第三章 意識3
家に帰りついた俺は、何を見るわけでもなくテレビをつける。音声とともに、色とりどりの情報達が画面に映し出される。俺はただぼんやりとそれを眺めた。
昨日にもまして今日は様々な出来事が起こった。俺の周りで劇的な変化が生じている。何かの因果だろうか。
そんな答えのない問いばかりが頭をよぎる。
携帯電話が鳴った。テレビの音と入り混じり、何とも複雑な音を奏でる。
見慣れない携帯番号。俺は通話ボタンをプッシュした。
「――もしもし」俺は電話に出る。
「もしもし? あの……、健人……君?」元気ママの声だった。
「元気のお母さんですか。どうかしました?」
「健人君……、あのね……、元気が……うぅ……」泣いているのか? 声が震えていた。
「元気がどうかしたんですか!」俺は妙な胸騒ぎを覚える。
電話に集中しているせいだろうか。テレビはつけたままだったが、テレビの音は気にならなかった。
「元気が……、元気が意識を取り戻したの……」元気ママはそう言うと、嗚咽だけが聞こえた。
おいおい心臓に悪いな。マジで勘弁してくれ。最悪の状況を想定してしまったじゃないか。
「お母さん、良かったですね」俺自身も安心する。
「……うん、うん。ありがとうね健人君」
「元気は意識を取り戻して……、何か話しましたか?」俺は問う。
「ええ。学校に行きたいって。もちろんしかったけどね」元気ママは笑う。
「はは、そうですか。俺も今すぐにでも駆けつけたいところですが、もう夜も遅いですし明日学校が終わってからにでも伺いますよ。もちろん迷惑じゃなければですが」
「ありがとう健人君。きっと元気も喜ぶわ。じゃあまた明日ね」
俺は電話を切った。
元気が無事で本当に良かった。明日元気に会える。楽しみだ。星も連れて行ってやろうかな。
安堵した途端、テレビの雑音がうるさく感じる。俺はテレビを消す。
そうだアイツも――、朝比奈も誘ってみるか。もしかしたら、元気から通り魔の情報が手に入るかもしれないし。
被害者からの情報。それは朝比奈にとって重要なものだろう。無論、俺にとっても。
俺は窓を開ける。外に広がるのは漆黒の世界。
この漆黒の世界に紛れて殺人鬼は今も標的を探し、彷徨っているのだろうか。