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「だ、大丈夫!寒いとかじゃなくて、いや寒いんだけどなんていうかオカン?ってゆうか」
オカン?あ、悪寒か。なんだそのイントネーション
相変わらず普通にバカ炸裂でなんだか心配していた気持ちが突然抜けて、笑いそうになってしまった。
「ちょっと空気悪かったから触っただけやよ。で、さっきの話やけど、こっくりさんはおまじないとかの中でも比較的本物の手順が出回ってるものなんよ。
ただやる人間が唯の子供で、ちゃんとルール通りにやらんかったり、やったとしても中途半端にしか繋げられへんから完結せずに大ごとにならへんだけ。
ネットとかに出回ってる方法の中にはほんまにつなぐ手順を書いてるもんもあってかなり危ない」
鈴村は組んでいた足を解くと、夏目の方に体を寄せて、キュッと手を握った。
夏目はびくっと体を震わせたが、振り解いたりはせずに握り返していた。
「あれはあちらとこちらを繋ぐもの。
こっちに干渉できるようにする時点でだいぶこっち側に向こう側のヤツが近づいてる証拠やのよ。
なのに、やる子たちはちゃんと送り返さへんかったりする。だからこうなるの」
鈴村は両手で夏目の手を握って、握った手ごと額に当てた。すると夏目はさっきよりも明らかに震えが強くなったがまったく声を発さない。
何が起こっているのか理解できなかった。
窓の外は風の音はしないのにやたら森がざわめいて見えるし、教室は妙に寒い。
静かなのが何故か耳にキンときて、居心地が悪い。
なんだか舞台でもみてるみたいだ、と思った。
女の子2人が向かい合って、繋いだ手をおでこに押し当ててる。
まるで何かを祈ってるようで、少し現実離れしたこの状況がそれを一枚の絵のように見せていた。
声をかけようとも思えないくらい、空気がピンとはっていた。
俺は何故かさっきから意識がぼうっとしていて、ただつったってみていることしかできなかった。
パンッ!