奇跡は求めるものではない
掲載日:2022/11/19
肺炎、抗がん剤、腸閉そく、腰痛。
様々な症状が次々に襲ってくる。
彼女の体の内部では、すでに骨に転移し、痛みのひどい状態。
でも、彼女は言う。
今の私、笑うしかないわね。
がんセンターでつらい治療を続けていたのに、
飛び出してきてしまった。
腸閉そくになりかけて
殺されかけたのよ、という。
腰痛がひどいのに、
退院してしまっていいのかな。
こうなったら、と彼女は言いかけた。
彼女は何をしたいのか。
どうしてほしいのか。
僕にできることなら何でもやる。
僕は確かにそう言った。
彼女の求めることは、奇跡。
こうなったら、奇跡が欲しいのよ。
まじめな顔をして、僕にそう言う。
僕が奇跡を呼び込め、というのか。
昔、最愛の人に死なれたことがある。
その時も、何とかして、と言われた。
私を助ける気が無いの? といわれた。
言葉の出ない僕に、彼女は言った。
私が自分で奇跡を呼び込むわ。
一人で立とうとすることは立派。
頼られることもうれしい。
でも、その思いやりと決意だけでは、
現実は越えられない。
せめて、一緒に祈りたいのだが。
但し、それには信じる心が必要なんだよ。




