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うさんくさい仕事がはじまるよ!

昨日2話、今日2話更新の予定です



 正直なところ、生徒会から斡旋された仕事はあまりにうさんくさい。


 トランクを指定の場所まで運ぶだけ。たぶん半日もかからない。


 それなのにバイト代は、なんと30万円!


 断ろうとしたら、すかさず増額で5万円プラス。


 ますますあやしい!




 しかし。


 まあ。


 生徒会長から頼まれれば、なかなか嫌だと言えない立場なわけで。


 まあ……受けちゃったから仕方ないが。


 この仕事が終わったら、1月や2月は遊んで暮らそう。手配犯の報奨金稼ぎもやらない、鶏頭水煮の缶詰を箱買いして、僕の好物も買って……ルイの好きなものも少しは買ってあげてもいいかもしれない。


 チョコレートとかケーキとか甘いものはどうなんだろう? 


 まさか味覚も人類最強クラスで豪華な美食以外に興味ないなんてことでなければいいのだが。


 まあ、そのうち訊く機会もあるだろう。



 というか、機会を作らなければいけないな。


「それで荷物はどこで受け取ればいいんですか?」


「放課後17時に先進科学研究所のタナカさんを訪ねるように。いつものように仕事完了後に佐藤くんの口座に入金するということで」


 打ち合わせ完了。


 しかし、それまで時間があるから飼育小屋に出かける。


 まだアルバイト代を手にしたわけではないのに、前祝いとかいって派手に使ってしまうのは馬鹿のやることだろうが、みんなに夕食をおごるだけなら問題ないだろう。宅配のピザくらいなら……トッピングの全部載せだった、たぶん問題ない。


 僕とルイはせいぜい1枚として、ミミィは2枚か3枚は食べるだろう。


 他のルイの子供たちのうちピザを食べるのは何人いるのだろう?


 見たところ本当に動物にしか見えない者もいるし、容態がよくない者も結構いた。


 それともコンビニの冷凍食品やレトルト食品を買い物カゴ一杯でもいい。


 僕の部屋には100円ショップで買った片手鍋くらいしかないが、飼育小屋には電子レンジでもホットプレートでもなんでもある。


 楽しい夕食会を頭に思い浮かべていたのだが、飼育小屋は施錠されていて、しかも僕の持っている合鍵では開かなかった。ルイやミミィに電話してみるが、出てもくれない。


 みんなで楽しく遊びにいってしまったのか……僕が飼育委員になる前からルイは子供たちと一緒に暮らしていたのだし、みんなで遊ぶことも多かっただろう。


 だから、当然その『みんな』の中には僕が含まれていない。


 でも、それは『いままでは含まれてない』じゃないのか。


 いまは家族だろう――と思っていたのは僕だけだったみたい。


 しかたなく1人でファミレスにいって一番高いステーキを食べてやった。もちろん、しょせん安さと手軽さを売り物にしているファミレスだからぜんぜん美味くなかったけど。


 希少なリムジン種だとか、脂が少なくヘルシーなのにとても柔らかいとか、船内で輸送中に熟成させたエイジドビーフだとか、いろいろメニューに売り文句が並んでいたが、ろくに味のしないのだからしょうがない。


 時間に多少の余裕をみて先進科学研究所にいき、受付でタナカさんに面会の約束があると言った。


 中肉中背で、平凡な顔立ち、年齢は30前後だろうか、いかにも偽名臭い苗字といい、得体のしれない人物だが――戦艦島ではよくいるタイプといえなくもない。


 僕が配達する荷物は海外旅行にでも充分に対応できそうな鮮やかな黄色いハードケースで、立てると僕の腹のあたりまでくるから飛行機では機内持ち込みは絶対にできないサイズだ。


 一方で重量のほうは拍子抜けするほど軽く、ひょっとしたら十キロないかもしれない。


 トランク自体の目方を引いたら半分くらいになりそうだ。


 もっとも、屑鉄やアルミのリサイクルではないのだから、もちろん重いから高価とか、軽ければ安いというものではない。


 ミサイルの誘導装置とか、戦闘機の姿勢制御モジュールとか、戦車の砲撃管制システムみたいな近代兵器の肝の部分だろうか。


 新型の拳銃やライフルの試作品そのものかもしれない。


 病原体かもしれないし、毒ガスとか、プロトニウムみたいな少量でも高額で取引されるものという可能性もある。 


 まあ、なにが入っていたとしてもまともでないものなのは確実だし、下手に知ったら口をふさがれそう。


 好奇心は猫を殺すというイギリスの諺もあるのだし、知らなくていいことは知らないままにしておくのも、この戦艦島での処世術。


 この世の中に自分の命と交換してでも知りたいことなんて、そうそうあるわけないし……いや、むしろ1つもないな。


 僕は自分の命が一番大事です!


 交換も販売も、もちろん捨てるのも絶対に避けたい。


 タナカさんから受け取ったのはトランクの他に1枚のICカード。


 来客用に一時的に発行されるカードだが、電子マネーが使えないと公共交通機関にも乗れないし、自動販売機でジュースを買うことも、コンビニやファーストフードで小腹を満たすことすらできない。


「1万円チャージされてます。交通費は1000円もかからないと思いますが……もし残ったら自由に使っていいですよ。ただし、24時間の有効期限がついてますけど」


 ここから普通に港までトランクを運ぶとなるとバスの乗り換えがスムーズにいけば2時間か、せいぜい3時間程度。


 タイミングが悪くて待ち時間が多かったとしても、せいぜい4時間あれば完了するはずだが、最終期限は明日の17時に設定されている。電子マネーの有効期限もそれまでということだ。


 高額報酬だから、そんなのチップがついてきた程度の話だが、タナカさんにはお礼を言っておく。


 あるいは、どこかで身を潜めて一泊しなければならない状況も想定されているのだろうか?


 1万円では赤字になるような事態とか。


 ついでにいうと八高校の学生証にも電子マネーの機能がついているが、それは使うなということだろう。


 コンピューター上の足跡を架空の来客A氏だかB氏にしておきたいというのは、これまたロクな仕事ではないという兆候だ。


 こんなことなら断っておけばよかったかな、と後悔……いや、別にルイやミミィと一緒じゃではなく、1人で仕事を請けたから不安というわけじゃないから。


 いやいや。


 これくらい1人でちゃんとやれる。


 幼い子供でもはじめてのおつかいで、犬に吠えられたり、道を間違えたりしながらも、ちゃんと達成できているんだ。


 高校1年生が1人でおつかいできないわけがない。










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