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「フィディック博士は呼んでないのか?」
白州の問い掛けにリベットが口を開きかけたとき、タイミング良く玄関のブザーが鳴った。
「いやあ、スミマセンね。すっかり遅くなってしまって」
リベットに招かれて山崎が肩で息をしながら入って来た。手に下げた袋を誇らしげに掲げる。
「コレ。頼まれてた肉です。良いとこ選んで持ってきましたよ」
「わざわざ有り難うございました。山崎さんの調整した培養肉が美味しいと聞いていたので食べる日を楽しみにしてたんです」
リベットは山崎から受け取った肉をキッチンの自動調理機に投げ入れ、人数分のグラスとウィスキーのボトルを手に取ると、テーブル席へとやって来た。
「さっき言いかけましたが、兄のフィディックは今日は来れないそうです」
リベットはグラスに酒を注ぐと、各々にグラスを差し出しながら言った。
「なんかさ、君のオニイサンはボクのこと、避けてないか?」
リベットは笑った。
「兄は人見知りなんです。そのうち打ち解けますよ」
「そうかな。何だか山崎とは仲良さそうだけど」
隣に座った山崎がこっちを振り向いた。
「主任、考古学とか興味あります?」
「全然」
「だいたい人にもそんなに興味無いし、好かれる要素ゼロじゃないですか」
「こんな近くに適齢期の可愛い女がいるのに男同士でイチャつく意味がわからん」
ボクがそう言うと白州が口に含んだ酒を吹き出した。
山崎がぎょっとした顔でこっちを見る。
「……主任。女って意識、有ったんですか」
「何を言ってるんだ。当たり前だろ」
男どもが表情を強張らせたと思った瞬間、自動調理機から調理終了を報せるメロディーが流れた。




