第二章 バーボン・バレル3
俺たち四人はお題目の絵画を鑑賞し、批評用のメモを書き終えた。
部長が「それでは自由行動にする。一旦解散だ」と言うと、皆散らばっていった。
俺は観ようとしていた作品は特にないので、ぶらつくことにした。
初めは流しただけだったので、おそらく観ていない作品はある。それを観れたらいいやくらいにしか思っていなかった。
しばらく館内を歩くと、何かに釘付けになっている元気を発見した。その姿は水族館の水槽に張り付く子供のようである。
「おい、元気。何観てるんだよ」俺は背後から話し掛ける。
「あ、健人。珍しいものを発見したんだよ!」元気は振り向く。
「珍しいもの?」
「うん! 仕込み刀でも特に珍しいものだよ!」元気はショーケースを指す。
俺が目をやると、そこには二十センチくらいの物差しが展示してあった。
「この物差しが刀だっていうのか?」俺は驚く。
「そうだよ。これは絡繰刀――《夢喰》。仕込み刀の最高傑作と言われているものだよ」
これがあの夢喰か。俺は刀の名前を聞いてピンときた。
「見た目はこんなに小さいんだけど、仕込んである刀身を出すと一メートル以上にもなるらしいよ。その不思議な構造が最高傑作といわれている所以でもあるわけだけどね! でも、なんで今ごろこの刀が出てきたのかなぁ……。あ、この刀ね、一時どこにあったか不明だったんだ!」元気がいう。
「へー、行方不明か……」
「そそ、行方不明! 詳しいことは知らないけど……。だから、こんなところで夢喰を観られるとは思わなかったよ!」元気は笑った。
「俺も元気のおかげで、良いものが観れたよ」俺は笑顔を返した。
俺は元気をその場に残し、他の作品を鑑賞することにした。が、もうお腹いっぱいのような気がして少し早いが美術館を出て、他の三人を待つことにした。
外に出ると急にトイレに行きたくなり、近くにある公衆トイレに向かう。
用を済ませ公衆トイレから出たところで、俺は遠くの木々のところに朝比奈がいるのを発見した。
アイツも美術館出るの早いな、などと思いながら朝比奈に近付いていく。
そこで、俺はようやく異変に気付いた。朝比奈は顔をしかめていたのだ。
俺は朝比奈の周りを見渡す。
そこの木々が生い茂った場所は人気がなく、俺はまた迷彩を施した若葉でもいるのかなと考えた。
あっけなく予想が外れる。
朝比奈の前――、そこにいたのは怪物であった。