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「ねえ、山崎」
ボクはコントロールルームに向かう途中で助手の山崎に声を掛けた。
山崎はボクの横を歩きながら、まだ寝足りないといった体で重そうに瞼を瞬かせる。
「なんですか」
「あの二人さ、どう思う」
本部から配属されたグレン兄弟。
「二人して長身で同じ様な顔をしていてエリート然としていけすかないよね」
「そんなこと思うの主任だけですよ」
「そうかな?」
山崎は呆れた様にはぁーっと大袈裟な息を吐いた。
「いいですか。ただでさえ人手不足なのに、主任が無茶な事ばかりやるから人が居着かないんですよ。そんなとこに来てくれるだけでも有難いってものです。しかも、彼ら、その道じゃ名の知れた実力者ですよ」
「みたいだね。ボクでも名前位は知ってたくらいだから」
「ならなんの文句もないでしょ」
「仮に本部からのスパイだとしても?」
「スパイと分かってるなら、逆に使い道もあるってもんです」
「へえ。お前もなかなか図太くなったものだね」
「何年、響主任の下で働いてると思ってるんですか。これくらい神経太くならないと。普通の人間なら、とっくに逃げ出してますよ」
「うわぁ。最低だな、山崎。差別発言だぞ、それ」
「本気で言ってます? 顔、笑ってますよ」
ポーカーフェイスって案外難しいな。今日の作業が終わったら寝る前に口角を下げる練習をしようと決めた。