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うさんくさい仕事はやっぱりうさんくさい



 トランクを引っ張って最寄りのバス停を目指す。


 頭の中に路線図を出してみると、目的地の宇宙港まで3回の乗り換えが必要なようだ。


 そもそも宇宙港にいくバスの便が島の外周をまわっているものだけだ。


 貨物ならトラックだし、人の出入りが多い場所ではないから。


 最初のバスはA地区にいくものだった。この周辺にある研究所の職員が製造工場に出向いたり、反対に製造工場から研究所を訪ねた人で混み合っていた。座れないのはいいとしても、大きな荷物が気になるところ。


 わかりやすく邪魔だと睨みつけてくる乗客はいないけど。


 だからといって油断はできないな。トラブルは絶対に避けたい場面だから、ここは慎重にならないといけないし。


 A地区に入ってすぐのバス停で降りる――バス停というより、バスステーションという方が正しく、戦艦島でもっとも重要施設である製造工場から各方面にいくバスが出る基幹線の発着場だ。


 ここで戦艦島の端までいく便ならどれでもいいから乗って、終点で外周をまわっている循環バスに乗り換えればいずれ港に着く。


 だが、そのまま乗り換えるというのは……うーん、どうだろう? 戦艦島の端にあり、かつ港に近い場所に行けるバス停に並んでみたところ、その後ろに同じバスでここまで来た乗客が5人も並んだのだ。


 ただの偶然という可能性だってある――いや、99パーセントまでそうだろう。


 でも、なぁ。


 こういうときはルイに相談したら適切な答えをくれそうなものだが、ダディーを置き去りにして楽しく食事にいってしまうような奴に電話する気になれない……いや、ミミィからしたらダディーでも、ルイからしたらダディーはおかしい。


 おかしいが、ダディーではなくダーリンというのも、ちょっと。あまりに恥ずかしすぎる。


 というような、かなりどうでもいいことを考えつつ、一方で現在の状況についても思考をめぐらしていた。


 結論。バス停ひとつ分、歩こうと思う。


 せいぜい500メートルとか、そんなものだ。たいした距離ではない。


 それで保険になるなら、安い、安い。


 しかし、並んでいた列から外れてとことことトランクを引っ張りながら歩きはじめると、問題の5人のうち、1人が動き出したのだ。


 ちょうどバス停についている防犯カメラが紺のスーツを着た男をとらえた。


 30前後か。右目の下に黒子がある。


 泣き黒子のオッサンをアルファと仮称する。


 このまま通りを歩いていけば次のバス停に辿り着くのだが、それでは尾行を確認した意味がない。そもそも尾行かどうか確認して、もしそうなら撒かないといけないだろう。


 次の路地で右に曲がった。


 もちろん、尾行に気づいた様子は見せず、ぶらぶらと歩いているふりをしてだ。


 そして、角を曲がった瞬間、トランクを抱えて走る。


 さらに次の角を曲がり、その先の角も曲がる。


 アルファが尾行者かどうかは確認できなかったが、どっちにしても撒けたならいいとしよう。




 が。


 前から2人組の男がやってくる。


 視線が僕に向けられていて、悪い予感しかしない。


 適当に路地を次々に曲がったせいで、いつの間にか人通りのまったくない場所にいることに気づく。


 この周辺には防犯カメラはないらしい。


 上空を飛んでいる無人飛行体がどんな映像を撮影しているか覗いてみると、僕の前に2人組、後ろをアルファが追いかけてきてきていて、都合よく八島警備保障のパトロールカーや警備員がいる、なんてことはないようだ。


 それどころか、本当に人影らしいものがまったくなかった。


 しかたなく周囲の様子だけは記憶しておき、無人飛行体からの画像は頭の片隅に常時表示で。


 アルファは尾行者というより、僕にプレッシャーをかけるのが目的で、その罠にはまって人の多いバス停や通りから、誰もいない細い路地に誘導されてしまった。


 つまりは……そういうことだろう。


 こういう事態になったのだから二人組はブラボーとチャーリーと仮称することに決めた。


 腰の右側に装着したホルスターにはマウンテンイーグルが入っているし、マガジンはフル装填で15発。


 腰の左に装着したポーチには予備のマガジンが2つで合計30発。


 全部で45発もあるのだ。


 ちょっとした戦争だって乗り切れそうじゃないか!


 トランクを左手に持ち替え、右手を上着の中に滑り込ませると、前からきたブラボーとチャーリーはとっさに腰を落として、自分たちも上着に手を入れた。


 フェイントで引っかけておいて、すぐに近くの路地に駆け込む。


 10メートルくらい走って――大きなトランクを抱えてドタドタと進んで、振り返り、マウンテンイーグルを2発発砲。


 頭の隅に表示したままにしてある無人飛行体の画像によると、ちょうどブラボーとチャーリーが慌てて角を曲がった瞬間だった。


 2発で2人を倒したらかっこよかったのだろうが、残念ながら先に角を曲がったブラボーが2発とも胸に受けて倒れた。


 チャーリーとっさに後ろに下がる。


 よほど驚いたのが尻もちをついてひっくりかえったところを無人飛行体のカメラが捕らえていた。


 僕はトランクを投げ出し、急停止。反転してダッシュ。


 角まで戻ると転んでいるチャーリーの腹に撃ちこんで、もう一度180度反転して元のところに戻りトランクを回収して逃げ出した。


 まだアルファが残っているから、どうやって倒そうか考えていたが、幸いなことに追ってくるより、撃たれた仲間を優先したようだ。


 アルファはブラボーとチャーリーの様子を調べ、どこかに電話をかける――そこまで見たところで上空を飛んでいた無人飛行体は通り過ぎてしまった。


 次に監視衛星にアクセスして、自分の位置から周囲1キロを見る。


 もともとの目的地だったバス停がどこにあるかはわかったが、いまとなっては普通にバスに乗るという選択肢はない。








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