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「いま空いてる机が無いんだ。取り敢えず、そこの荷物置き場になってる机を片して二人で使ってくれる。明日までには新しいのを用意しとくから」
研究室に戻ってから、一緒に付いてきたグレン兄弟にそう伝える。
しばらくすると、餌をあげに地下収容ケージへと行っていた山崎が帰って来たので、新しく配属されたリベット、フィディックの両博士を紹介した。
フィディックが山崎と会話を交わしている間にリベットが声を掛けてきた。
「響主任。余裕ですね。明日も普通に訪れると?」
「来るでしょ、明日は。まあ、明後日以降はどうか分からないけどさ」
「今夜の予想はついているのですか」
「うん。大体ね」
リベットは手にしたファイルを開いてページを捲った。
「過去のデータによると……」
「今夜はワニかな、多分」
「シシでは無くて?」
「三月といっても、まだ寒いからね。例年通りとは限らないよ」
「ここの戦闘員は? こちらに着いてから、それらしい方は見掛けていないのですが」
「ここでの戦闘はボクに一任されてる」
「主任が? そこまで人員不足なのですか」
「生きの良い試験体を捉える機会をわざわざ他人任せにする事もないだろ」
「……なるほど」
開いたファイルのページに目を落としたリベットの表情は良く見えなかった。