自己紹介すらままならない
思えばわたしは、昔から双子の妹のせいで割りを食っていたというか。
可愛い色の服もぬいぐるみも食器も文房具も全部あの子に取られていたし。
同じ顔をしているのに、可愛いと褒めて貰えるのはいつもあの子ばかり。
だから、あの真っ白な世界で神様を名乗る、姿の見えない何かに。異世界へ転移させてやると言われたときに、今度こそあの子のいない世界で楽しくやれるんだと思ったのだけれど。
「成功だ……! 今度こそ召喚に成功したぞ……!」
意識を取り戻したのは血生臭い部屋。
地面には魔法陣と思われる図形が、赤黒い何かで描かれている。
わたしより先に隣で起き上がったのは、この世界でも自分がうまくやれないことを象徴するような女で。
そして、視界の端に映るおびただしい数の死体は、この"召喚"とやらの残酷さを物語っていて。
「失敗ですよ、少なくとも私の方は。他の失敗と違って、命は奪われなかったようですがね」
気がつくと、わたしは身体を起こし、その口は、何かに操られるように勝手に動いた。
そして、混乱するわたしの頭の中に声が響く。
(大丈夫、すぐに私は消えるから)
その声は、どこかわたしの声に似ていて、安心感があった。
そして、そんなわたしを睨むような目で一瞥し、召喚士と思われる男は、わたしの隣へ目を向ける。
「ちっ、そちらはどうだ。ロゼッタ=フォンティーヌ」
「ロゼ……? えっと、もしかして、ヒメの事でしょうか?」
質問に質問で返す、ロゼッタと呼ばれた彼女。
ヒメと自分のことを呼称しただろうか。ということは、やはり彼女は。
「ヒメ?」
「ええと、ここはどこでしょうか? ヒメは家に帰る途中だったと思うんですけど……」
彼女のその言葉に男の目の色が変わった。
そして、低く「おおお……」と呟きながら、魔法陣の中へと入ってくる。
「失敗が死ななかったのは片方が成功だったからか? まあ良い最後だったがうまくいって良かった」
ぶつぶつと呟きながら、わたしのことを軽く蹴り飛ばし、その後ロゼッタ、もとい、ヒメ、神崎姫乃の両肩を掴んだ。
「お待ちしておりました。異界の巫女様。貴女様のお力で、どうぞ竜神を鎮めて下され」
その台詞に、大体の事情を把握する。
なるほど。これはそういう、めんどくさいタイプの転生ものか。と。