表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/40

第二章 後悔5

毎度のことだが俺はスッキリとしない朝を向かえ、勉強道具をバッグに詰め込んで家を出た。

公園を過ぎ、交差点を過ぎ、ここの道をずっと真っ直ぐ行って、突き当たりを左に曲がれば我が高校の正門が見える。あれ? 今日は元気に会わなかったな。珍しいこともあるもんだ。



俺は教室の戸を引き「うぃーっす」と教室内に向かって挨拶をして自分の席に座る。

「おはよー、敷島君」隣のメガネっ娘は学校にくるのがいつも早い。

「星さん、おはよう」俺はバッグから勉強道具を出す。

「昨日はありがとね。歓迎会」星は笑顔で言う。

「ああ」

「ちゃんと朝比奈さん送った?」

「途中までな」

「今度私も送ってね」星が笑いながら意味不明なことを言う。

俺は「ああ」と適当にあしらっていると、朝比奈が教室に入ってくる。

「星さん、敷島君、おはようございます。昨日はどうもありがとうございました」朝比奈はペコリと頭を下げる。

「気にしないで。それより、また今度遊ぼうね」星が言う。

「うん!」朝比奈は、飛びっきりの笑顔で返事をした。



チャイムが鳴る。あれ? 元気がまだ来ていない。遅刻か休みだろうか。

「オラァ、席に着け」武藤が入ってくる。「はい、おはようさん。えーっと、出雲元気なんだが、本日は休みだ」

なんだアイツ休みかよ。昨日はピンピンしていたのに。

「実は大変なことになった。出雲は昨夜コンビニに行く途中、何者かにナイフで刺されて意識不明の重体だそうだ。今は文京区にある大学病院で――」

ガタッ。倒れる椅子。飛び出す俺。

「お、おい! 敷島!」武藤の声は俺の耳には届かなかった。




――バンッ。

勢いよく病室の扉をあける。

「はぁ……はぁ……」

目を閉じる元気。口には酸素マスク。横に座っているのは元気ママ。あの優しい元気ママが――、泣いていた。


ドクン――。


ゆるせない。


ゆるせない。


ゆるせない。


誰だ、


元気を、


こんなに、


したのは。


ゆるせない。ゆるせない。ゆるせない。


ぶっ殺してやる。



「健人くん……、落ち着いて。とりあえずその涙を拭きなさい」俺は元気ママの声に正気に戻る。

「一応ね、手術は成功したみたい。まだ意識は戻らないけど。元気は――、元気は運がなかったみたい」元気ママは気丈に振舞う。

「昨日の夜、健人くんと電話していたのかな? そのあと元気はコンビニ行ってくるって、その直後だったみたい。腰あたりを刺されたの」

これ以上元気ママの痛々しい姿を見ていられず、俺は返事をすることのない元気に「またな」と挨拶をして病室を後にした。



やり場のない怒り。壁を一発ぶん殴る。

俺が裏組織について調べさせたのがいけなかったのか。だとしたら元気を刺したのは、アイツらか。俺は元気に情報を漏らしたことを激しく後悔した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ