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いつになく妖気な天気だ。まだ昼前、雲も無いというのに空は暗く淀んでいる。
今日は満月。夜には月から魔獣が溢れ出して来る。
丘の上の研究所までリニアバイクを走らせていたボクは薄着で家を出てきたことに今更ながら後悔をしていた。でもまあ、それも研究所に着くまでの間。あと数分の我慢。スロットルを回す。リニアバイクが静かに加速した。
白衣を身に付け、研究室に入ると、中はさながら夜通しのパーティーが開かれた後のような有り様だった。
床にはゴミが散乱し、倒れたカップから飲みかけの飲料水が机の上に溢れ、ソファーの上では助手の山崎がイビキを掻いていた。
「おい。起きろ」
ボクはソファーからだらしなく伸びた山崎の足を蹴った。
「う……あれ、主任?」
山崎がビックリしたように飛び起きる。
「ここで寝るなといつも言っているだろ」
「ああ、すみません」
「それにしても、これはどうしたんだ」
「……スプートニクですよ。暴れたんです。昨夜はホント手がつけられなくて」
山崎は身体を起こして、まだ寝足りないというように瞼をこする。
ボクは頭を掻いて一先ず自分の椅子へと腰を下ろした。
段々と手がつけられなく成ってきているのは承知している。それでもまだ何とか言うことは聞くし、ケージに閉じ込めっぱなしにするには時期尚早だとも思う。
山崎が唸りながら腰を上げて、ノロノロと散らかった部屋を片付け始めた。
ボクはため息を吐いてパソコンの電源をオンにした。




