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第一章 ユルい計画4

その日の帰り道。すっかり薄暗くなった小道を、俺と元気は歩いていた。本当は朝比奈も帰り道が一緒であったが、何か用事があると言って先に帰っていた。ミッションでもあるのだろうか。


「美術館かー。楽しみだね、健人!」元気はにんまりとしている。

「そんなに楽しみなのか?」

「だって、あの可愛い凛ちゃんと美術館だよ!? 楽しみに決まってるじゃん!」

「元気……、お前また部長に怒られるぞ」俺は先ほどの光景を思い出す。

元気は顔を強張らせたが、俺が「冗談だよ」と言うと緊張を解いた。

「あ! もしかしたらさ! 僕らが行く美術館に、怪盗ロキが突然現れたりして!」目を輝かせる元気。

「まさか」俺は鼻で笑う。

「分からないよー。怪盗ロキが色々な美術品を狙っているのは事実だしね!」元気はいう。

「まぁ、そうだけどな。だけどロキだって……」

「もし偶然会っちゃったらどうしよー。サインもらっちゃおっかなー……」


俺の話を全然聞いちゃいねぇ。


元気は目をキラキラさせながら、完全に妄想の世界へ入っていた。ロキの話になるとコイツはいつもこうだ。

あー、一応ツッコミを入れておくが、盗みをやっている忙しい時に、サインをくれるヤツなんか世界中探してもいないと思うぞ、元気。


ふいに元気が妄想の世界から戻ってくる。

「あ、そうだ! 怪盗ロキで思い出したんだけど、この前インターネットで気になる記事を見つけたんだ!」

「気になる記事?」俺は問う。

「うん。二十年前から現れている怪盗ロキだけど、あと数年もすれば世に現れなくなるだろうっていう記事!」

「へー、そうなの? それは何で?」

「二十年前、仮に怪盗ロキが二十歳だったとしても、今はもう四十歳だよね。体力的にそろそろ限界に近付いているのではないかという見解が述べられていてさ、怪盗ロキが活動できても、あと数年なんじゃないかって書かれていたんだよ。だから、捕まえられるのは今のうちしかないんだって!」

「なるほどね」

「怪盗ロキは歳をとることのない不死身の身体を持っているのだ、なんて根拠のないことが書いてある記事も見つけたけどねー」元気は笑っていた。

「何だそりゃ」馬鹿馬鹿しく思い、俺もつられて笑った。

何気なく元気の笑顔を見る。

元気は相変わらず怪盗ロキが大好きなようだ。まるで、芸能人アイドルの追っかけを見ているようだった。


明後日の美術館。

俺はある人物と対面することになる。

それは怪盗ではなく、怪物であった――。

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