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 会場全体が、固唾を飲んでエリオットを見つめる


 当の本人はゆっくりと歩き、殿下の前に立った。


「殿下、御言葉ですが、私たちの婚約は国王から承ったものです。

 殿下の独断で決めれるものではありません」


 誰もが首を縦に振った、


 俺はあっけに取られる人のを縫って前の方へ進む。


「黙れ!俺とイザベルの仲を引き裂こうとしても無駄だ!!」


 いやそんな話してない


 殿下の後ろにいるイザベル男爵令嬢は不安そうに殿下を見つめている、


 ざわざわと会場が騒ぎ始める、

「こんなことって」「国王が許さないだろう」「ボークラーク家にとって名誉毀損だ」「…でもこの展開お芝居で見たような」


 どことなく皆の顔がイキイキしているのは気のせいだろうか。

 騒ぎに紛れて1番前まで来ることができた。



 「何の騒ぎだ」



 よく通る声、声の主を確認する前に、全員頭を下げて声の主を称えた。


 国王だ。


 この場で頭を下げていないのは殿下と男爵令嬢だけだ……


「お父様!」


「ヴィクター、卒業おめでとう。 みなも顔を上げて楽にしてくれ」


 その声で顔をあげる。優しそうな人の良さそうな国王が見えた。


「ありがとうございます、それでお父様あn「いいんだ、息子の卒業を祝うのは当たり前だろう?」



 ………ふむ


 人の話を聞かないのは父親似らしい。


「それで、何の騒ぎだ?ヴィクターの隣にいるのは……」


 男爵令嬢が殿下の裾を掴んだ、国王に挨拶もないとは、いい度胸だ。


「彼女はイザベルです! お父様、お願いがあるのです」



 …本当に上手くいくのだろうか……



「……なんだね、言ってみるといい」


 国王は信じられないと言った様子だ、動揺が顔に出ている


「エリオットとの婚約を破棄し、愛しのイザベルと結婚したいのです!!」



 国王は



 目から



 大粒の涙を流した



「そうかそうか!お前も愛に気付き自ら婚約者を…!」


 思わず顔が引き攣る、国王は勢いそのまま殿下を抱きしめている。


「あ、あの、お父様?えっと…」

「この日をどれほど夢に見たか!!いいだろういいだろう!その娘との婚約を認める!」


 その一言に殿下とエリオットが婚約しなければ困る貴族は息を呑んだ。

 予想がついていた貴族はあまりのくだならなさに鼻で笑っている。


「ありがとうございます!」

「うむ、皆のもの、新しい縁だ。喜ぶといい!」


 ぱち、ぱち、ぱ、ち


 乾いた拍手がホールに響く、国王も殿下も満足そうだ。


「さて、エリオット嬢、今までご苦労であった」


 ようやく国王がエリオットを見た。


「はい、勿体ない御言葉です」


 エリオットは綺麗なカーテシーで答える。



「エリオット嬢の今後だが…」


 俺は握った手を緩めた、手汗で握れなくなったので…


「お父様!エリオットは俺の側しt「フィンレイ•ラウザー、前へ」


「……はい」


 チラリと聞こえた殿下の不穏な言葉のおかげで緊張より怒りが勝り、

 思ったより堂々とした足取で前に出ることができた。


「貴殿はエリオット嬢と素晴らしい報告書を仕上げてくれたな、

 その功績を認め、エリオット嬢との婚約を結びたいと思うが、


 エリオット嬢は、構わないか?」


 殿下の代わりに婚約するには割りに合わないと思う、

 普通なら侮辱もいいところだ…


「はい、御心のままに従います。良き縁を結んでくださり感謝します」


 柔らかく笑うエリオット。


 殿下は顔を真っ赤にして口をパクパクとさせている


「フィンレイ•ラウザーも、構わないかね?」


「はい、御心のままに、身にあまる光栄です」


「では、皆のもの、今一度祝ってやってくれ」


 パチパチパチパチ!!!!!

 

 拍手の圧で前に一歩出そうになった


 拍手喝采はすぐには終わらず鳴り響いた


「よかったエリオット様…!」「お似合いの2人だ」「…どうしてこうなった…」「お芝居で見た通りの結末だわ!」


 みなの口元には笑顔が浮かんでいる。


 お芝居とやらは後で調べておく必要がありそうだ。


「では、ダンスパーティーとしよう」


 国王の掛け声で音学がなり始め、ホール中央にスペースが作られる。


 国王は王座に座り楽しそうだ、殿下は何か不満があるのか顔が晴れない。


 俺は、



「……一曲、踊っていただけますか?」


 片膝を折り、利き腕でない方を背中に回し、利き手をエリオットに差し出す。

 足が震えているが、手は震えていないので、あ、手汗……


「よろこんで」


 エリオットの柔らかい手が重ねられる


 小さく笑うその顔は、シャンデリアとは違う温かい光を帯びているように見えた。



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