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「唯一、ですか。それってどうゆう意味ですか?」


「そのままの意味だよ。まさか唯一っていう意味知らない?」


 知ってるよ。

 唯一、ただ一つで他にはないことということなら、この世界でボクは他にはないということになる。

 まさか、信じられるわけがない。

 何かの間違いか、それがもし本当だとしてもボクの何が唯一なのか?

 どっちにしろ、認められるはずがない。


 ボクが沈黙していると女性は少し困ったような顔をして話を続ける。


「じゃあそれを証明はできないけど、確かに色が白な人は唯一であるけど、幸福と言えば幸福側だと思うよ。私の持論では……この世界に唯一、純白な者、あらゆる力を介さない者、あらゆることを可能にする者……述べるだけでもこれくらいかな?」


 さっきから途切れることなく、話しているがボクは一つ気になっていることがある。

 そのことにボクは少し怒りを感じている。

 それもそうだろう。

 急に唯一と言われ、突然そんなことを言われて信じられることはできないし、不幸ではなく幸福と証拠もなく……。


「何でそんなこと言えるのですか?」


「それは私が知っているから――」


「バカにするな! 確かにボクには何もない、無ですけど、そんなことで変わるほどお調子者じゃない! 一般的に占いは信じられていない。だからボクはそんなものには縋らなかった。例え、生きがいがなくてもボクはそんなものには頼るわけがない!」


 女性が調子のいいように話したことでボクは久しぶりに怒りを露わにした。


「あ、ごめんなさい。私、ついいつもの癖で……ごめんなさい」


 女性は深くお辞儀をし、謝罪をした。

 その対応に腰の低いボクはすぐに受け入れ、怒りを抑える。

 だけどこんな話、誰でもついていけない。


「それでもボクは信じられません。もし本当だとしても……」


「……なら、キミの人生を占いましょう。ただし真実は詳しくは語らず、端的に話します。それでいいですか、私も本当にキミのような色は本当に珍しいんだ……」


 女性は早速、水晶に手を翳す。

 占い師が持つ必需品あろうそれは見たことがあるが、本当にそれでわかるのだろうかと思うが、彼女の目はただ翠色を見つけているように見えない。

 しかも少し薄暗い中で何が見えるって暗闇しかないと思うが……。

 最初からこの女性は嘘をついていないのに、何も信憑性のあることを言わないのだ。

 普通ならどこどこの占いで、とか普通なら話すと思うが、詐欺師なら確実に信憑性を高めるために使うだろう。

 この女性の話は本当のことを言っているが、信憑性がないという矛盾しているのに信じてしまう。

 これがこの人の巧みな所業。


「おぉ~……では、また少し小話してもいいですか?」


「まぁ、別にいいですけど……」


「人生は人が歩む道って表現されるよね。その人の道は大体が決まっていて、人は運命だと思ってそれを進んでいるという説と全く白紙でそこから人は歩んで行くという説、まぁそれは人生という言葉が別の形で表現されているだけ、そしてキミが思っているようにそんなことを議論しても何も分からない。っていうのは物事を全体から見たから、一つのことが小さく見えているんだよ。だから人は迷ったら、人という目線に戻って、続いている道か白紙の景色を見つめなくてはならない。人、生命はどんな形であろうと前を進まなくてはならない」


 急にいいことを言ってきた。

 ガラリと雰囲気、ムードを変えるのも得意みたいだ。

 まぁ、このくらいのコミュ力があれば自然と備わっているのかもしれない。


「だから人生をいく方法として徹底的に考えることはしない方がいいね。大きなことだけを見ていれば、それ以下のことがどうでもよくなるから自己崩壊する可能性がある。そうだね……お姉さん兼占い師のアドバイスをするなら、前を見る。特に気にする方へ見た方がいいね。そしてこれは全ての人に言えることだけど、自分が信じる方へ進むことだね」


「それは……」


 それは何度も考えたことだが、結局はそうなのか……。

 自分の人生は自分が決めるのは当たり前だが、それがボクは欠落している。中身が何もないから他人の感情に共感できない。

 人間としての者が最初から失われている。


「不安、いや知っているよ。キミはそれが失っていることを……」


 女性はボクの手をしっかりと握り、包み込む。

 それはどこか母親、母性を感じる。

 何故か、ボクがそんなに疲労や悩んでいるからか、無意識に誰かに寄り添いたいと思っているのか、母を求めているのか……。

 普通ならここはそんなことはないと恥ずかしがるところだが、それでもあり得ないと拒絶する。


「これは……う~ん、キミは何を信じている?」


「……何を」


 いざ問い掛けられると分からなくなる。

 頭の中が何かを避けるように白紙になってしまうのだ。自分の意思ではなく自動的に削除されていると言っていいほどに……。

 これがただコミュ障だけだと思うが、それで片付けてしまうのは些か自分も困っている。


「認識を変えて、自分の中は無じゃないと……」


 女性が更に強くボクの手を握りしめる。


 そして白紙だった心の中に少しずつ光が灯る。

 それに呼応するように様々な色彩の光が灯り始め、白紙に彩り、星空のように描かれ、その正体が選択肢であることがわかる。


「これでわかる?」


 一体何をしたんだ。

 まさかこの人も想無零そうむれいと同じ力を持っている者なのか、これってそれ以外考えられない力が作用しているように見える。


「何をしたんですか?」


「ん、私はただ信じただけだよ?」


 女性は淡々と話していることから嘘はついていない。なら本当に自然とこうなったのか、信じただけでそんな変わるのか。

 やっぱり分からない。そもそもこの現象が異常だ。

 仕方なく、その星空に水に顔をつける時と同じように顔を沈ませ、内側を見てみる。


 その光景はまるで宇宙のようだ。

 不思議なことにその光景にボクは魅了され、辺りを見渡す。

 本当に果てのない宇宙空間がどこまでも広がっている。


「さぁ、答えは見つかった?」


 その言葉が聞こえてくる。

 答えを探す。

 しかしここは無限の宇宙、その答えがどこにあるかなんてわからないし、探すにしたって文字通り無限の時が掛かる。

 周りを見て、それは不可能だとボクは結論付けた。


 その時、胸に何かを感じた。

 暖かい、何かが……。


「これは……」




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