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 エリオットとの有意義な話し合いの末、まとめた紙はしっかりとした分厚さになった。

 途中紙が足りなくなり買いに走ったりとトラブルはあったが、日が沈む前にはひと段落した。


 達成感のもと、お互いにうっすら汗ばんでいるが問題ない。


 …しかしあの匂いの原因はなんだったんだろうか…………


 

 詳細を実家に送って、現地の調査をお願いする。これで熱源がなかったら話し合いの意味がない。

 すぐに返事が返ってきたが「婚約者はどうだ、うまくやっているか」と言った内容だった。


 まとめた紙第二部を送りつけるとしよう。



 エリオットは学園での生活を楽しそうに話す


ヤツ(殿下)に顔出せって呼び出されたけど無視しちゃった!!」


 と弾けんばかりの笑顔のエリオット。嬉しそうでよかった。

 もう一秒だって殿下と同じ空間にいてほしくない自分にとってもありがたい。



「えっと、 フィン、実は……


 昨日お父さんから手紙を預かって…」


 ガチャンとコーヒーカップが鳴った。


「え、あ、………読みます…」


「2人で読むようにって」


 ん?2人で??


 疑問は残るが、丁寧に手紙を開ける


 ーーーー


 婚約に関して、卒業後に手続きを進めたいが


 前婚約相手との意思疎通が図れない


 卒業パーティーに注意せよ


 ーーーー



「えっと…」


 チラリとエリオットの方を見るが、エリオットも眉間に皺が寄っている。


「めんどくさいな……最後ぐらい迷惑かけないで欲しいものだけど」


 殿下のことになるとエリオットは急激に感情がなくなるな……


「卒業パーティーにって………なんのことだろう」


 卒業式をして、そのあと中央ホールを貸し切った卒業パーティーがある。

 王から一言二言頂いた後はパーティーを楽しむのが慣わしだ。そこで気をつけろとは…?


「うーん、あの人なら……全員が集まったら声高らかに『婚約を破棄する!』って言うとか?」


「は??そんな……まさか、」


 非常識なことあるわけ……と言いかけて思い直す。


 あの馬鹿ならやりかねないのか………


「……そうなったら厄介だな」


 例えば殿下がその勢いのままエリオットに「教会行き」を宣言すれば、スムーズに事が運ばなくなるだろう。


「なるべくこちらで手は尽くしておく…フィンは……」


「………俺は?」


 なにをすればいいだろう、なにをすれば彼女の力になれるだろう



「……みんなの前でフィンの婚約者の発表をされた時のことを考えた方が……」


 ……みんなの、まえで、エリオットとの、婚約を………



 コーヒーカップが手汗で持てなくなる前に急いでテーブルに置く、

 絞れば滴るのではないかと思うほど手汗が吹き出して冷や汗がとまらない


「そ、それは………なかなか……」


「…もし婚約破棄が宣言されたら、次の婚約を発表するのが手っ取り早いから……」


「う、うん……」


 想像するだけで胃の奥が締め付けられる………


「何事もないのが一番だけど、あいつ何しでかすかわかんないから」


「そうなったら、もちろん、堂々と、やってみるさ」


 大きく息を吸って胸を張るが、すったままの息を吐けず頬が引き攣る



「…でも、もし……ううん」


「ん?どうかした?気になることでも?」


 先ほどまで渋い顔をしていたエリオットはしきりに前髪をいじり始めた、


「……本当に婚約破棄が、パーティーで出来れば……」


 エリオットの声はどんどん小さくなっていく……


「そのあと、婚約発表できれば………そのあと…」


 話しづらいことなのだろうか、安心して欲しいこのカフェには2人しかいない



「パーティーの…ダンス…………一緒に………」



 パーティー、ダンス、一緒……………




「ダダだっだだダッ ダンス……!!」


 一気に顔に血が集まる。 ひぇ、ダンスだと…?!


 初等部の頃に必修科目でやった以外に経験なんて……異性と踊ったのは教員としか…

 到底 公爵令嬢と踊るレベルではない。


 エリオットも顔が赤く、前髪を触っている、照れている時の仕草だ。

 可愛い。


「お、俺に務まるかな……」


「他の人と踊れと?」


「いや!!!!………ごめん、大きな声出して」


 エリオットが他の人と踊っているのを想像して、また血が昇る。


「やる、やるよ」


 ブラックのコーヒーを飲み干す。血が上った頭がすっきりとクリアになる。


「……そんなに気負わないで、」


「いや……俺異性と踊ったことないから…リードできるか…」


「…………大丈夫だよ」


 安心させようとしているのか、エリオットが俺の手を取る。

 手汗でビタビタだと思うのであまりしっかりと触らないでもらえるとありがたい。


「………あぁ、でもまず服の準備を……」


 親に任せっきりだったパーティーの衣装を至急確認しなくては、時代遅れの衣装で踊る訳には行かない!

 まだ踊ると決まったわけではないけど!!!


「家から流行の服をまとめた冊子をもってこようか?卒業式でフィンは卒業制作の表彰があるでしょ?多少なり学園から補助が出ると思うけど………」


「お、お願いします」


 流行の確認、色相の意味、この国の色は…殿下の目の色の青だったな…1アイテムくらい入れた方がいいか……


 服の問題が解決すれば……後はダンス………




「まず、ダンスの歴史を…」


「ふふっ 手伝うよ」


 エリオットは込み上げてくる笑いが堪えられないと言った様子でダンスの歴史を暗唱し始めた。



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