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これからの僕たち

最終話となります




 僕が勉強のできるバカが大嫌いになったきっかけの父親は無事に刑務所に戻された――なにをやって八島重工ににらまれたのか知らないし、知りたくもないが、死刑にする予定がないのが残念だ。


 どうせ盛大にバカを発揮したのだろう。


 それからすぐにルイがやってきた。こっちはちゃんとした見舞い客だ、たぶん。


「ありがとう」


 頭の中のコンピューターは高圧電流で溶け、人間として生きていく最低限の機能しか働かない状態になってしまった。そんな僕を病院に運んで、父親を探し出し、きちんと修理させたのだ。


 ちゃんと感謝しないといけないし、それをきちんと伝える必要がある、と僕は思う。


「あのマッドサイエンシストは自分の息子まで改造してたのね。脳を半分くらい切除して、かわりに生体電気で動くコンピューターを押し込むって、思いついても普通はやらないけど」


「おまけにOSは市販品をちょっと改造しただけで、その改造点のせいでバージョンアップも出来ず、この春には元になったOSのサポートが終了。いつウイルス感染するかわからないし、ネットに常時接続で自力で切断できないし」


「コンペはウイルスで乗っ取ることができるの?」


「乗っ取ってなにするつもり? いまは最新型に入れ替えてもらったから、いまではそうそう乗っ取れないと思うけど」


「いや、10年ほどしたら現在のOSもサポートが終わるんじゃないの?」


「10年間電源を入れっぱなしにしていたパソコンがどんな状態か想像してよ。乗っ取ったところでポンコツの故障寸前だ」


「ソフト面でもハード面でも問題を抱えていたわけね」


「その通り。これでいちおう僕がこの戦艦島に潜入しないといけなくなった理由が消えたわけだ」


「おめでとう? で、いいの?」


「さあね? いいか、悪いかで言えば、いいことだけど……少なくとも僕には、ね」


「それなら、おめでとうで合っている、と思う」


「しかし、ルイは僕の父親の居場所を知っていたんだね。ホテル・アヴァロンとかいう謎の施設について質問したときには知らなかったみたいだけど」


「調べた。というか、コンペの誕生日だから、なにかプレゼントを、と考えて、あちこち聞いてまわった」


 誕生日プレゼントが情報とは……まあ、戦艦島らしい。あるいはルイらしいのか? べつに僕はかまわないけど、普通の女の子の発想じゃないな。


「聞いてまわったということは、刑事みたいに聞き込みしたの? それとも戦艦島にも情報屋みたいな人がいるとか?」


「情報屋はいるよ。近いうちに機会を作ってコンペにも紹介しよう……今回のことで飼育委員が嫌になってなければ、だけど」


「学生時代の楽しい思い出にはなりそうにないけど、辞めるつもりはないよ。ちゃんと続ける」


「……よかった」


「ミミィもいるし、最近はトールとも仲良くなったんだぞ。ほかの子供たちもたぶん仲良くなれると思う」


 だから――いまこそ僕は約束しよう。


「前に飼育委員会で保護しているルイの眷属を守る手伝いができるかわからないと言ったけど、これで僕はウイルスで乗っ取られることも、コンピューターが壊れる心配もなくなったわけだから……だから」


 脳手術の後だからか、麻喜の薬で限度を超える肉体の酷使して過労状態なのか、さっきから指1本も動かせないが、幸いなことに口や舌はちゃんと動いてくれた。それなのに、口にすべき言葉が突然喉の奥に引っかかった。


 言え、言うんだ。


「だから、僕にも手伝わせてもらえないかな?」


 なにを? と自分で自分にツッコミ。決めないならないところで決められない奴が僕だ。


 だが、ルイには伝わったようだ。ハッと金銀の瞳が揺れ、耳のあたりが赤くなった。


 オレンジ色の右手を胸の前へ引き寄せ、それからその手はベッドのほうに近づいてきて、僕の手と重なった。


 アルバイトというには少々過激な仕事だって、なんとかこなしてみせる。正体不明のバイヤーだろうが、機械化した兵士だろうが、きっと僕たちなら負けない。あのトカゲ人間だか、爬虫類型人類が宇宙人だろうが、おかしな科学者の妄想の産物だろうが、いまの僕は負ける気がしない。


 ここで出会えた信頼できる家族と一緒なんだから。


 了



なんとかラストまで書けました

お付き合いいただいてありがとうございました

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