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初投稿です
「邪魔」
肩に強い衝撃が来て、抱えていた資料が床に散らばる。
そもそも俺は廊下の端を歩いていたのに邪魔とはなんだ邪魔とは、噛みつくだけ無駄だと学んだ俺は相手をちらりとも見ず資料を集める
無視した俺が気に食わなかったのか散らばった資料を踏みつけて当たってきた相手は去っていった。
資料についた靴跡をはたいて落とす、次の授業で使う資料だ。なんでも【仮想領地の運営又中小領地における問題の定義と解決】だったか………
この学園はクラスによって習う授業に激しく差がある。
Dクラスは行政を中心に法律、税金の管理、不正における厳粛な裁きを
Cクラスは商業を中心に審美眼、物の流通、経営における従業員の管理を
Bクラスは歴史を中心に研究、発明、歴史とは名ばかりに使えるものはなんでも
そして俺が通うAクラスは領地運営を中心に領民の管理、他クラスで出た議題提案の活用といったところで、必然的に長男長女、国の重要ポストの跡取りが集まってくる。
さらには二年に上がるとクラスごとにもランク分けがあり、専攻があり、ほぼクラスメイトと呼べるものは存在しない。クラスメイトがいないのだからクラス替えも存在しないわけで、仲のいいやつとはずっと一緒にいれる。
そして交流ができない俺のようなものはぼっちの出来上がりだ。
誰にも聞こえないようにため息を吐く
また廊下の端をあるく、今度は気配を消すのも忘れずに。
今年も無事に進級テストもボーダーラインをクリアし、二年も特待生として学園に通学できる。そうでもしないと到底学費なんて払えない貧乏領だ。特待生といっても免除になるのは学費だけで通学で馬車を使えばその分の費用もかかるし勉強に使うインクも紙も学校行事で必要になるドレスコードだって自分持ちだ、学費が免除になってギリギリ通えるレベルだし無駄遣いは許されない。
二年に上がってからは今のようなのはすごく減った、特待生というだけあって同じ授業を受けるのは家柄もよく成績がいい人間が集まっていて、幼稚な嫌がらせなんかはしない人たちばかりだ。もうすぐ三年、あと一年で卒業だ。
今日の授業も集中できますようにと祈りながら教室のドアを開ける。
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「では、以上の議題を二人一組になって来週の授業までに提出するように」
教師から死刑宣告を告げられる、ため息も出ない
ちらりと周りを見るがどんどんペアが決まっていく………だれもこんなド田舎辺境男爵領の男と組みたくはないだろう、どうせ受ける授業なら自分がこれから携わる領地と近い人間と意見を交わした方がよっぽど有意義だ。俺だってそうしたい。
「もし」
どうする、教師に頼んで一人で提出させてもらおうか………
「………もし?」
それなりのペナルティがあるだろうが背に腹は代えられない、提出量が二倍になった方がましだ。そうと決まれば直談判をして早急に資料を集めてレポートを………
荷物をまとめていると華奢な手が伸びてきた
「すみませんよろしくて?」
目の前にアクアブルーの髪をした女生徒が立っている
「え、あ、っと」
この学園にアクアブルーの髪をした女生徒は一人しかいない
「考え込んでいるところ申し訳ありませんが、私とペアを組んでくださらない?」
「え、ボークラーク公爵令嬢………」