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第三章 意識1

夕方。もう学校は終わっている。朝比奈は栗色の髪をなびかせて、公園の前を通り過ぎる。


「おい」俺が、呼び止める。

「何?」無表情の美少女。

「とぼけてんじゃねえよ。元気をやったのはお前らだろ」

「そうだとしたら、どうするの?」朝比奈は曖昧な返答をする。

「だとしたら――、俺はゆるさない」


膠着――。夕日が二人を赤く染めた。


静寂を破ったのは朝比奈だった。

「やっていない。誓えるわ」朝比奈は言う。

「お前ら以外に誰が元気を……」俺は拳を握る。

「そうね、謝るわ。出雲元気が刺されてしまったのは、私達のせいでもあるわ」朝比奈は目を閉じる。

「どういう意味だよ」俺は朝比奈が言っていることが理解できなかった。

「ここ三ヶ月の間に、この界隈で少年ばかり狙われる連続殺傷事件が発生している。知らない?」

「ああ、その事件は知っている」俺はテレビか何かで見たのを思い出した。

「私達エージェントはその事件を追っているの。そして昨夜、また事件が起こってしまった。その被害者が出雲元気だった」朝比奈は少し悲しげな顔をした。

「お前らじゃないっていうのか。それじゃあ、お前は……、朝比奈は一体何者なんだ?」俺は問う。

「そうね。あなたの大切な友人が傷ついてしまったから言うわ。私達は『第三機関』のエージェント『レインボウ』よ。警察の手に余る凶悪犯罪を追う集団」朝比奈は正体を明かす。


俺は完全に勘違いをしていた。朝比奈達は犯罪を行う集団ではなく、犯罪を取り締まる集団だった。朝比奈は続ける。

「昨夜、出雲元気が襲われたのは、まったくの偶然であり予想外だったわ」

「……犯人はまだ分からないのか?」

「分かっていたら苦労はしないわ。それに分かったとしても、敷島健人、あなたには言わないわ。今のあなたなら……、人を殺しかねない」

「ははは。俺は犯人を殺しはしないよ。一発ぶん殴ってやるだけだ」俺は真顔で言う。

「そう、ならいいけど」

「悪かったな朝比奈。誤解していた」

「いいの、気にしないで。誤解されるのは慣れているわ」朝比奈は笑む。


俺は本物の朝比奈での笑顔を、初めて見た気がした。傷心の俺に気を使ったのだろうか。

朝比奈は「ミッションがあるから」とだけ言うと、夕日を背に去っていった。

元気を刺したのは朝比奈達ではなく、連続殺傷事件の犯人だった。しかし、凄いぞ元気。お前はレインボウまで調べ上げたんだ。大したもんだよ。お前みたいな凄いヤツは絶対に死ぬなよ。必ず生きて、うざったいくらい俺の名を呼べ。俺はそれまでにお前の敵を討つ。約束だ。


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