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第六章 決意4

俺は学校が終わると元気のいる大学病院に向かった。

巻き込まれた事件に一旦の区切りがついたし、何より元気の顔が見たかった。

病院のロビーに入ると、他の人たちとは頭ひとつ抜けた、でかい図体のトレンチコートを着たおっさんがいた。大和刑事だ。

「こんにちは大和さん。お仕事ご苦労様です」俺は挨拶をする。

「よぉ敷島健人」無精ひげをなでながら言う刑事。

「よかったですね。通り魔事件の犯人が捕まって」

「ああ、逮捕の時は大変だったな。犯人と大格闘の末にやっと逮捕できたんだ。まぁ、我々警察が本気を出せばこんなの朝飯前だよ」刑事はにやっとする。

ふーん。一応そういうことになってるんだ。武藤と格闘したのは俺と朝比奈であって、警察がやったことと言えば手首に手錠をかけたくらいじゃないのか。ま、どうでもいいか。

「でも、大和さん的には残念でしたね。俺が犯人じゃなくて」皮肉る俺。

「いやあ、あれはただの勘だって言っただろう」大和は坊主頭をぼりぼりと掻く。

「じゃあ俺、元気のとこ行きますんで」俺は頭を下げると、大和刑事は片手をあげた。



元気の病室についた俺は、患者名が書かれているプレートを確認したあとノックした。

「失礼します」俺はゆっくりとドアを開ける。

「けーんとぉー!」元気は俺の名前を叫ぶようにして言った。

俺が病室の中に入ると元気ママの姿はなく、元気は一人でベッドに寝ていた。

「今日は元気のかーちゃんいないのか?」俺は椅子に座りながらいう。

「さすがに毎日は来れないし、僕もだいぶ良くなってきたしね! それより健人……、健人に妹なんていたっけ?」元気が急に変なことを聞く。

「お前、俺が一人っ子なの知っているだろ」俺は溜息をついて答える。

しかし元気の目をよく見ると、どうやら視線は俺の背後にいっていた。元気は何を見ているんだ。

振り向いた俺は驚愕した。

そこにはランドセルを背負った――若葉がいた。それも満面の笑みである。


「な! 何をして……」


俺はそこまで言うと我に返って、横目で元気を見る。

「何をして遊ぼうかねぇ……ははは。あ、ああ、こいつは俺のいとこのワカコだよ。俺が元気のことを話したら、お見舞いしたいって泣き叫ぶもんで連れてきたんだよ……」俺は咄嗟に嘘をついて、顔を引きつらせる。

「そっか! ワカコちゃんありがとね!」元気がいった。

若葉は元気に近寄って、何やら楽しそうに喋っている。

元気少年と元気少女。ハイテンションな2人だと気も合うのだろうか。

いきなり出鼻をくじかれた形になってしまったが、まぁ元気が楽しくなるならそれでいいかと思った。



時間もだいぶ過ぎたところで、元気に別れを言う。

「早く良くなれよ元気。みんな学校で待ってるからさ」俺は自分のバッグを持つ。

「うん、すぐ良くなるよ! じゃあね健人! ばいばいワカコちゃん!」元気は手を振った。

病室を出る俺と若葉。

俺は若葉を睨むが、若葉は真っ白な歯を見せて笑っている。

さぁて、一体何をしに来たんだ若葉くん。その理由を聞かせてもらおうか。

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