プロローグ
此れを見ている人に一つ忠告します。
怖い思いをしたくないなら見ない事を勧める。
え?
たかがホラー小説だろうって?
まあ~~そうなんだが……。
だけど本当にお勧めはしない。
本当に怖いから。
は?
何言ってるだって?
まあ~~其処まで言うなら話すけど……。
後悔はしないね?
本当にしないね。
だったら見せるけど……。
良いんだね?
良い?
其れなら良いけど……。
後悔しない?
後悔しないね。
其れは或日のことだった。
その日。
その日の事は今もはっきり思い出せる。
三十年前の出来事。
初めての体験。
初めての……いやよそう。
其れはとあるアパートで起きた出来事だ。
元々其処は簡易旅館として経営されており家賃は可也安い場所だ。
仕事先から徒歩数分。
神社の隣に有る仕事場から直ぐ近くに其のアパートは有った。
神社と仕事場は少し問題が……。
話すのは止めとくか?
あ~~。
まあ~~良いか。
話しとくか。
神社と仕事先はよく出ると話を聞いた場所だ。
その出るというのは幽霊の事だ。
真っ白な着物を着た女性の幽霊。
其れが出るらしい。
眉唾と思ったが一応本当らしい。
いやガチで。
え?
何で本当なのかって?
単純な話だ。
当時の自分は何故か能力の差はあれ何故か遭遇しやすかったのだ。
霊能力者に。
当時遭遇した霊能者は五名。
短期間に出会ったにしては普通だと思う。
当時の僕の感覚で言えば。
何しろ三年と経たず出会うのだ。
普通に慣れる。
この内二人は予知能力を持った霊能力者だ。
だから?
いや別に関係無いけど?
今回のことには。
残り三人の内二人が本当に居たと証言したのだ。
所謂霊視能力者というやつだ。
だから信憑性が有る。
はあ?
騙りでは無いかって?
其れは無い。
僕が保証しよう。
何の保証かって?
本物の保証だ。
本物の霊視能力者の保証だ。
僕には霊視が出来る者の判別が出来る方法が有る。
まあ~~今は関係が無いから話さずにおく。
アパートに住んでいたのは僅か数名の人間。
そのうち一人は僕の同僚だ。
暑い日の晩だ。
そう暑い日。
暑い。
暑い日。
時間は深夜。
恐らく二時ぐらいだろう。
部屋の中央に酒瓶とビール瓶。
其れにお菓子を食べたゴミが散乱していた。
布団は可也滅茶苦茶に散らかっている。
枕元には小さいロウソクの入った箱が有る。
此れは以前停電用にと買ったロウソクだ。
片付けるのが面倒なので放置している。
部屋の隅には安物のラジカセが有る。
此のラジカセ。
ラジオとしては使った事はない。
カセットテープとしか使った事が無い。
其れを片付けるのが面倒で放置していた。
酔っ払った僕たち色々な雑談をしていた。
色々。
その中には同僚の下世話な話も有った。
此の同僚。
実はモテる。
トコトン女にモテる。
昼休みの三時間で昨日知り合ったばかりの女とホテルに行くぐらいモテる。
しかも相手は数日後に結婚する予定の女だ。
そんな同僚だから色々面白い話が出来る。
だけど何時間も話していたらネタは尽きる。
そうして残ったのは怪談話。
とはいえ其の怪談も実は既に聞いている。
面白みが無い。
其処で頭を悩ませた同僚は面白い思いつきを考えた。
「百物語をしよう」
「百物語? そんなに知らないけど?」
「良いんだよ話をしてこうっ!」
フウッとロウソクの火を消す同僚。
「一つ話すごとにロウソクの火を消すね~~」
「良いだろう?」
「良いけどロウソクも話も足りないよ?」
「良いんだよ試しにやりたいだけだし」
「まあ~~良いけど」
そうして深夜。
百物語は始まる。
此の時僕は忘れていた。
此処がどんな場所か。
そして同僚がどんな奴か。
しかも最悪な事に当時の僕は無神論者だった。
此れが僕の人生観を激変させるとは思わなかった。
最後まで見る人に忠告する。
今なら引き返せる。
見たら後悔するかもしれない。
だから……。