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予感していたとなるとモーティの二つ名である運命の女神は更に信憑性が増す。
彼女からの電話は東京スカイツリーでの待ち合わせだった。
その前に彼女からの誘いは始めで、まさかボクの疑いに気付いたのかと一瞬過ったが、目的地に現れた彼女は嬉しそうにボクに手を振ったことから、そうではないと分かった。
そして思考を巡らせ、一つの予想に辿り着く。
この待ち合わせは彼女の目的がもう少しで成就するから最後に……ということなのだろうか?
だけど俺に止められるのだろうか?
彼女には目的があるが、ボクはただ彼女と関わりが……いや、あるからこそ止めなないといけない。
まぁ、まだ決まったわけじゃないけど……。
「ご、ごめんね。急に……」
「いいや、休日はいつもやることがないから」
本当に突然であり、学校以外で初めて出会ったのだ。
お互い恥ずかしさを隠すが、対応しきれないところがある。何となくボクは東京スカイツリーを見上げると一つの疑問が浮かぶ。
そういえば何で東京スカイツリーなのか……。
他に海外には塔関係のものはあるが、単純に好みということなのだろうか?
「そういえば、東京スカイツリー好きなの?」
「うん、小さい頃に来てから好きになった。それだけ……」
やっぱり彼女からいつもより虚しさを感じる。
もうどうでもいいと、全ては無意味だと……。
「さぁ、行こ!」
それは一瞬、ボクから目を反らした時だけだった。
まるでさっきまでの虚しさが嘘のようにキミは笑顔でボクの手を繋ぎ、歩き出した。
その笑顔は偽物、作り物なのか……。
ボクはただキミについて行く。
内部は近代感が溢れ、初めて行ったが別に何も感じないがキミの表情は東京スカイツリーが好きなことが伝わってくる。
しかしそれは生き生きとしているというよりか、安心している。
まぁ、これくらいで喜ぶのは子供くらいだろう。エレベーターに乗って、大勢の人と上に向かう。
その時でもキミはボクの手を握っている。
それが普通のように、今までこんなことはなかったのに……。
エレベーターの窓からの街並みをただただ見て、キミと一緒に最上階へと向かう。
東京に来たら誰もが行く所であろう東京スカイツリーだが、やっぱりその良さというものが分からない。
ただ上からの景色が眺められるだけでそれは地上にいる時の何も変わらない。見方を変えたところで何も変わらない。
それはキミもそう思っているが、何かがこの場所を魅了ことに繋がる糸になっている。
だけどそれもキミは分かっていない。
何故ならそれより、キミの中には何か目立つものがあると……。
そしてキミと共に外を眺める。
何も感じないボクはキミの表情を伺うと硬い表情を浮かべている。
決断の表情にしか見えない。
ということは、本当に……。
「ねぇ、守くん。キミはこの世界をどう思う?」
「……急、だね。ボクは何も……かな」
それは本心、正直な答えである。
キミの考えていることがボクの予想と合っているのなら、同感できる部分はある。
「そう、だよね……私ね。生まれた時からこの世界が嫌だった。気持ち悪かった……誰かの話すのも、どこかに行くのも、自分の世界に閉じこもっても……でもキミとは別だった。キミはどこか違う。私の力、使用している時は誰からも認識されないのに、キミには認識された」
それが二人の出会いであり、恐らくは彼が違う特性。
「それがおかしかった……でもこんな人もいるんだって、思った。完全に他とは違う人……私は秘密を話して、嫌だった会話が楽しみになって……感情で言えば、いつも心が熱を持っていた。今日だって……」
そう話し続けているキミの瞳が滲む。
涙が零れそうになっているんだ。
今まで感じたことを洗いざらい、曝け出そうとしている。
周囲の光景が同様に滲む。
「零さん……」
「私はキミと出会って、初めての抱いた感情……」
涙を流し、苦しそうに告げる。
まるでそれが嫌で、痛くてたまらないほどにその感情は彼女を乱したのだ。
「それを調べたら、恋だってことが分かった――」
それは、告白だった。
キミはボクに恋したと……。
「――」
その言葉が耳に入り、頭が認識してボクは声が出ずとも驚愕した。
それが彼女の本音であり、ボクが彼女のためにという感情の結末とも予想される。
つまりお互いがお互いを好きになった、両想いであると……。
お互いが自分も他人も嫌で、認識を広げて世界も嫌になり、今までの人生を無の一色で歩んできたが、お互いが生まれた時から何かしらを手に持っていたが、皮肉にもそれでも二人の認識は変わらなかった。
全てが嫌なまま、苦しいまま歩み、二人は出会った。
そしてマイナスとマイナスが出会ったことで化学反応みたいに何かが変わった。
そう、何もない心に何かが生じた。
その正体、答えが恋であったのだ。
「れい……」
「だから、これからの私を――」
でも彼女の目的は、全てに含まれ変わることはない。
涙で染まった頬、赤くなった肌、はち切れそうな心を掴むように服を握るキミは悶えていた身体を起こし、正面を向いた。
「――許して」
その時、今までより大きな地震が発生し、建物が激しく揺れる。
最上階に居る人々は立っていられず、床に転がる。
だけど地震の中心であるここは何故か揺れず、二人は立ち、顔を見合わせる。
「はぁ……はぁ……」
彼女の息は荒くなり、彼女を中心として何かが広がっていく。
「ッれい!!」
この揺れで自分の予想と合致し、彼女の名前を叫び、足を前に出す。
しかし超近距離であったキミはどんどん離れていく。
まさか!
もうここは……。
「れいッ――――」
その瞬間、空間亀裂が発生し、東京スカイツリーは勿論、周囲の建物が摩訶不思議に切断され崩壊していく。
見えない巨大な刃に斬られたかのように亀裂は広がっていき、スカイツリーはすぐに崩れ、周囲の建物も姿を消し、地震のせいで大勢の人が被害に遭い、最終的にスカイツリー一帯が崩壊し、瓦礫が積み上がった光景が広がる。
巨大地震により一つの区が壊滅し、死亡者数は二十万人以上に上ると推定される。
だがそれはまだ先の話。