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第三章 意識6

ベッドで寝ている元気。病室の端っこに座る元気ママ。ベッドの前に椅子を並べて陣取るのは、俺、星、朝比奈の3人。

元気の病室に5人も入ると、さすがに部屋が少し狭く感じた。



「……それで、元気。俺との電話が終わった後にコンビニ行ったことなんだが、何か買おうとしたのか?」俺はきく。

「健人との電話が終わったあとね、ちょっとだけ勉強しようと思ったんだけどシャープペンの芯がないことに気付いたの。それでコンビニに買いに行ったの! それだけだよ」

「ふーん、そうだったのか」俺はうなずく。特に重要な情報ではなく、俺は少しがっかりしていると、朝比奈がようやく口を開いた。


「出雲君の制服って、ナイフで刺されて穴開いちゃったの? 着れなくなっちゃった?」

「ううん! 凛ちゃんの歓迎会やって、ご飯食べて、コンビニに行くまで制服だったんだけど、出かける前にティーシャツとハーパンに着替えてから買いに行ったから、穴開いちゃったのは私服だよ! そのおかげでティーシャツもハーパンも血まみれだし、もう着れなくなっちゃったよ!」悔しそうな表情をする元気。お気に入りの服だったのだろうか。

「そっかぁ、でも制服は無事だったんだ」微笑む朝比奈。

この朝比奈の質問には、何か意味があるのだろうか。俺だったら服の心配より、元気の身体を心配するが。



その後、あまり事件のことを話すのも酷だと思った俺達は、話題を変えて他愛のない話をベラベラとしゃべり続けた。やはり、その方が元気にとっても楽しいだろう。

俺は皆の顔を見る。

元気は意識を取り戻し、いつもの元気に戻った。

星七美はいつもの元気を見て、ショックから開放されたみたいだ。

一番ショックを受けたであろう、元気ママでさえも笑顔を取り戻す。

事件直後の失意に比べたら、はるかに皆の心は回復していた。

これだけでも十分だったが、通り魔を赦すわけにはいかない。

俺は美少女エージェントを見る。やはり、通り魔事件のことは彼女達に任せるほかないのだろうか。

とりあえず、今日のお見舞いはそろそろ終わらせ、元気にはゆっくり休んでもらおう。

俺と星、朝比奈は椅子を部屋の隅に片付けて、帰宅の準備を済ます。

「それじゃ。また来ます」と病室の中に居残る親子に挨拶をした。



大学病院から三人で帰り、途中で星と別れた。そして、朝比奈と二人きりになったところで俺は問う。

「なぁ朝比奈。さっき制服に穴がどうのとか言ってたけど、何か意味あんのか?」

「意味はないわ。ただの確認よ」無表情の朝比奈。

「確認? 何のだ」俺はきいた。

「あなたは通り魔事件の情報に乏しく、知らなかったかも知れないけど……」朝比奈は髪を右耳に掻き揚げる。「この事件の被害者は10歳から13歳、小学の高学年から中学の低学年までの男の子だった。だけど出雲元気、彼だけが17歳の高校生なの」

「今回は異例だと言いたいのか?」俺はさらに問う。

「そうよ。出雲元気は見た目だけなら小柄だし、小中学生に見えるかも知れないわ。私服ならね。だから、私服を着ていた彼は襲われた」朝比奈が言う。

「元気が高校の制服を着ていたら、襲われなかったと?」

「断定できないけどね。けれど、この異常な通り魔のターゲットは、あくまでも10歳から13歳位の小中学生なの」

「だから、さっき制服を着ていたのか確認したのか」

「そうよ」


通り魔が襲おうとするターゲットは、かなり狭い範囲だと朝比奈はいう。

『10歳から13歳位の男の子』

通り魔はここだけに絞って、犯行をしてきたといった。

それならば、元気はかなり不運だ。小中学生と間違われて、刺されてしまったのだから。

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