと言われても構わない。でも避妊の方法を知らないのに相手とそういう行為に至るのは違う。
「悪いが、それは無理だ」
シャロンとの関係云々以前の話だと思った俺は左手で顔を覆い盛大に断った。
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あの薬を含んだ時、最初に思った事は気持ち悪いという事だった。それでもベイルに迫ったのは最初に子どもを産んで兄や母親の地位を盤石にするためだ。
アリスは確かに甘やかされて育ってもいたが、それ以上に将来的に兄の為に動けと色々と言われていた。
ウォーレンとしてはそんな事で後宮内の争いはしてほしくはないが、アイリーンからしてみればウォーレンはベイルの心を射止めたシャロンを産んだジュリアナに対して入れ込んでいる節があった。だからこそアイリーンは自分の娘であるアリスに隙あらばベイルを寝取れと言った。
アリスは自分の母親の頼み――いや、命令を聞いて実行。しかしベイルは拒否をした。
「何で……」
「俺には金がないからだ。そして今、金を産むための準備をしている。そんな状況で子どもを妊娠させられる余裕はない。そして何より、君自身が妊娠するには早すぎる年齢だ」
「だったらお金なんてお父様から借りれば良いじゃない」
「金の切れ目が縁の切れ目というし、こういうのもなんだが次の世代にはちゃんとした状態で引き渡せたらいいと思うんだ。いや、それじゃあダメだな。ちゃんと厳格化させないと」
そんな事を言い始めるベイル。アリスはそれはダメだとベッドに座りベイルを押し倒して唇を奪った。そんな行動に驚きながらベイルは身体を起こすとある事に気付く。それは自分たちと年代が違う二人組がこちらを見ている事だった。
それでようやく状況を理解したベイルはぶちぎれた。
「なるほど、そういうことだったのか」
ベイルは何かを察してドアを開ける。そこにはウォーレンとアイリーンの二人がいた。
「悪いが俺は、例え相手が王族だろうと容赦しないぞ」
ベイルが殺気を出した時に二人が気絶。そして用意した部屋のベッドに寝かした後に部屋に戻るとそこには気絶して動かないアリスがベイルのベッドで横たわっていた。
それに気付いてベイルがアリスをアリス用のベッドに連れて行くと、ドアが開けられる。
「ねぇ、さっきとんでもない気配を感じたんだけど」
「…………」
シャロンを見て途端にムラムラしたベイルはそのまま自分のベッドに逃亡した。
目を覚ましたアリスは自分がさっきまでいた場所とは違う事に気付く。自分のベッドはこれまで寝ていたものでもさっきベイルが準備したベッドでも無く、簡素なものになっていた。
不思議に思いながら起き上がると近くにあった姿鏡を見ると不思議な格好をしていた。ネグリジェ姿に自分の首にはまるで動物にでも付けるような首輪をしていたのだ。そして胸は少し成長している。
(一体、どういうこと?)
姫である自分にはあり得ない姿。ドアがノックされた後に返事を聞かずにドアが開かれる。
「アリス・ホーグラウス様。起床反応がありましたので呼びに来ました」
「どういうこと?」
「え?」
驚いたその従者はまじまじとアリスを見る。しばらくした後に「失礼しました」と告げた後、彼女の首にリードを付けた。
「ちょ、ちょっと、何をするの!? まるで私をペットのような扱いをして」
「いえ、いつもの事なのですが……」
「へ?」
そんな事を言われてアリスは戸惑うが、少しして従者はある事に気付いて言った。
「いえ、そんな気分にならない時だってありますよね」
何故か納得した従者はそのまま一礼をする。
「ともかく皇帝陛下がお待ちです」
「……こ、皇帝……?」
聞き慣れない単語に首を傾げるアリス。もしかしたらその皇帝ならば何か知っているのではないかと思い案内されるがまま付いて行く。
そして部屋に入ると女性が一人、ベッドの上で横たわっている。いや、横たわっているというよりもナニかをしている。
「失礼します。皇帝陛下、皇后陛下、アリス様をお連れしました」
「そう。わかったわ」
「では失礼します」
従者が外に出てドアを閉めた後、カシャンと音がする。そしてアリスは皇后と呼ばれた相手が自分の姉である事に気付く。
「久しぶり、アリス。と言ってもあなたはいつもベイルの所に行くんでしょうけど」
「……え?」
アリスはベッドの方を見ると、確かにそこには眠っているがベイルが寝ている。見える範囲では上半身は裸でそのまま寝ている感じだった。それに対して自分の姉でもあるシャロンはバスローブは羽織っているがほとんど裸と言っても良い状態だった。ただどちらも残っていたはずのあどけなさが無くなっており、大人になった感じだ。
「待って、お姉様。何で二人が皇帝とか皇后とか呼ばれているの?」
「何を言っているの、アリス。あなたは――待って、もしかして精神が元に戻ってる?」
突然姉にそんな事を言われたアリスは動揺する。二人の呼び方もおかしい事だが、何より自分の精神が崩壊していたと言われて動揺を隠せない。
「ごめんなさい、お姉様。私、どういう状況か全くわからないの。信じられない話かもしれないけど、私はベイル大公の最初の女になる為に夜這いをして、そしてキスをしたんだけど……」
「それってもしかして、ベイルが大公になって間もない頃?」
「う、うん」
何度も頷くアリス。それを聞いてシャロンは言った。
「そうね。じゃああなたが覚えているのは十年前ってことか」
「……え? じゅ、十年前⁉」
「そう。そしてあなたの精神が崩壊したのも大体それくらいね」
少し間を置いた後、シャロンはアリスに対してとんでもない事を言った。
「今はベイルが大公とした日から十年と少し経っている。そしてその間にあなたの関係者で言うと、お父様のウォーレン・ホーグラウス、第一王妃のアイリーン様、当時王太子でもあったサイラスは死んでいるわ」
「……ど、どういうこと⁉」
「あなたがベイル君に対して媚薬を盛ったことがすべてのきっかけよ。あの日、ベイル君は性欲に耐え切れなくなって暴走。私たち姉妹を文字通り潰れるまで襲ったの」
突然そんな事を言われてアリスは呆然とする。というよりも彼女は理解が追い付いていなかった。
「そしてその日以降、お父様は衰弱して数日後に死亡。事の顛末を聞いたサイラスが挙兵してベイルに対して報復を行おうとしたけど当然失敗したわ」
「し、失敗って……」
「正確に言うと、ベイルと私は事の発端がアリスがアイリーン殿下との共謀でサイラスの地位を確かなものにする為に私ではなくあなたを正室にする為に仕組んだ罠だと主張したけど、聞き入れないサイラスが大公領を襲撃。それに怒ったベイルが地形を変える程の魔法を使用してサイラス以外のジーマノイドを破壊した後、サイラスを捕縛して今回の件の首謀者にして無駄に兵を死なせた愚かな王太子として見せしめにして信用を失墜させて私たちで王位を簒奪したのよ」
そこまで淡々と語る自分の姉に冷や汗を流すアリス。
「ちなみにあの魔法はベイルが生身で行ったわ」
「……え? ちょっと待って――」
「わかっていると思っているけど、確かに当時はいくつかのジーマノイドの量産に入っていた。でもね、ベイルは当時から規格外。むしろ本人曰くジーマノイドは趣味で乗っているらしいわよ」
そんな事を言われてアリスは愕然としたが、シャロンは淡々と続ける。
「アイリーン様も負けじと私たちを討伐しようとしたけど、ベイルの恐ろしさにもう貴族たちは付いて行けずに私たちに対して反逆罪として捕縛。数日後に自殺したわ」
「…………じゃあ何で。何で十年後だって言うのに私は生きてるの!? おかしいじゃない!」
「ベイルがあなたの精神がおかしくなっている事に気付いたからよ。アイリーン様が自殺したのもあなたの目の前らしくて、その影響であなたは彼と子どもを作る事に専念してしまい、次第に人間らしさを失った」
それを聞いて腑に落ちた。何故あの従者が自分に対してあんな態度を取ったのか。
「まぁ、その後に主だった家の女子を側室として迎えたところにパルディアン帝国とレリギオン神皇国からベイルを極悪非道な悪魔として宣戦布告された後にベイルがサクッと終わらせたり、聖女として崇められた女性が当時のあなたと同じように犬の様になっていたり、それを受けてブルーミング共和国とブリティランド魔導国が降伏して今ではヒドゥーブル帝国として内大陸を完全掌握し、ベイルの趣味でジーマノイドの開発が進みに進んで、魔族たちと恒久和平を締結したりって忙しくて、今では帝国としての理念とか色々と頑張っているところ」
「待って! この十年で色々と進み過ぎじゃない⁉ っていうかサクッと!?」
「ええ。特にレリギオンの体制は完全に破壊して、聖女に関してはその身体を民に見せて社会的に抹殺してきたって」
「何それ怖い⁉」
「あら、別にベイルは極悪非道じゃないから、民のよりどころとして女神信仰は続けても良いって事にしたわ。ただそれを理由にあくどい商売をしたら潰すってだけで。実際、反乱の目はすべてベイルが乗り込んで潰して回っていたし」
そこまで言われて改めて自分の兄兼夫になる人物がどれだけ凄い人間かを理解する。確かにこの男が敵に回れば自分たちの国が危ない。
(……ああ、だから)
王位を求めていた姉がそれを捨て、ただ一人の男に恋をした理由をようやく理解した。そして自分は所詮、ただ慈悲を貰えるだけで良かったのだと。
「あと、ブリティランドは女王が子どもたちと共に降伏して国そのものを引き渡したから売国婦とか言われているけど、あんな惨状見ているなら仕方ないわよね」
そんな唐突にとんでもない事を言われてアリスはしばらくフリーズ。そして――
「そんなことで同意求めるなぁあああああああ!!」
アリスはそう叫んだ。
「ちょ、どうしたのいきなり」
「え?」
アリスは周りを見回すと、熟睡しているベイルの上に乗っているシャロンの姿を見て思わず言った。
「まさかもう十年経ったの!?」
「いや、何を言っているの。あなたが彼に媚薬を盛ってからまだ数時間しか経ってないわよ」
そんな事を言われて混乱したアリス。
「え? 数時間?」
「飽きれたわ。ベイル君が日頃どれだけ私相手に我慢していると思っているの。まぁ、あなたが盛ってくれたおかげで私はベイル君から私の膝がガクガク震えるくらいの激しいキスをされたんだけど」
唐突に惚気られて呆然とするアリス。そしてある結論に至った。
「じゃああれは夢……そっか、夢か」
「どうしたの?」
「あ、いや、なんでもない」
誤魔化すが嗅覚が鋭いシャロンはベイルから離れて耳打ちする。
「一体何を見たのかしら? 言わなかったらあなたを社会的に抹殺して生物的にもお預けさせてもうベイル君との子どもを作る事しか考えられない程に落とすつもりだけど」
「……で、でも夢よ?」
「あなたの反応が面白そうだから別に良いのよ」
そう言われてアリスは所詮夢だと思って話した後、シャロンは後悔した。
「なんともまぁ、ベイル君ならやりかねないわね」
「そんなに?」
「ベイル君の戦闘能力はもはや一国の軍事力でどうにかできる程じゃないわ。だから私が彼の正室になる事にしたし、それに取り入ろうとするお父様の考えは決して間違いじゃない。何も知らない貴族が贔屓だなんだと騒ぎ立てていても放置してでもヒドゥーブル家を終わらせなかったのもそれが理由。ま、強いのは何も彼だけじゃないと証明されてしまったけれど」
アリスもここ五年の事件を思い出して納得した。長姉はともかく長兄の無双っぷりは流石はベイルの兄と言いたくなるほどだった。
「そんな人間が気分だけで世界を滅ぼすなんて当たり前。一体誰の為にこんな力を手に入れたのだか」
「お姉様の為?」
「それは無いわね」
ハッキリと断言したシャロンに驚くアリス。アリスはまじまじとシャロンを見ていると視線に気付いたシャロンが尋ねる。
「どうしたの?」
「だってお姉様は彼と仲が良いでしょう? だからてっきりお姉様の為にここまでの力を手に入れたんだと思ってたんだけど」
その言葉にシャロンは笑って返す。
「ベイル君が表舞台に出てきたのは五年前。しっかりと存在が確認されたのはアメリアちゃんの存在が確認された時。そしてそれまでの期間、ベイル君と仲が良かった女はたった一人だけなの」
「それって……」
「アメリア・バルバッサ」
その相手をアリスが知らないはずが無かった。自分の兄のサイラス・ホーグラウスの婚約者で、いずれ自分の義姉になる存在。
「元々ヒドゥーブル家はある意味バルバッサ家の私兵として手に入れる為に後ろ盾になり、アメリアちゃんがサイラスの婚約者になった年に両家が会合しているのは知っていたわ。それからしばらくしてベイル君は人が変わったように森に入っていた」
「も、森に?」
「そう、森に」
突然の森に出かけた話をされてアリスは疑問を抱く。
「ヒドゥーブル邸の近くにはね、魔の森という高ランクのモンスターがたくさんいる森があるのよ。そこは不思議な事に森を縄張りとしているモンスターが多くて場合によってはとんでもない規模のモンスターが現れるのよ」
「じゃあ、そこにヒドゥーブル家が配置されているのは」
「所謂抑止力ね。ちなみに子供時代にそんな事をしているのは長男のフェルマン兄様以外はベイル君ぐらいらしいよ。ロビン兄様でも流石に一人では行かなかったみたい」
「――そもそも意外な事にあそこで訓練する子どもがいなかったらしいぞ」
二人は驚いてベイルの方を見る。ベイルは少し気だるげに答えた。
「俺だってストレス発散とか込みで入っていたからな。まぁ、色々あって今ではこんなに強くなったが」
「ベイル君、いったいいつから話を聞いていたの?」
シャロンに迫られて怖気づくベイル。
「ま、魔の森の話をしていた話をしていたところだけど」
それを聞いて安堵するシャロン。ベイルは気になったがそれ以上踏み込んだらダメかと思い思い止まる。
「でも魔の森って強い奴いなかったけどな」
「そうなの?」
「ああ。黒人狼とか黒犬とかいたけど、アイツらって言う程大した事無いし」
それを聞いてシャロンはベイルの両肩に手を置く。
「それらを一人で倒せるあなたがおかしいだけだから」
本気の顔でそんな事を言ったシャロン。その後ろでアリスは顔を青くしている。
「どうした? もしかしてベッドの寝心地悪かったか? まぁ、大したものじゃないのは確かだけど」
全力で首を横に振るアリス。しかしどう見ても顔が青いのでベイルは気になった。そしてベイルが手を出した時にアリスがベッドから逃げ出して床で土下座した。
「本当に……申し訳ございませんでした!!」
突然謝られて混乱するベイル。シャロンは心当たりはあるが正解を教える事はしない。
「急にどうしたんだ?」
「すべて、私の母が……アイリーン・ホーグラウスが仕組んだことなんです。他の者は今回の事は全く何も知りません! だから殺すなら私と母のみで――」
「…………あ、媚薬のことか」
その事に気付いたベイルはベッドから降りて強制的にアリスを持ち上げる。
「別に良いさ。そもそも毒か何か仕込まれていることくらいはわかっていたからな。まさかそれがあのババアの媚薬だとは思わなかっただけで」
「で、でも……」
「まぁ、気に病むなら今度からこういう事はするな。お前はお前が好きになった相手に一生懸命になればいいさ」
「……好きになった相手……」
すると顔を赤くしたアリスがバレないように顔を下に背けると固まった。何かを凝視している様子に気付いたベイルが下を見ると自分の状態を知る。
「あ、ご、ごめん!」
思わずアリスを放り投げたベイルはそのままベッドに戻ってパンツを探す。顔を赤くしたアリスにシャロンがある事を耳打ちするとアリスの顔はさらに真っ赤になった。
(道理でスースーすると思った!)
まさか自分のパンツまで脱がされているとは知らなかったベイル。上半身は裸だったが下半身までもと思った瞬間、ある可能性を考えてしまいシャロンを見ると勝ち誇った顔を笑みを見せるのでそれで察したのだ。脱がしたのはこの女だと。
実質夫婦に近いので相手のパンツを脱がそうがベイル君の不注意なんですけどね( ´艸`)
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