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重なる、現実と虚構


 今日は、夏休み前最後の登校日ということもあり、授業時間自体は午前中で終わりだ。

 だが、野球部に所属している俺が家に帰る頃には、太陽はその顔を引っ込めていた。


 帰宅後、制服のままリビングのソファに寝転がる。こまめに寝返りを打ちながらスマホのネットニュース一覧に目を通していると、気になるタイトルの記事を見つけた。


『南道グループ本社、大爆発。最凶犯罪集団"大罪"の仕業か!?』


「は?」


 南道グループは、昨晩俺がプレイしていたゲームであり、今日俺の視界に現れたクエスト表示のデザイン元でもあるRFOを生み出した会社の名前だ。


 そのまま俺は記事を読み進める。


『23日未明。南道グループ本社近くの住民から「凄まじい爆発音が聞こえ、外に出たら南道グループ本社が燃えていた」と通報が入った。警察官、消防士が現場に向かったが、その時には既に火は完全に消えていた。南道グループ本社に搭載されていた防災システムのおかげと思われる。だが、建物は全焼、南道グループ社長、南道天が行方不明、と南道グループの損害は大きい。南道天以外の社員は全員目立った外傷もなく、無事なようだ。なぜ、このような爆発が起こったのかは未だ不明だが、本記事の著者が社員の一人に話を伺ったところ、当時、世界的犯罪組織"大罪"が本社に侵入した、との情報を得た。はたしてこの爆破はあの"大罪"による仕業なのか。素早い真相の究明が求められる。著者、兼城想』


 ちょっと情報量が多すぎて何から処理すべきかが分からない。


 だがまあ、大事なことは大きく分けて二つ。


 一つ。南道グループ本社が爆発したことに関して。


 聞くところによると、南道グループ本社には南道グループが開発と運営をするゲームデータの全てが保管されているらしい。


 つまり、昨晩RFOが強制ログアウトしたのは記事に書いてある事件が原因と見て間違い無いだろう。全焼したとなると、しばらくはログインできなさそうだ。


 ちなみに、南道グループが制作したゲームジャンルは多岐に渡る。"RFO"といったRPGゲームもあれば、"UDO"という格闘ゲームや"メー探偵シープス"なんていう推理ゲームがあったりもする。


 と、まあ、南道グループについてはひとまず置いといて。


 大事なこと、二つ目。南道グループ爆発事件の容疑者に挙げられているのが、世界的犯罪組織、"大罪"であること。


 ちなみに、大罪、と書いて、グレートギルティ、と読む。頭文字を取って、GGと呼ばれたりもする。


 "大罪(GG)"の正体は実のところ、よく分かっていない。窃盗から殺人までどんなことでも金さえ貰えれば実行する凶悪集団、と言う者もいれば、決して弱き者には手を出さず違法な手で他者を陥れる政治家や金に目が眩んだ権力者達に痛い目を見させ分からせる、いわば、ダークヒーロー、などと言う者もいる。

 彼らは今まで人を殺めたことは無かったが、今回南道グループの社長が死んだと判明すれば、彼らの世論からの評価は急激に下がることになりそうだ。


 まあ、なんにせよ。これら二つのことを踏まえて俺が言えることが一つある。


 南道グループ本社爆発事件、もしかすると俺の身体の異変と何らかの関係があるかもしれない、ということだ。


優悟(ゆうご)、もうすぐご飯だからさっさと着替えてきなさい」


「はーい」


 色々考えたいことはあるが、母さんに呼ばれたので、とりあえず晩御飯と風呂を済ませよう。そう急いで結論を出す必要もないだろう。


 だって、もしかしたらただの幻覚なのかもしれないのだから。





 そう、まだこの時の俺の脳内はそんな考えが八割五分を占めていた。明らかに無関係とはいえない事件の記事を見たと言うのに、だ。


 言うなれば、まだ実感というものが湧いてなかったのかもしれない。


 だって、思うはずがないだろう。まさか、ゲームデータが俺の脳内に入り込んでしまった、なんて。


 でも、意外とすぐに事の重要性を俺は知ることになる。





「これは......」


 夕食と風呂を済ませ、朝方ぶりに自分の部屋へと戻った俺は、学生の本分は勉強、と夏休みの課題を確認しようと鞄を開けて戦慄していた。


 それはなぜか。


 見覚えはないが心当たりのある"メモ帳"が、己の存在を強くアピールするように鞄の中身の一番上に入っていたからだ。


『報酬"メモ帳"を獲得』


 プリントを鬼塚先生の机へ運び終えた時、そんな表示が目の前に浮かんだ。

 気には留めていたものの、その表示以外に気になる点は無かったことと、田中先生との会話中だったのもあり、すっかり意識から外していた。


 いや、だとしても、こんなことがあり得るのか?


 目の前にクエスト表示が現れるだけなら、ただの俺の幻覚だ、と済ませることができていた。


 だが、その表示に書かれたことが実際目の前に現れたとしたら、それは奇跡的な偶然か、それとも。


「ゲームが現実になってる? いや、逆か?」


 ーーもしも、現実世界がRPGゲームになったら、君ならどうする?


 あ、ちなみにメモ帳の表紙の絵は、黄色いくまさんの絵だった。


 

 

 


 ちなみに、南道グループが作ったゲームの中でフルダイブ型VRゲームは十二個。そして、"大罪"が狙っていたのは、"十二の宝"。

 ......お分かりいただけただろうか?

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