第四章 対策4
俺が星を家の近くまで送ると、星は「私、朝比奈さんに負けないからねっ!」と言い残し走り去っていった。
負けないって何の事だろう。朝比奈と鶴を折る競争でもするのだろうか。俺は一生懸命に鶴を折る2人を想像したが、その姿は随分と滑稽だった。
さて帰ろうかと思った直後、背後に気配を感じる。
振り向くとそこには大きな人物。そびえ立つのはトレンチコートを着た刑事、大和だった。
「やあ、敷島健人君」無精髭を生やした口許を、にたぁとさせる。
「何でしょうか刑事さん。まだ俺に用があるんですか?」俺は不審に思う。
「いや、用事はさっきので全部終わりだ」刑事は坊主頭をボリボリと掻く。
「じゃあ、何です?」俺は少しだけ苛立ちを覚える。
「気になるんだよ」刑事はいう。
「気になる?」俺は刑事の言葉を繰り返す。
「俺はオマエが物凄く気になるんだよ」
このオッサン何を言っている? 刑事の理解しがたい発言に俺は呆然とする。
「敷島健人。オマエ何か隠しちゃあいないか?」刑事は嫌な目付きをした。
「何かを隠している? 俺が? いったい何の根拠があってそんな事を言うんですか?」俺は真顔で問う。
「なぁに、ただの勘だよ。刑事の勘ってやつさ」刑事は顎を擦りながら返答をする。
「まさか大和刑事は俺を犯人とでも思っているんでしょうか?」
「いやいや、そんなんじゃないよ。気分を悪くしたなら謝る。ただ……ま、いいか」
あやふやにされた。結局、俺は疑われただけだったのだろうか。
刑事は「邪魔したな」と片手をあげ、俺のもとから去った。
確かに俺にアリバイはなかったが、なぜ親友である元気を襲わなければいけないのか。その理由がない。
あの刑事は俺がどれだけ元気のために、嘆き、悲しみ、怒りをあらわにしたのか分かっていないのだ。
まあ、刑事という職業は人を疑わなければ成り立たないのだろう。俺は自分にそう言い聞かせ気持ちを落ち着かせる。
しかし大和刑事は俺の家で会い、たった今また会った。つけられていたのか? 全然気が付かなかったな。これがプロの尾行か。
……尾行?
そうか。そういう手もあるな。俺は一人で納得し通り魔への対策として、その案を練ることにした。
俺が通り魔に復讐する方法は、この一手しかないように思えた。