表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/36

#32-落ちぶれ始める思い-

次話投稿が遅れると言ったな? あれは嘘だ。


たまたま個人的に切りの良い所まで書けたので投稿しました。次からは休みとかじゃないと基本的に無理です。というか休みでも他の奴に手を出したりとして中々投稿できないかもしれません。


※30話の誤字報告ありがとうございます

 家の方が妙に騒がしいが、あの二人がまだ喧嘩しているのだろうか。なんて俺はグレアムと戦闘を行っていた。グレアムは戦闘の筋が良く戦っていて面白い。将来性があるというのだろうか、もう少し大きくなれば彼にも大剣の素晴らしさを味わってもらいたい。

 それはともかくとして俺は剣一本から二本を持って二刀流で切りかかる。それを剣を横にしてグレアムは凌いでいた。その姿を見て俺は少し本気になってしまい、魔法を使用した魔剣戦法を取って容赦なく倒してしまう。


「くっ……参りました」


 倒れているグレアムに手を出すとグレアムはその手を掴んだので引っ張って立ち上がる手伝いをする。


「ありがとうございます」

「いえいえ」

「それにしても凄いですね。流石は英雄と呼ばれるだけの事はあります」

「まぁ、元々親父も一番の上の兄貴も大剣使いだったからさ。三番目の兄貴は朱槍を見つけてからはそれを相棒にしているが、俺は大剣の方が好きだったんだ。……あと英雄は止めて」


 本当に虫唾が走る。グレアム自身は決して馬鹿にしているわけじゃないのは理解しているが、これに関してはもう俺の体質の問題だろうからとりあえず軽い否定だけに留める事にする。


「さてと、そろそろ帰るか」

「そうですね。あの二人もそろそろ落ち着いているでしょうし。ところでベイル様は大丈夫なんですか?」

「まぁ、言われ慣れてはいないけど、だからと言ってそれは結果を見せるしかないだろ。幸い食料に関してはまだ大量にあるから当分は問題無いし、明日からはダンジョン周辺を中心に町を作って行こうかなって」

「そうですね。頑張っていきましょう!」


 俺の中のグレアムの評価が上がっていく。

 二人で家の方に移動していると、見た事がない人間がたくさんいた。


「な、何ですかこれ!?」

「たぶん難民とかだな。早速受け入れ準備の為に炊き出しだ」


 そう言うと驚くグレアムを他所に俺は炊き出しの準備を始める。これでも簡単な料理はできるタイプの人間だ。前世の俺が趣味の一環として料理に挑戦した事があるからだ。流石干支が一周するまで大して趣味に没頭しなかった無駄な人生を送った社会人である。あの時は軽い鬱に入っていたのではないのかと思う程だ。


「ベイル様、食事は――」

「大公がする事じゃないって? 今はそんな事を言ってられないでしょ。俺の方で受け入れる奴らを俺がもてなさずにどうするの。道端の草でも食っとけって?」

「いえ、そういうわけじゃ――」

「マスター、消毒完了しました。手伝います」

「はいよー」


 メイドも入ってきて二人で調理を開始。雑炊が出来上がっていく様を見て人たちが自然と並ぶので食器とフォークを準備。どれもすべて消毒済みである。


「はーい、順番に並んで取って行ってね。当然だけど横入りとか無しだからね。そんな事をした場合、領主権限で大砲の試弾になってもらいます」

「ちょうどここに開発途中の大砲があります」


 とメイドが空気を読んで準備してきた。異空庫から持ち出したらしい。


「冷静に考えたら雷管含め諸々を装着させたら足が無くなるな」


 大人しく並ぶみんな。よく見ると連れて来た奴らは揃いも揃って痩せこけている。どうやら問題ある奴らしか連れていない。あと割合的に子どもが多い。


「作るか、学校」

「ではティーチャータイプを生産するよう分身に指示を――」

「そこのメイドが教えなさい」


 というかお前、子どもを守れる程の戦闘能力あるんだから大丈夫だろ。


「正直面倒なのですが」

「学者肌の奴らも巻き込むのも面白そうだな」

「もしくはあの魔乳にスーツを着せますか?」

「あの大きさが入るサイズは無いだろ。あとたぶん俺が死ぬから却下」


 ちなみにこのメイドは言わば俺の性別が女になっただけで実は思考のほとんどがトレースされている。心臓部は確か物凄い魔石でできていたはずだ。たぶん。


「な、何だこの騒ぎは⁈」


 俺の家の方から声がしたのでそっちに視線を向けるとオッサンの愉快な嫁たちを連れていた。その中でもひと際小さい少女のような女が近付いて来る。


「これは何かしら?」

「炊き出し。とりあえずちゃんと食えるようにペーストメインにしてる」

「何ですって?」


 女が俺を見定めるようにしている。


「あなた、仮にも大公でしょう? だったら大公っぽく振る舞いなさいよ」

「それは無理だな」

「何で?」

「俺の方ができることが多いからな。それに腹を空かせているのは俺じゃない、こいつらだ。それにろくに得意分野を見定めずに女だから料理しろ、男だから狩りをしろと男らしさ女らしさを求めて何だと言うんだ。まぁ、捕虜になったら女は悲惨な目に遭うのがデフォルトだからあんまりお勧めしないが」


 それは性別上、やはり仕方ないだろう。性別差別ではなく区別だ。まぁ、それをさせないためのあの力でもあるが。


「だからってこんな不味そうなものを出す? 領民の事を何も考えていないじゃない」

「だったら作ってみるか?」

「何で私が。王族の私がそんな下賤な者がするような事をするわけ――」


 その時、女がウチのメイドに蹴り飛ばされて文字通りぶっ飛んだ。結構飛んだなぁと思っているとオッサンのところで悲鳴が上がった。


「アリスぅううううッ!?」


 俺は気にせずにいるとさっき悲鳴を上げていた女がこっちに近付いて来る。


「あなた、よくも私の娘を蹴ってくれたわね! 不敬罪よ! この者たちを今すぐ捕縛して――」


 先手必勝という言葉が脳裏に過る程、メイドの姿が消えて近くの兵士を地面に叩きつける。


「おいおい。せめて後の先で潰してやれよ。可哀想だろ」

「御冗談を。今のはあくまで後の先です。敵意を感じてから潰したので」

「ならば仕方ない。あ、兵士のみなさん、歩き疲れて動けない人たちに配ってくれない? あんたたちの食事は別個で作るから」


 しかし今ので完全に敵対行為と捉えたらしい。武器を構えてこっちを向ける。


「面白いですね。この場で全員始末をしても――」

「――ねぇ」


 だが流石にそろそろ落ち着いてもらおう。これ以上暴れて食事に埃が入るのはあまりよろしくない。そろそろ落ち着いてもらわなければ。


「そこまでにしてくれないかな。この通りさっき王族を自称していた女は無事だし」


 そう言いながらこっちに引き寄せる。さっき蹴り飛ばした時点で見えない影を飛ばして捕縛はしていたんだ。


「メイドになんて教育をしているのかしら? 神経を疑うわ」

「教育されましたっけ?」

「した覚え無いな。とりあえず命令さえ実行していれば別に良いかなって思って。そもそも偉い人と会うなんて勘定に無かったし」

「それに教育を言うのならばそのクソガキなんて失敗そのものでしょう。他人を指摘する前に自分の身の振り方を見直してみては? ただでさえ戦闘能力は皆無な上に快楽を提供するにしても心許ない身体つきなのですから、せめて上品さくらいは身に着けていても損は無いでしょう」


 俺が言うのもなんだけど、何て遠慮のないメイドでしょう。そもそもメイド服も俺の趣味で基本的に戦闘特化だから礼儀や振る舞いなんて二の次だが、流石に女性の肉付きは言ってやるなよ。


「そこまでだ、四人共」

「ですが陛下! この者は正妃である私に対する態度はもちろん、自分の嫁であるアリスをメイドを使って蹴り飛ばしたのですよ!? そのような暴挙を許すというのですか!?」

「……本当か?」

「それが何だ? あと俺の暫定嫁はシャロンじゃないのか?」

「前々から言っているだろう、私の娘をすべてお前に嫁がせると」


 あれ本気で言っていたのか。八割冗談だと思っていた。それに、そうだとしても流石にあんな少女が嫁いでこられたら困る。


「だとしたら尚更困るんだけど。あんな教育が成っていない小娘なんて趣味じゃないし」

「……お前は本当に遠慮というものを知らないのだな」

「遠慮した方が良いほどアンタらって強かったっけ?」


 そう返すと王族全員が固まった。近くにいたグレアムや騒ぎを聞いて出て来たエイブラムも唖然としている。ただ一人、シャロンだけが平然としていた。しかし少ししてオッサンもため息を吐く。


「まぁ、そういう君だからこそシャロンは惚れたのかもしれないがな」

「そうよ。そうじゃなかったら私はすべての弟を殺していたわ」


 シャロンが俺に抱き着く。身体全体を俺に預けてくれるのは素直に嬉しい。


「悪いシャロン、とりあえず離れて」

「え……」

「いや、ちょっとだけで良いんだ」


 俺は異空庫から大きな建物を出して適当に配置した。それを見て王族一行は口をパクパクさせる。


「驚くでしょ?」

「別に領地を持ったら何をしたいかってのは、割と男の子は考えちまう生き物だからな。しっかりとした建物じゃないから波にさらわれる可能性もあるが、仮設集合住宅としては別に良いかな」


 と言っても本当に仮説ものだ。横に大きく壁を設置しその上に屋根を乗せた程度の簡易的な家。あくまで孤児院のプロトタイプのようなものを作っただけに過ぎない。

 俺が何かを作る時は基本的に何かを模型にして造り上げる。今回はそれを分身たちが俺の能力をフルに使って製作していたらしい。元々俺の分身ということもあって身体能力に優れていてその上自由に飛べる。魔法に関しても自由自在。いや、アレはほとんど念動力の類いだろう。


「ふん。それが何よ」


 訝し気な視線を向ける女は無視してあと四棟ほど出した後に男女別浴の風呂場を設置。この世界に魔石があるからある程度の工程を省けるのがデカいよね。

 そして彼らにとって風呂というのは喜ぶ対象らしい。それにやはり体が不潔というのは嫌だしね。


(……分身共、もしかして暇なのだろうか?)


 そんな事を考えながらもとりあえず食糧の準備を続ける。


「大公様、私たちも手伝うわ」


 そう言って参戦したのはオバサン連中。俺たちにとって救世主になるのだった。


「わかった。じゃあここを頼むな。食料はこのメイドに言えば出してもらえるから」


 俺はその場を離れると自分の家に戻る。そこに平然といる王族一家に尋ねた。


「とりあえずありがとうと言っておこうか、オッサン」

「ああ。早かっただろう?」

「早すぎだ。まぁ、明日からは土地を移動させるつもりだったからな」

 

 その言葉にオッサンは眉をひそめた。


「土地を移動させる? そんな事が可能なのか?」

「ああ。せっかく土地をもらったから好き勝手したいが人員が足らないからな。この辺り一帯を浮かせて目的地付近まで移動させて人員を配置させる。ダンジョンも見つけたから前線基地を兼ねて作るつもりだ」

「そうか。ダンジョンを見つけ……は?」

「ということで手続きよろしく」


 王様に言った方が早いと考えて先に暴露。王族一行は唖然とするがやがてオッサンが諦めた。


「……そうだな。これから調査も進める必要もあるし、人員もいるか」

「ああ。もし俺が潜ってその間に周りから攻められたら困るからな。ジーマノイドの生産工場も作りたいし」

「わかっていると思うが、攻略するなよ?」

「ああ。努力する」


 もし強敵ならばたぶん本気を出す事になるが、最近家族以外だとそんな相手がいないからだろう大丈夫だろう。


「それで、どこまでやったんだ?」

「何で娘の猥談に男親が入ってくるんだ。複雑だろ」

「複雑ではあるが、王としては聞いておく必要があるからな」

「いや、それ以上に俺はオッサンに聞きたいことがある」


 俺はふと周囲を見回す。


「お前らいつ帰るの?」


 その質問にオッサンはニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべ始めた。


「それはつまり、シャロンとイチャイチャしたいから早く帰れってことか?」

「そういうわけじゃねえよ。俺はもちろんのこと昨日を見る限りシャロンやエイブラム、グレアムは問題無いとして、お前ら従者がいなくても食事や風呂に入れるのかよ。俺の場合料理ができるって言っても所詮ジャンクレベルなんだが」


 確かに俺はオッサンに人を派遣してもらえるように依頼をしていた。そりゃあもちろん、他の奴らがしっかりと栄養を取れるように一日でも早く動くつもりだ。だが生粋の王族である女性陣は問題無いのかということだ。


「それに関しては安心せい。住居さえどうにかしてくれれば手段はいくらでもある。現に料理人や食材はある程度揃えてきておるからな。それに、一応まだ完全に発展したわけじゃない事も重々承知している状態で来ているんだ。むしろベイル君のおかげでまだ最悪の環境から脱していると言えるだろう」

「それを聞いて安堵したよ」


 俺としてはそんな事を指摘されてもなんとも言えないからな。それは本当に安堵した。

 それにしてもシャロンはさっきから何で俺から引っ付いて離れないのだろうか。視線の先は……確かジュリアナ妃。シャロンとエイブラムの母だ。それを見て、俺は少し彼女と話をする必要があると思った。




 風呂から出た後、俺はジュリアナ妃を探していた。俺の印象としてあの人は割とまともそうだということだ。というのも国王陛下そのものが自分の娘と結婚させる気満々だし、何の実積もない俺を大公にしたりとやりたい放題。そして正妃のオバサンと娘も破天荒。ちなみに息子のアルビオン破壊もハッキリ言ってやるが異常だ。それなのにシャロンやエイブラムはまだ礼儀正しい。エイブラムは耐性不足で暴走している節があるが。

 そしてジュリアナ妃とは割と俺に対してまともな干渉をしていない。過去に少し関わりがあった程度だ。


「こんなところにいましたか」


 そう言ったのは俺ではなくジュリアナ妃だった。俺は一礼して挨拶する。


「ご無沙汰しています、ジュリアナ様。と言っても挨拶の方法は野蛮育ち故正しいか知りませんが」

「結構です。シャロンの心の完全に掌握しているその手腕、見事と言っておきましょうか」

「自分が率先した記憶は無いですけどね。本当にいつ私と結婚するなど言い始めたのやら。私がいない間に他の男に目を向けられる機会は無かったのですか?」

「残念ながら、私があなたを撃ったのでその日以降まともに会話が無かったのです」

「そうなんですか……え? 俺を?」


 一体いつ? と考えていたがこれと言って被弾して記憶なんて無い。


「あなたが他の国と戦争をし、巨人になった時ですよ」

「……え? あれってジュリアナ様がしたのですか?」

「……そうね。そんなあなたが戻ってきてシャロンはもちろん、他の子どもも取られるなんて耐えられないわ」


 もしかして俺はかなり彼女に嫌われていないだろうか? いや、たぶん嫌われているな。


「そっかぁ。俺は別にジュリアナ様に対して別にそこまで悪い人ってイメージ無かったけど、嫌われてたかあ」

「当たり前じゃな……そう言えば何で私に対して敬語で話しているの?」

「こう言っちゃシャロンに怒られますけど、俺個人としては別にジュリアナ様に対して変な印象抱いていませんし、数年前は割と間違った事は言っていませんでしたから」


 そもそも暫定バケモノが自分の娘とイチャイチャされれば誰だって嫌だろう。というか当時十一歳の娘に十歳の少年が一緒にいて子どもだからと言って一緒に寝ているのってよくよく考えなくても異常だよね。


「そうですか」

「少なくともあの親子みたいなゴミカス要素無いですし」

「…………不敬罪という言葉をご存知です?」

「私が普通の人間に負けるとでも?」


 ジュリアナ様はため息を吐く。もうその辺りの説得は諦めたらしい。


「ところでジュリアナ様はこちらに滞在されるのですか?」

「まだ幼い子どもを残しているので陛下と共に王都に戻る予定です」

「そうですか。残念です」

「え?」


 何故そこで驚かれたのだろう。あ、もしかして理由がわからないのだろうか。


「いえ、今の残念というのは美人な奥さんが王都に帰るのは素直に残念だなぁという気持ちはもちろん、このままではエイブラムが過労死するかもしれないからケアに残ってもらえると嬉しいなって思いまして」

「あなた、今自分がとんでもない事を言っている自覚はありますか? 一応、エイブラムは第二王子なのですが」

「でも王子だ王族といってもいざという時も考えて自衛できるに越した事は無いでしょう?」


 言われてジュリアナ様は小さく「確かに」と呟いた。

 すると何かが走ってくる音が聞こえてくる。ぶつかりそうになっているのを重力魔法で緩やかに止めた。


「どうしたのシャロン」

「……ベイルを守りに来たのよ」

「そこはむしろ君の母親を守るべきだと思うけど」

「でもこの女はあなたを殺そうとしたのよ! あなたは許せるの?」

「俺は別にジュリアナ様に対して悪感情を抱いてねえよ。バレたら流石に親父さんにぶちキレられる事は考えた事あるけど」


 例えば親子丼とか親子丼とか。実際ジュリアナ様は本当に推定年齢三十前後なのだろうかと思う程にキレイさを保っていると思う。嫉妬心からオッサンを殴り飛ばしたいぐらいだ。


「まぁ、流石に殴り飛ばされたら怒ると思うけど」

「たぶんそっちの方がマシだと思う」

「…………」


 するとシャロンは何を思ったのか急に服を脱いだかと思うと俺の顔を自分の胸に押し付けた。すぐに俺は周りに人がいないのか確認する。幸いな事に今のシャロンを見れるであろう範囲に人はいなかったのでセーフ。みんな温泉を楽しんでいるらしい。


「シャロン、あなた何をやっているの?」

「あなたには関係ないわ」


 シャロンのパイオツの感触を味わっているが次第に空気が持たなくなる。しかし何を思ったのかシャロンは俺の頭をさらに押した。


「ねぇベイル? 私のおっぱい気持ちいい?」

「昇天しそうだとは思うよ」


 ただしそれは空気が無くなった時の話だ。できる事なら確保させてほしい。


「シャロン、流石に彼の空気事情が心配になってきたんだけど」

「大丈夫。発情させているだけだから。そして今日こそベイルの子どもを妊娠――」

「俺は君の交友関係をぶち壊したくないんだけど」

「良いのよ。ベイルだって早く領主としての仕事を捨てて冒険者に復帰したいでしょ?」

「そりゃ魅力的だけどやっぱりこういうのは順序立てた方が良いと思うんだ。それはそれとして最高だけど」


 だけどシチュエーションとしては最悪な部類に入るので残念ながら俺の息子は興奮しない。やけに痛いけどそれは絶対に気のせいだと信じたい。

 俺は少し乱暴に脱出して服を着せる。改めて思うとシャロンの体格ってかなり凶器なんだよな。果たして俺が学園に通ったとして彼女を孕ませずに無事に卒業させることができるのかと不安になった。


「シャロン」


 見るとジュリアナ様から何故か怒気が出ている。もしかしてマズい事をしたのだろうか。


「あなたがベイル君の事を心から好きなのはよくわかりました。そしてベイル君もあなたの事を思っている事もわかりました。だからもうこれ以上あなた方を引き裂こうとしませんし、学園に通っている間に子どもができてしまっても仕方ないと思う事にします」

「ようやくわかってくれたわ」

「いや、俺の中で一番納得してはいけないところを納得されているんだけど」


 むしろ年齢的に高校生で子どもができるのってあんまり推奨されなくない? もしかして転生した後遺症でそう考えているだろうか。そりゃまぁ、シャロンを抱きたくないというのは精一杯の嘘だけど。なんだったらさっきも胸に顔を入れていた時とか完全覚醒寸前だった。


「でもそれはそれとして、あなたには少し説教をしないといけませんね」


 そう言うと一体どこから出したのだろうか、手錠を彼女の手首にかけてそのまま引っ張って行く。


「ベイル君、正直私はこれまで不仲を理由にあの子とまともに話してこなかった事を後悔しています。まさかいきなりあんな姿を見せるなんて予想外だったわ」

「……なんか、ごめんなさい」

「そう思うなら今日だけはシャロンと寝るのを一日だけ我慢してもらえないかしら」


 一日……一日だけか。シャロンは全力で拒否しているが、ジュリアナ様としては大事な娘として会話をしたいことがたくさんあるかもしれない。流石に収束するかもしれない家族間の問題に釘を刺す趣味は無いので俺は駄賃代わりにいつもされるので今度はこっちからディープキスする。


「わかりました。一日だけ我慢します」

「ありがとう。話をわかってくれて助かるわ」


 そう言ったジュリアナ様はシャロンを引きずる形でどこかに向かう。その光景を見て俺は少しチャンスだと思っていた。

 思えばシャロンが近くにいるから俺の発情は最近暴走しつつある。だったら近くにいなければ問題のではないだろうか? 明日は怒られるだろうが個人的にはこれ以上無い大勝利案件……そう、思っていた。


 部屋に戻って広くなったベッドに眠る。それからして自分の中の手持無沙汰を感じた。そう、俺は今すぐシャロンを抱きしめたいのだ。

 一体いつから俺は人肌を求めるようになっただろうか。たぶん俺は結構シャロンの事が気に入っていて、今すぐ抱きしめに行きたいのかもしれない。もしくは女体を求める変態なのか。だとしたらまだシャロン一途の方がマシだろう。

 そう思っている時、ドアがノックされたので出て見るとそこにはメスガキ……もとい、アリス・ホーグラウスがいた。

面白ければブックマークと評価ボタンをお願いします。押してくれると作者の執筆欲アップに繋がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ