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信じられない気持ちで小さくつぶやくと、鈴村はふっと笑って、答える。
「佐藤はほんま夏目ちゃんのこと気に入ってるんやね。まぁ、夏目ちゃんは良い子やよ。
入った頃からよう話しかけてくれるし、流石にそんな打算的な考えでうちに話しかけたわけやない。」
それを聞いてなんだかホッとしたような気持ちになった。
別に俺はこいつのただの幼馴染だし特別な感情があるわけでも無い。
だが家族みたいに過ごしてきてこいつの性格は知ってる。昔からアホで考えなしな行動ばかりする問題児だが、夏目は良いヤツだ。
良いやつすぎて変なストーカーに付き纏われて今わざわざ俺が送り迎えしなきゃなんなくなっているが、それも苦笑いでも引き受けてやるぐらいはちゃんと情がある。
そんなこいつが打算的に鈴村に近づいたと聞いて信じられなかった。
そんなやつじゃ無いと知っているからこそショックに感じたんだと思う。
鈴村はそんな俺を見て、また小さく笑った。
「そんな顔してくれる幼馴染がいて夏目ちゃんは幸せやね…。
ま、多分そのうち相談はしようと思うてて、なんて言えば良いかわからんからとりあえず霊的な話にしようと思ってどうやって祓うんか聞いてきたんやろ。」
ふと夏目の方を見ると、いつのまにか隣の机に突っ伏して寝息を立てていた。
こっちはさっきまでお前のせいでピリついてたのに、いい気なもんだ。
鈴村は立ち上がって再び鞄を肩にかける。
「とりあえず夏目ちゃんはもう大丈夫やよ。
ほな、もうううちいくから佐藤、夏目ちゃんのこと頼んだ」
そういうと、鈴村はささっと扉の方に歩いて行ってしまった。
咄嗟に声をかける。
「さっきは責めるようなこと言ってすまん!よくわかんないが、ありがとな」
そういうと、鈴村は振り返って、ええよと笑った。
また歩き出し、背をむけたままひらひらと手を振ると扉を閉めて出て行ってしまった。
さて、俺はこのバカを起こしてさっさと帰るとするか。
なんか心配も無くなったようだし?
なんだか本当に夢物語みたいな時間だったが、夏目から聞こえる小さないびきがこれが現実だとおしえてくれる。
「ほらっ!何寝てんだバカ!おばさんに怒られるぞ!」
そう叫んで、頭を小さく叩くと、まだ眠いよなんて間抜けた声がした。
ちまちま書いてた分をとりあえず上げてるんですが、全然次を書く気にならなくて悩んでます。
早すぎるだろ倦怠期
というかちゃんと続けて見てくれてる人がいるのかすら怪しい…
始まり長くてすみませんでしたが、ここから鈴村視点本編入ります…