第四章 対策2
俺が公園に辿り着いたとき、派手な服装の女の子が立っていた。
大きな黒いリボンを付けたポニーテールに黒縁眼鏡をかけ、フリフリでフワフワで派手な黒いワンピースの上には、ピンクの半そでカーディガンを羽織っている。そして、足下は黒のハイソックスに、黒い厚底のエナメル靴。
ロリータ系ファッションに身を包む星七美だった。
「や、やあ」俺はファッションのことには触れずに挨拶をする。
「遅いよ敷島君」星はムスーっとしている。
「刑事さんが来て、ちょっと話きかれてたんだよ。どのくらい待ったの?」
「1時間だよ」
「うっそ! それは悪かった……って、最初電話したのが1時間くらい前じゃなかった? 出掛ける準備できたっていう電話したのが20分くらい前だし」俺は不思議に思う。
「約束したあと、すぐきたの!」にっこり微笑むメガネっ娘。
「いくらなんでも早いね。それより他のやつらは?」俺は周りを見渡す。
「他のやつら? 買い物に行くのは私と敷島君だけだよ!」
俺はてっきり元気のために、クラスメイトのやつら何人かで買い物に行くのかと思っていた。
「ま、いいや。それで、何を買いに行くの?」
「折り紙だよっ! 元気君のために千羽鶴を作るの!」
お、折り紙……そんなもん一人で買いに行けよ。と思ったが、口には出さなかった。一応、星は元気のために行動を起こしてくれているのだ。
「それじゃあ、行くか。学校の近くの文房具屋か?」俺は学校前の小さな店を思い出す。
「あそこ日曜日はやってないよ。駅前のデパートに行こうよ」
駅前のデパートか。ちょっと遠いけど我慢するか。
今日は休みなだけあって、さすがに駅前のデパートは混んでいた。
「うー、混んでるねー」星が言う。
「ああ、メチャ混みだな。えーっと折り紙は……、4階あたりに売ってそうかな」俺は売り場案内を見る。
「ねえ! 敷島君! あれ見て! あのアイスクリーム美味しそうだよ!」星は俺をぐいぐい引っ張る。
「ちょ、ちょっと星さん。何をしにココへ……」
俺は星の凄い力で引っ張られる。ティーシャツが伸びるくらいに。
満面の笑みでアイスクリームをなめる星。
頬杖をついて、それを眺める俺。
結局、テーブルに座り小休憩している。まだ折り紙も買っていないというのに。
「敷島君も食べれば良かったのに!」星が言う。
「俺はいらない」俺は横目で星を見る。
「食べたそうだよ、敷島君。私の食べる?」アイスクリームを俺の方へ向ける星。
「いらないって。星さんがアイス食べ終わったら、折り紙買いに行くよ」
「はーい!」
俺は半ば呆れながら星を見つめる。女っていう生き物は甘いものを食べれば、皆喜んで笑顔になるのだろうか。先日ショックを受けていた星が、嘘のように笑顔を振りまいていた。